間接キッスの憂鬱


楽しい昼食時間。私たちはひとつのお店に入ってそれを味わっていた。
この国の幸はとてもおいしい。種類もたくさんある。
ボクたちは一番のおすすめを選ぶ。すごくおいしそうだ。
「キノ、これ食べる?」
「ああ。レイも食べるかい?」
「たべるたべる!」
レイが満面の笑みを浮かべる。かわいい…。
私たちは、決して裕福ではない路銀の中からこれぞという食材をえらんで、運ばれてきた料理に舌鼓を打つ。ふたりで一緒におすそわけ。二倍美味しい。
切り分けた肉をキノの皿に置いていると、「サービスです」という声とともにカップが置かれた。それぞれ目の前のそれを見る。蓋がついていて、ストローが一本ささっている。
(タダなんて!)
「最高の店だ」
「ほんとにね」
さっそく、ボクは口をつけた。レイも。
一口飲んで、「おいしい」と笑う。キノが「あまい味がする」と言って、私は自分のカップを見た。
こっちはすっきりしていて、あまいというかんじではない。どうやら種類の違ったお茶だったようだ。
そして、ボクはあることを思いつく。
「飲むかい?」自然な形でカップを出す。
「うん! キノも飲むよね?」
「ああ」
(もちろん。)
そうして渡されたカップを受け取ったあと、私はふと気づく。蓋のされたカップは、飲み口がひとつしかない。
それってつまり――。
レイは気付いたようだった。顔が赤く染まっていく。
(これって……間接キスじゃないの!?)
ボクは、そしらぬ顔でお茶を飲む。うん、おいしい。
気づいてしまえば、意識はそこにしかいかないもので。私はカップを凝視したまま固まってしまった。
動かない私を見て、キノが不思議そうに首をかしげる。
(本当にわかりやすいな。)
「飲まないの?」
「えっ! の、飲むよ!」
ボクは、思わず零れそうになる笑いを堪える。
キノはなんとも思わないのか。そうか、そうだよね、思わないから渡してくるんだよね、当然か。
でも、私は気づいちゃったわけで、キノが気づかなくても事実は変わらないわけで、けど飲まないと怪しまれるし、かといって飲んだらキノと……って私はなにを考えてるの!
(悩んでるな。)
思考がぐるぐるまわって、もう視界もまわってしまいそうだった。私は意を決して口をつける。
(あ、飲んだ。)
「――…」
「おいしい?」
「う、……うん…」
レイは曖昧に答える。
味なんてわかんないよ!
(ふふ。…顔、まっかだよ?)


私の気も知らないで、「よかったね」なんて言ってキノがカップを渡してくる。こっそり深呼吸しながらそれを受け取って、私は気づく。
もしかしてこれを飲んだらまた間接キ……って、ああもう!!


(ああ、楽しいな。)
(キノも意地が悪いねー。)

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反転するとキノ→のコメントが読めます
ちょい意地悪です(キャラ崩壊注意)



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