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「――平凡な手紙でいいの。極限状態にあった少女が、まるで平和な日常の中にあるかのような筆致で手紙を書いた。それってすごいことだと、思わない?」

くるりと横に一回転して、きらきらした眼差しで両手を広げたリタに、セレストはごくりと唾を飲んだ。

「…セシア・ミュルズとマリエル・ハミルトンは最後までそのままの二人だった――少しでも長く生き残るためにいつ命を奪い合っても不思議ではない友人同士は、最後まで友人同士だったのですね」

――私は、友を裏切れなんだ。

…先の国王の一言が、ふと脳裏をかすめる。

「まるで、永遠の友情の証ですね…」

隣でティナがそっと囁いて、セレストは首肯した。

「――前言を詫びます、アンバー殿。この手紙には、十二分な抑止力があったのでしょう。我々…人間にとって」

「いいってー、セレスト君やフィオレンティーナちゃんはなあんにも悪くないよっ。私は説明を省いたしね。…だけど」

セレストの真剣な眼差しを受けて、リタの両目にうっすらと涙が浮かぶ。

「ありがとう…、私もメルも、報われる…」

小さく呟いてから片手でぐいっと涙を拭うと、リタは「かしこまらないでリタって呼んで?」と微笑んだ。

そして表情を改めると、再び箱の前に立ち、素早い手つきで凸凹の板を叩き始める――。

「セレスト君とフィオレンティーナちゃんは、このために来たんだよね」

呟きながら四角い枠の前から脇に控えると、先ほどまでとは異なる一つの光景が映し出された表面を二人に見せた。

――それはどこかで見たような場所…。

「ここは…シュテルンではありませんか?」

四方に張り巡らされた幅広い城壁に棚引く国旗に目を向けたティナは、次の瞬間はっとしたように口元を覆った。

映されている城壁の上には、幾つもの太く長い筒を先端に添えた、大きな鉄製の樽型の何か得体の知れないものが、何体も列になり並べられていた――。



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