――パチ、パチリ…
静かな石造りの廃屋で、火の粉が小さな音を立てて弾けていた。
固形燃料の残り半分を開封しながら、一人の少女が優しく声をかける。
「セシア、セシア。起きて?」
「…ん…、あ! ごめんマリエルっ、私寝てた?」
ペンを握りしめたまま机に突っ伏していたもう一人の少女…セシアは慌てて目をこすると、自らの両頬をパン!と叩いた。
「大丈夫、時間はそんなに経ってないから」
マリエルと呼ばれた少女はふわりと微笑むと、続き頑張ってね、とセシアの背中に語りかける。
机には、半分まで書いた手紙が置かれていた。
セシアはそれをおもむろに手元に運ぶと、瞬く間に残り半分を書き上げる。
二、三度読み返してから最後に日付と名前を書き込むと、引き出しに仕舞われていた耐熱型長期保存用カプセルを取り出した。
手近な密封容器に丁寧に折り畳んで入れた手紙をそっとそのままカプセルに投入すると、厳重にロックする。
一連の作業を終えると、セシアは大きく伸びをした。
「でーきーたーよー! つっかれたー」
「ふふ、お疲れさま」
寝台に腰掛けていたマリエルはセシアからカプセルを受け取ると、壁に空いていた小さな穴にそれを埋める。
カプセルの周囲には耐衝性の資材を敷き詰めた。
「任務完了、といったところかしら?」
「あはは、誰にも命令されてない私たちだけの任務だけどね」
くすくすと笑い合う二人の表情は穏やかだ。
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