14



――あれは確か11の頃。
僕は血にぬれた刃を持ったまま、賊の隠れ家に立ち尽くしていた。

父母を殺め、僅かな金品を奪っていった二人の賊の根城で…僕は我を喪って刃を振るい続けたらしい。

周りは赤く染まっていて、僕はただ、刻々と刻まれてゆくゆったりとした時の流れを感じていた。

――ギル隊長と会ったのは、そんな折だった。
街の警備をしていた彼は街の小さな家で父母の亡骸を見つけ…
そして、その後街外れの廃屋で、僕を見つけた。

隊長は僕の手からそっと短剣を抜き取ると、僕の眼を見て静かに言った。
私はギル・ノスタルジア。
君は私が判るか? 君の名は? と…。

僕はぽつりぽつりと、自分の名がセレスト・シオンであること、足元に倒れている二人が父と母を殺めた賊であること、そして彼らを殺めたのは自分であることを順に語って――それからのことは、よく覚えていない。

気がつけば僕は綺麗な服に着替えられており、暖かなベッドで横になっていた。
小窓から射し込む光が、とても柔らかかった。

――後に僕は、そこが王城の敷地内の守護騎士団の宿舎の一室だと知ることになる。





先に隠し庭から出たティナを見送り、少しの間そっと花畑を眺めていたセレストは、自らの右手を見つめてから、小さくかぶりを振った。

「――駄目だよ、ティナ。僕はあなたのような方に想いをもらえるような騎士じゃない。僕は…」

汚い人殺しだ、と口の中で呟くと、再びかぶりを振って、回転扉に手をかける。

「否、僕は…王直属近衛隊、セレスト・シオン。忘れるな、この手は守るためにあることを」

ぼんやりと濁りかけていた眼差しをさっと上に向け、扉を開けると、引き締まった表情で歩き出した。



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