01-06


そこは、CEDEF傘下の企業があった場所。
CEDEF代表の沢田家光は、携帯電話片手に、向かってきた男の喉元を銃で撃ちぬいた。

「……無事に飛行機に乗ったか。後ろをつけてきた車はそのまま消しにかかれ」

電話の先にいるオレガノにそう伝えるのと、男の喉元から飛び出た血飛沫が家光のスーツに勢いよく飛びかかるのは同時。
彼の目の前は既に血の海と化していて、バジルやターメリックをはじめとした戦闘員は既に返り血で赤黒く染まり、周囲を制圧し続けていた。

死体の山が、次々に積み上げられていく。


「まぁあれだ。今回は敵さんの尻尾をようやく掴めそうなんだよなぁ。何人かは生かしておけなー?」


まるで呑気に家光がそう言えば、バジルが「そこまでやる必要はあるのですか?」と首を傾げながら家光に問う。


「最近、10代目候補が続々と殺されているのは知っているな」
「はい…でもそれが何か?」
「こいつらはおそらくその関係者だ。…といっても何も知らされていない末端中の末端だろうがな。こちらとしては、こいつらから繋がる糸を辿って、諸悪の根源に辿り着きたいってわけよ」


口調こそ呑気だが、その実眼光はどこまでも鋭い。
その気迫に気圧されたバジルはごくりと唾を飲み、「わかりました」と頷いた。







沢田家光は、最近頻発するCEDEF関連施設への襲撃はどれも、家探しをされているような、そんな感触を持っていた。
そして、最近こちらも頻発している10代目候補者の不審死。
それは病死や事故のように見えて、ほとんどが巧妙に偽装された殺しだった。

10代目候補を殺すのは、邪魔者を排除して、何者かが10代目に就任するため。



……そもそも、誰が10代目候補を選んでいるのか?

9代目にはもちろん候補者擁立の権限はある。

そして、CEDEFの代表である、家光にもその権限がある。

しかし、立場を超越して、もう一人、その権限を持つ者がいる。

その存在は、大方の関係者が架空のものだと思っていたし、長い間秘匿されてきた存在だった。

何より本人が、そのことを知らない。





この数か月で少しずつ、敵は核心に近づいてきていた。

だから、急ではあるが、彼女を送り出すことに決めた。





「……頼むぞ、綱吉」





お前を10代目候補に選んだ彼女を、しっかり守るんだ。

飛び立ったイタリアの空は碧く、大地は血の海で真っ赤に染まっていた。


こうして、CEDEFで育った少女は、日本の地へ飛び立った。

美冬と呼ばれる少女は、自分が何者かも知らぬままに、橙色の瞳を隠し、身分も隠して並盛町の地に降り立つことになる。





これは、彼女が知らない彼女に、出会うための、ほんの序章でしかない。





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