フランキーさんと飲んだあとは船旅に必要なものを用意し、足りないものがないことを確認してから風呂に入って寝た。翌日、酒の影響がないことを確認してから、改めて準備をした。しばらくまた風呂に入れなくなることを考え、もう一度風呂に入っておく。
 さっぱりしたところで部屋を出て、女将さんにすこしの間出てくるので部屋はそのままにしておいてほしい旨を伝えてから、まとめた荷物を片手にガレーラを訪れた。引き渡しのためにわざわざアイスバーグさんがおり、見送りに来てくれたらしいパウリーや、見張りに来たらしいカクやロブ・ルッチの姿もあった。


「それでは全額前払いということで」

「レンタルなんだからこんなにはいらねェよ」

「いえ、船を返却できない場合もあり得ますので受け取っておいてください」


 そう告げればアイスバーグさんは目を見開き、苦笑いを浮かべながら「それなら尚更受け取れねェな」と突き返してきた。どうしてそんなことを言うのかわからず、おれからも突き返させてもらった。代金は代金だ。そのまま帰って来られる保証はどこにもないのだからその分渡すのは当然のことだろう。そもそも戻ってきたときに置いておく場所がないために引き取って欲しいからという理由なので、値段はそのままでもいいくらいなのだ。


「受け取ってもらわねば困ります」

「返せないってのは縁起でもねェだろ? だから帰ってきたときに渡してくれりゃあいい」

「ああ、死んで戻って来られないと勘違いさせたのですね」


 おれがストレートに言ってしまえば、周りは苦笑いやら何やらいい空気とは言えなかった。おれとしてはそういうつもりは一切なくて、破損したときにそのままの状態で返せないことを想定していたのだが、たしかにそう言われれば縁起でもないな。こういうときはありがたくお言葉に甘えておけばいいだろう。突き返された分を受け取って、軽く頭を下げておく。


「では残りは返却時に」

「ああ、そうしてくれ。気を付けてな」

「お気遣いありがとうございます。それでは」


 船に乗り込み操舵を行えばスムーズに船が動き出した。ウォーターセブンから離れていくなか、パウリーの声が聞こえた。振り返ってみるとぶんぶんと犬が尻尾を振るように大きく手を振るパウリーの姿が見えた。「気を付けてなァー!」という声が聞こえ、軽く手を振り返した。
 それを終えたあとは、航路に従って船を操舵していく。島へ行くのはあの日島を出て以来のことだ。サカズキさんにおれが出たあとの島の状況は聞いていたため、今あの場がどうなっているかなど興味もなかったから帰ることは一度としてなかったが、帰るのであれば墓参りくらいはさせてもらおう。ただ先祖の墓は……。


「壊されてなければ、だがな」


 もう誰も墓を守ってはいないのだから恨みを持つ人間により壊されていることは想像に難くない。そのときは掃除してすべて処分するのがいい。どうせ生き返ることもないのだから焼き切ってしまえばいい。……灯油とか買っとけばよかったのだろうか。


「いや、無駄だな」


 たかが先祖、そこまでしてやる必要はない。家が残っていれば書庫でも漁ろう。多分こっちもまともに残っちゃあいないはずだ。城の方はまともに残っているだろうか。正直二十年近く行っていないのだからどうなっているかわからない。一つだけわかることがあるとすれば、まともに人間は生き残ってはいないだろうということだけだが……さてどうなるだろうか。


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