拝啓
この手紙を読んでくれているあなたへ

まずは、初めまして、でしょうか?
それとも、こんにちは、と言うべきでしょうか。

私はセシア・ミュルズ。
えっと、生まれは第27コロニー、シエラ分区(ぶんく)ノースフロスト1457番地。
今年で18歳、ようやく成人を迎えた――性別は女性です。

あ、でも今居るのはコロニーの外で、コロニーからはかなり離れたところにある廃屋です。
コロニーのほうは食糧が尽きかけて、しっちゃかめっちゃかになっていました。
もしかしたら、もう誰も生きていないかもしれません。

今は夜――
ここを書いている時点で21時15分、ぴったりです。
気温はとても低く、火を焚いていてもまつ毛が凍ったりしていますが、窓から見える星空は綺麗です。

さて、私は今日か明日、ここで息絶える予定です。
今焚いている火はもうすぐ燃え尽きますし、残された燃料もわずかだからです。
そのわずかの間に、これを残すことに決めました。
この廃屋にあった耐久型保存用カプセルにこの手紙を入れて厳重に密封し、あとは――あなたへと託せることを祈るだけです。

とと、今火を焚いてくれている人を紹介しなきゃですね。
そう、ここにはもう一人住人がいるんです。
私の幼なじみで、おそらくは共に眠るであろう人、マリエル・ハミルトン。
彼女も生まれはノースフロスト。番地は1872で、通っていた幼年学校も一緒です。

マリエルは料理が上手くて優しくてチャーミング、それから歌も上手くて。
いざというときはとても勇敢で、コロニーで食糧をめぐって隣人同士までが争うようになった暴動のさ中、私の手を取ってコロニーの外へ走ってくれたのも彼女です。




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