ミホークさんにお茶をお出ししてから、ドフラミンゴさんの部屋に行って飯を出したり、クロコダイルさんにコーヒーを持って行ったりしているうちに政府関係者が到着した。遅い、と思わなくもなかったが、来てくれたことによっておれはこの七面倒臭い状態から解放されるということである。
 政府関係者に脳内で感謝をしてから、マリンフォードに到着した順にご案内することになった。というわけでまずクロコダイルさんをご案内したら、道中で船を回しておくように言われた。なるほど、終わったらすぐに帰るつもりなんですね。うなずきながらかしこまりましたと返事をして、おれはクロコダイルさんを議場にお連れした。
 ドアを完全に閉めてから、おれは衛兵の人にクロコダイルさんの船を港に回しておくようにお願いした。自分で行ってもいいんだけど、おれはそれを誰に伝えたらいいのかわからないので余計に時間がかかることだろう。衛兵の人は快くおれのお願いを承諾して、その場から離れて行った。それを見送りながら、おれはドフラミンゴさんに構われても面倒なので扉の前で待機することにした。

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 三十分も経たぬうちにクロコダイルさんのお話は終わったようで、中で人間が動くのがわかった。先ほどお願いした衛兵の人も既に戻ってきて、軽く会話をしていたおれは急にぴしりと身を整えて扉に手をかけた。そしてナイスなタイミングで扉を開く。もちろんそこには少し驚いたような顔をしたクロコダイルさんの姿があった。おれはにっこりと唇の端を上げて笑う。


「お疲れ様でした。既に船の方は港へご用意できているとのことですので、ご案内させていただきます」

「……クハハ、仕事が早ェのは嫌いじゃねェ。いいぜ、港まで見送ってもらおうじゃねェか」


 嫌いじゃねェって言い回し、おれも嫌いじゃないっていうか寧ろ好きです。ああもうなんだろうか、この高圧的な感じたまらないよなァ……なんて思ったからか、自然に顔がいつも以上の笑みを作った。口角がきゅっと上がって目元が緩むのがわかる。


「ありがとうございます。それでは、こちらへどうぞ」


 表情筋が緩みすぎたせいか、クロコダイルさんは面を食らったような顔をおれに見せたが、すぐさまおれは先を歩きだしてしまったため、そのあとどんな顔をしていたかはわからない。でもきっとおれの超美少女フェイスがあんまりにも可愛らしく笑うもんだから驚いたのだろうということくらいはわかる。この顔で十年近く生きてんだもん、おれが一番この顔の破壊力を知ってるってもんよ……。
 普通の人ならおれの笑顔で一発KO茫然自失だが、クロコダイルさんは顔を真っ赤にすることもないし、足を止め動けなくなるというわけでもないので、綺麗な顔にはそりゃあもう慣れているんだろう。女にモテそうな人だもんな〜。ていうか、男にもモテそうだけど。寧ろ女より男に言い寄られてそうだけど。つか、クロコダイルさんの赤面とか見てえ……絶対に見る機会なさそうだけど、オカズになりそうなんだよね! 見れたらヌくわもう。
 そんなことを考えられているなんて気がついてないクロコダイルさんはおれの後ろをついてきていた、のだが、ぴたりと足音が止まった。もしかして脳内でおれに汚されているというのがわかってしまったのだろうか。そんなわけはないのだが、やましいことがあるとそんふうに思ってしまう。ゆっくり振り返れば、クロコダイルさんの眉間にはそれはそれは険しいシワが刻まれていたのでありました……。


「……あの、クロコダイル様? いかが、なされましたか?」

「すこし下がれ」


 何を言われたのかわからなくて「へ?」と間抜けな声が出たと同時に、クロコダイルさんに腕を引かれる。ファッ!? ナイス腹筋……口から変な声がでなくてよかったと心底思う。ああああ……オレサマ、オマエ、マルカジリ……じゃない、違う違う。落ち着きたまえ、マジで。ちょっとゆるい脳みそを搭載しているおれにもわかるだろ? こんなところで七武海を襲えば、おれの首が物理的に飛びかねない。ひっひっふーっ! 脳内ラマーズ法を終えて少し落ち着いてからクロコダイルさんを見上げる。


「ええと、あの?」

「何考えてやがる、てめェ」


 頭上で聞こえてくるのはたしかにクロコダイルさんの声なのだが、まったくもっておれの疑問に答えてくれてはいないようだ。何言ってんだ、この人……と思ったのだが、どうやらおれに向かって言っているわけではないらしいと気がついた。半分ほど首を回してみれば、ニヤニヤ笑っているドフラミンゴさんの姿があった。


「何考えてると思う?」

「てめェの考えなんざ知るか。面倒なことをするんじゃねェ」


 はん、と鼻を鳴らしてクロコダイルさんは至極嫌そうな声を発した。うん、軽く想像はしていたが、クロコダイルさんとドフラミンゴさんって仲良くはないんだね。ドフラミンゴさんも面倒くさい女みたいなことを言って煽ってるし……でもだからっておれを引き寄せた理由はなんなんだ……? まったくもってわからないのだが、とりあえず引き寄せられたことは役得だからいいとしても……いや、いいのか? 本当にいいのか? 理性破壊されそうで怖いですUGAAAA! あんあん言わせてみたいわあ……いい筋肉してるゥ……!!!


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