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「フィオレンティーナ様! お怪我は!?」

ギルの手から剣をもぎ取ったセレストは、細身の剣を持ったまま震えて立ち尽くしているティナに声をかける。

「…あ…、セレス…ト。…わ、わたくし…なら…、で、でも、父上が――」

力が抜けたように床に座り込んだティナは、脅えた眼差しで玉座を見やった。
そして、うなだれるように床を見つめる。

セレストはティナの無傷を確認し、そっとその手を握ると、優しく離して玉座へ歩みを進めた。
もはや息をしていない王の亡骸を数秒見つめ、ゆっくりと黙礼してから、横たわるギルの正面に膝を落とす。

「……何故です」

唸るように、言葉を吐き出した。

「何故、貴方なんです…っ! どうしてこんな…!!」

「――アホスト。お前、さらに成長しやがっ…たな…。王女殿下も…幼少から、積み重ねただけある…なかなかの剣筋だ…」

「だから僕はアホストではありません!」

「…ははっ、何、泣いてやがる。…それより…、早く、行け…」

感情がごちゃごちゃに混じりあって涙で歪んだ視界に、ギルの悟ったような顔が映る。
ギルの背中から溢れる血は、濃紺の敷布を黒ずんだ色に染め上げていた。

「…行くって…どこに。それにどうして隊長は王を」

「――元々、俺は…ギルなんて名前じゃ…ない。俺は…、西の隣国…シュテルンの…、工作員、だ…。10年前に…ラッセンブルグに入り…ギルって偽名で守護騎士団に…入った。…最初から…、王に近づき…殺めるため…に…、近衛を…目指した」

「…西の…工作員…」

「ああ…そうだ…。王殺害で…、指揮系統の、乱れたラッセンブルグ…、全土を…古代兵器…で、滅ぼす、算段でな…」




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