06-01


7月。
その日は、絶好の野球日和だった。
放課後、野球部でバッティング練習をしていた山本は、青く晴れ渡る空を見上げた。
ようやく梅雨が明け、夏本番。山本にとっては球宴の季節到来と言っても過言ではない。


「いくぞー」
「おうっ!来い!」


カキ―ン!といういい音がグラウンドに響く。
じりじり日光に照りつけられながらの練習は疲労も半端ないが、いかにも夏到来と言った感じで気持ちが良い。



「山本、暑いのにすごいね」
「おー、ツナ」



下校途中のクラスメイト・沢田綱吉が、声をかけてきた。
そして、その隣には同じくクラスメイトの獄寺隼人の姿もあった。



「いや、やっと梅雨明けだろ?なんかワクワクしちまって。」


山本はバットを置き、綱吉の処に歩み寄っていく。ちょっと休憩な、とピッチャーに断りを入れていけば、獄寺隼人が眉間に深く皺を刻みながら山本を睨んできた。


「テメェは季節関係なく年中野球バカだろ」
「まあなー。否定はできないのな。」


からからと笑いながら山本が返せば、獄寺が舌打ちをする。綱吉は困ったように笑いながら、「暑いから水分とった方が良いよ。熱中症には気を付けてね。」と獄寺を引っ張りながらそそくさとその場を後にした。

春先、腕の怪我で精神的に再起不能になりかけた山本だが、綱吉のおかげで立ち直ることが出来た。今じゃすっかり打ち解けて、日常的に会話をするまでになった。

山本は元々友達は多い方ではあるが、あの二人とは一際濃い付き合いをしている(ような気がする)。

その証拠に、三人そろって日々トラブルに巻き込んだり巻き込まれたりしているが、それさえも楽しいと思っていた。


「あんがとなー」


去り行く友人二人に手を振り、見送って。
山本もバッティング練習に戻ろうとバットを手にした、その時だった。





「………?」





頭上から視線を感じて、山本は顔を上げた。
だが、あるのは並盛中の校舎のみ。


「ん?気のせいか?」


誰かに、見られていたような気がした。
ちょうど校舎が日光を背負い、逆光になって人影を探すことは出来ない。

まあでも、校舎ならたくさん生徒がいたっておかしくはないか。
視線の一つや二つあったところで、特に気にもならないといえば、ならない。


「……ま、いっか。」


山本はそのまま、バッティング練習に戻って行った。






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