ドフラミンゴさんを送っていったらなんだか気に入られたようで、「海軍には似合わねェな、うちに来ねェか」とお誘いを受けた。それを丁重にお断りさせていただいて、ミホークさんを議場に案内し、そのあと船まで送っていった。ミホークさんは何を考えているんだかわからない目をして、特におれにちょっかいをかけるでもなければ問題を起こすわけでもなく帰ってしまったので、特筆すべきことはない。本来なら全員それで済めばよかったんだけどな……。
 万事うまくいくなんてことは世の中においてありえないと思うので、そこらへんは仕方ないだろう。さて、お三人がいた部屋の片付けでもするかな、と思ってフロアを歩いていたら、前からボルサリーノさんが歩いてきた。ゆるゆると振られた手は、おそらくおれに向けられているのだろう。一つおじぎをしながら近づけば、にっこりと笑ってくれた。


「メアリ、お疲れ様〜。これで終わりだよォ」

「へ? 七武海って七人いるのでは……?」


 おれの計算が正しければ今まで来たのは五人である。ていうか正しいよ。それ以上来てないし。もしかしておれが勘違いしていただけで、そもそも五人しかいないけど七武海なのだろうか。最初に結成したときは七人だったけど、今現在その地位にふさわしい海賊が五人しかいない、みたいな。しかしそんなおれの考えはさらっとボルサリーノさんに否定された。


「うん、七人なんだけどねェ、これがあとの二人は来ないんだよォ〜」

「……は? え?」


 来なくていいの? ていうか、そんな特例認めていいの? だったらほかの人たちこなくてもよかったんじゃないのか……?
 口に出さなくてもおれの疑問は伝わったようで、ボルサリーノさんは「引きこもりだからしょうがないねェ」だなんてわけのわからないことを言ってくる。……引きこもりの海賊って、何? まさか説明されてもわからないとは思わなかった。
 けれど、まあ、これで大仕事が終わりなら、それでもいい。明日からはいつもどおりの日々に戻れるのだろうし、この大仕事でもらえなかった休みの分、まとまった休みも取れるはずだ。となれば、一度あの屋敷に戻って爺様の墓参りでもするのもいいなあ。使用人の人が綺麗にしてくれてはいるだろうけど、気持ちの問題として行くべきだと思うし。


「でね、すっごい申し訳ないんだけど、もう一つ、メアリにやってもらわなきゃいけないことが出来ちゃってねェ……」

「? なんですか?」


 おれが休みについて思いを馳せていると、ボルサリーノさんは困ったような顔をしてそう言った。別に全然構わないけど……申し訳なくなるようなことってなんだろう? もしかしてまた大きい仕事なのだろうか。でも大きな仕事ってなんだ? おれメイドだぞ? また客でも来るのか……?
 首をかしげてボルサリーノさんを見上げていると、頬を掻きながら「実はねェ……」と事情を教えてくれた。


「メアリにはエニエス・ロビーに行ってもらうことになっちゃってねェ」


 うん、それどこ? まったく聞いたことのない単語だったが、行ってもらうというからには地名か施設の名前か、組織の名前か、なんかそこらへんなのだろう。ん? ていうかそれってもしかして左遷か? ……いろいろやらかしたつもりはないのだが、完璧だったかと言われればいまいち自身がないのも事実だ。これが左遷だとしても、素直に受けれないとな……それが社畜ってもんですよ……。
 おれが半ば左遷を受け入れていると、ボルサリーノさんは事態をきちんとした説明してくれたので、左遷でないことが判明した。よかった。よかったのだが……。

 ──曰く、エニエス・ロビーは司法機関で政府関係の場所らしい。曰く、エニエス・ロビーのお偉いさんであり今回政府関係者として来ていたスパンダム長官とやらとの話で、メイド対決、のような流れになったらしい。曰く、エニエス・ロビーに今日から一週間行ってその長官さんのお世話をすればいいらしい。

 ……え? どうしてそうなったの? とおれが困惑するのも無理はないと思う。なんすか、そのメイド対決って。意味わかんないし、そのメイド対決ってのをしようってなった理由もまったくもって皆目見当もつかないというか……。
 おれが思わず変な顔でボルサリーノさんを見つめてしまったのも、致し方のないことだと思う。だって、どう考えたってまともな思考回路じゃないっていうか。誰だよそんなことを言い出したのは。
 ただそう思ったって、上からの命令には絶対だ。それが社会人のルールみたいなところあるしね……どうしても嫌なら断るべきだけど、そうするとクビだからね、仕方ないね。金はあるけど爺様のだからあんまり使いたくないし。
 おれはボルサリーノさんの言葉にイエスと肯定の意を示したが、納得しているわけではない。意味わかんないし、意味わかんないし、意味わかんないし。三度も言いたくなるほどのことであると報告させていただこう。誰にしてるんだかわかんないけど、そういう気分だった。そんなおれに、ボルサリーノさんから衝撃の一言。


「疲れてるだろうに悪いねェ……サカズキのせいで」


 ……サカズキさんのせい、だと……?


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