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「…私の現代の名前はウル・ライナ。奇しくもあの時代と同じ名を賜りました。私の母はれっきとしたこの地の民でしたが、母が十六の歳に街が異国の強盗団に襲われた時、逃げ遅れて…彼らに強姦されたのです。命は助かったものの、母の腹には赤子が宿ってしまいました。…それが私です。母の髪も瞳も黒でしたが、私は母の敵(かたき)に近い容姿で生まれ…母は私に名を授けた後、自害したと聞きます。…その後は族長の庇護のもとで育ちました。こんななりですが、生まれも育ちもここなんですよ」

「ウル…」

鈴歌の涙の色が変わる。
喜びのそれから、悲しみへと。
そして、何かに思い至ったように、はっと顔を上げた。

「…ウル、貴方の声は、とても穏やかだわ。貴方はいつも、自分の生を恨まないのね」

「さて、どうでしょう。今日貴女に会えなければ、何故会えない人の記憶をと…輪廻の理不尽を恨んでいたかもしれませんね。――そういえば、貴女の現代の御名前をお訊きしていませんでした」

にこりと微笑む青年…ウルの表情に曇りはなく、鈴歌は潤んだままの眼を慌てて擦って微笑んだ。

「名乗り忘れていたわ、ごめんなさい。私の現代の名前は鈴歌(すずか)、北半球にある島国、日本っていう国で生まれ育ったの。皆はリンって呼びます。スズカより、リンのほうがしっくりくるから…リンかリュリのどちらかで呼んで貰えたら、嬉しい」




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