03-02


その日の放課後。
笹川の猛攻を手際よく回避した柊は、委員会・部活動リストを片手に校内を歩いていた。
もはや回避だけでいえばスペシャリストの域に近づいている(クラスメイト談)とも言えるが、それでは本来の任務は果たせない。

狙うのは、あまり業務が忙しくなさそうで、かつ窓側からグラウンドや通学路が見渡せる部室・活動場所を持つ団体である。
柊は活動を行いながら沢田綱吉の登下校を監視することが出来る団体を狙っていた。


そんなわけで。



「放送委員会は密室か…監視には不向き。ナシね」


放送室を出た柊は、手にしていたリストの「放送委員会」の欄に斜線を引く。
既に、スポーツ系の部活動は回りきった。
どの部活動も本格的で、そもそも日の当たらない事務屋でしかなかった柊にはハードルが高すぎた。没。
一方文化系部活動は、何故か活動場所が日の当たらない場所に設定されており、あわよくば活動中に沢田綱吉を監視したいという柊の目論見は達成できそうにはなかった。


「うまくいかないものですねぇ」


体育委員会は、「お前のようななよっちい女子生徒など要らぬ」と突っぱね返され、飼育委員会に行けば兎に怖がられてしまい「動物に好かれない子はちょっと…」と苦笑いされてしまった。

そして放送委員会は防音設備ゆえ窓の無い場所に設置されており、目標は果たせない。


希望の条件とは違うため、どんどんと範囲は狭められ、残るは、「図書委員会」と「風紀委員会」のみ。



(風紀委員会…って、入学式の日に追いかけられたあの黒い集団かぁ…)




あれから2週間。
並盛中に慣れるにしたがって、自然と入ってきた風紀委員会の情報は耳を疑うようなものであった。
いち地方中学校の委員会活動のはずなのに、地元の祭を取り仕切ったり、町の代議士や病院とも太いパイプでつながれている謎の組織。
教師たちも頭が上がらないため、実質この中学校を支配しているのは風紀委員会と言っても過言ではない実力者集団、とのことだった。

過日は掲示板に群がる1年生を整列させるため取り仕切ろうとやって来たところ、フライング部活動勧誘を行っていたボクシング部(というか笹川)を見つけたために、ああいった事態になってしまったらしい。

その構成員は100%男子。学ラン。そしてリーゼント。



「目立つ…あんなところに入ったらそれだけで目立つ…」



家光からは「一般生徒のふりをして目立たないように潜入して監視業務に当たれ」と言われていた。
風紀委員会になど所属してしまえば、180度別方向へ舵を切ることになってしまう。



「ダメダメ、ないない」


独り言を呟きながら、柊は最後の希望であるその部屋の前に立った。
そこは、図書委員会の活動場所である、図書室だった。
部屋の入り口に掲げられているのは「開館中」という札。


ここがダメならまた別の策を考えなければならない。
笹川了平を回避し、沢田綱吉を監視できる、最後の希望の場所。


(出来ればここで決めたいところですね…!)


柊は意を決してその扉を開いた。




春の西日がとても眩しいその部屋の正面には、美しい顔立ちの黒髪の少年が佇んでいた。

切れ長の瞳。さらさらの黒髪は西日に反射してきらりと光を放つ。

後光も相まって、なんて綺麗な人なんだろう。

まるで、天使のようだ。





なんて思ったのは、一瞬だけだった。










天使の足元では、男女が数名土下座していたのである。








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