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「――もしかして、これが、ギルの言っていた古代兵器…?」

表情を険しくしたセレストは、いぶかしむように言葉を継ぐ。

「…しかし、何故城壁に置かれたままなのでしょう。あれが兵器だとしたら、何故ラッセンブルグ領に近付いて来ないのか…」

リタは板に手を伸ばして軽く弾くと、より鮮明に大きく映されたそれを指差しながら、順を追って説明した。

「この兵器は、古代戦争で使われていた『遠隔探知照準型、オートマチックスモールミサイル』。…樽の脇の出っぱった部分が赤く光ったり消えたりしてるでしょ? その等間隔の光のサインは兵器の準備が開始されたことを表してるの。この光が光ったり消えたりをやめてずっと赤く光るようになったら兵器の始動まで約一刻。そして緑の光に変わったら、これは動くわ。…この兵器は凶悪な破壊力を持つ。筒から先端が尖った細い鉄の棒みたいなものが弓矢のように空中に飛び出すと、それは一目散にラッセンブルグ城を含めた広域目指してすごい速さで空を飛んで来るの。そして、一つが地面や城にぶつかると、そこを基点とした街一つぶんくらいの土地が一瞬で灰になるわ」

説明を聞くにつれ、ティナの顔はどんどん青ざめてゆく。

「――では、シュテルン城壁に並んだ全ての兵器が動いたら、瞬く間にラッセンブルグが滅びるということですね?」

震え気味な声で問うたティナに、リタは無言で頷いた。

「この兵器たちは、過去のユラヌス領西部…現在のシュテルンの地下に眠っていたの。古代の技術を惜しんだ古の人々が地中深くに隠したものを、何の経緯かシュテルンの識者が発見し、兵器に書かれていた発動の文字や効能を独自の見解から解読してしまった。識者は恐れおののき自らの文書を破り燃やしたのだけれど、時の権力者にそれがばれて。彼は人質にされた家族を助けるために、知識を渡した――語った後に本人は殺されてしまったけど、ね」





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