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物珍しそうに二人を見ている…先刻ウルと共に先を歩いていた数人に、ウルは早口で何かを伝えると、去っていった彼らを見送った後鈴歌に向き直った。

「これから少しの間だけ、リュリと呼ばせて下さい。その後は、リンと…。…一緒に神殿跡を見ませんか?」

鈴歌は頷くと、歩き出したウルに続く。
さわさわと揺れる草葉を踏みしめながら、ウルの確かな足取りに誘われて神殿跡を通過した後、神殿裏の奥まった所にある、小さな広場に辿り着いた。

「――ここ、は…」

――鮮明に蘇る、光景。

『いつかまた此所で、必ず…っ』

薄青の神官衣に身を包んだウルの姿と、ウルの精一杯の言葉。

「――ウル…。ウル、ごめんなさい…っ、私…わたし、貴方を今の今まで縛りつけていた…」

少しの間茫然として、それから大粒の涙を溢した鈴歌の両手をウルは優しく握ると、小さく首を振った。

「――違う、リュリ。“おれ”は幸せだった。リュリに会えて、暖かさを知った、涙を知った…。…大切な誰かと約束を交わすことの貴さを、教えてくれた。そして、また逢えた」

声音は穏やかな低音だが、まるで当時のウルのような語り口に、鈴歌の中の何かが解けて、弾ける。

「ウル、わたしは民のために真摯であろうとしたわ。太陽の巫女であることに誇りを持っていた…捧げられることだって怖くなんてなかった。だけど、だけどねウル…わたしは、何も残らないことが少しだけ悲しかったの。だから、ウルを巻き込――」

「リュリ。自分を責めちゃだめだ。“おれ”が知りたいのは一つだけ。リュリは“おれ”に会えて、どんな気持ちがする?」


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