がくえん!


テレビの前のソファの反対側の椅子の前のデスクの上のパソコンの画面の前のみんな、部屋を明るくして離れて見てね!
と言うところだけどケータイの人もいるしスマートフォンもPSPだったりする人だっているかもしれないじゃん! どうしよう!
そんなこんなで学園キノ、はっじまるよ〜☆

とかいう木乃のナレーションが入ってOP曲が終わり、スポンサーの羅列とCMが開けて本編が始まって、またCMが入って開けて、
ガンファイターキノが変身して、効果音が鳴って、声高々に名乗りをあげ、敵が「きたな…ガンファイターキノ!」とか言ったときのことです。

キノがするどい目線で、しかし内心ではめんどくさいなと思いながらそこにいる敵をにらみつけると、後ろで声があがりました。

「えっ! 木乃ちゃん!?」

なんと、木乃のクラスメイトの玲です! これは急展開です。バレるはすのない変身が見破られているのですからね。ガンファイターキノも焦ります。

「ええっ!? ちょっとエルメス! なんでばれてんのよ!」
「知らないよ!」

ストラップのエルメスもあわててポッケの中から答えます。
そりゃそうです。見た目にはまったくぜんぜんさっぱり変わっていないガンファイターキノですが、とにかく変身の後は気づかれないということになっているのですからね。
クラスメイトにこんなところを見られたら恥ずかしくて憤死します。これは番組の存亡にかかわる大事件です。

「とにかく、こんな時に便利な言葉があるわ!」

ガンファイターキノは駆け寄ってきた玲に大きく手を回して――そうですね、洋画でいう「ガッテム!」ってかんじで上から下に腕を振りながら手のひらを見せたわけですが。

「木乃ちゃん魔法少女だったの!? でも衣装かわいくないね」
「話は後よ! …ってなに言ってんの!」

なぜか玲の目はランランと輝きます。ホワイト五割増しです。

「もっとかわいいのが似合うよ〜どうして下はいてるの? 小説だから見えないよ?」
「ちょ、小説とかナシだから!」
「うわっ なんかしゃべってる!」

メタフィクションな発言に、思わずエルメスもツッコみます。
小説の中の人物が「小説だから」とか言っちゃったら、時の文の私なんかどうしたらいいんですか。ナレーターというか解説実況役ですか。
しかし今は緊急事態。そんな一人ツッコミも華麗にスルーして進むのが吉です。

「いーからアンタは逃げなさい!」

ガンファイターキノが流石なクサい台詞を、「クサいとか言うな!」
失礼。ヒーローらしい言葉を言います。

たしかにここへ一般人(しかも知り合い)がいたら、足手まといで邪魔だし、巻きこんだ時の夢見も悪いし、だいいち校庭の中心で必殺技を叫ぶのが恥ずかしくてたまりません。
ガンファイターキノは「えー?」とか言う玲をどうにか説得し、戦いに身を翻しました。


このへんでキノの戦闘シーン開始です。
今回は玲も登場したので、通常45分くらいからの戦闘シーンが早めに始まります。このあとも何かあるな…と感じさせますね。
もちろん、その期待は裏切りません。





キノが銃を撃ちまくると、どっかああぁん! と派手な音を立てて敵が倒れました。ガンファイターキノは余裕の笑みを作ります。

「さて、さっさと戻しちゃわないとね」

ガンファイターキノの心が学食色になり、ビックカノン〜魔遮滅銃〜を構えた時でした。

「そこまでだ! ガンファイターキノ!」

かわいらしい感じのソプラノボイスが勇ましく登場します。

ツインテールに二―ハイソックス、顔にはオペラ座のような仮面をつけた女の子でした。手には猟銃。…え? 猟銃?
可愛らしい魔女っ娘のような風貌に似合わない武骨なライフルです。少女+マシンガンという、ある層をピンポイントに狙ったような組み合わせで彼女は現れました。

「ボクは謎の学園ハンターR」

少女が名乗りを上げます。

「ガンファイターキノ…ボクはキミを倒さなきゃいけないんだ!」
「ボクっ子キターー(゚∀゚)ーー!!」
「あんたは黙ってなさい!」

いつのまに現れたのか、サモエド仮面がテレビ前の大きなお友達の声を代弁しました。両足をそろえ手をYの字に上げ、くるくるくるくる回ります。純白のマントが翻ります。

「キミの屍を越えて強くなる! かくご!」

少女がまた萌えボイスで勇ましい台詞を、指を突きつけてカッコよく怒鳴り上げた時でした。

「しまった!」

高速スピンになったサモエド仮面のマントから、ほうぼうに手りゅう弾が飛び立ちました。
キノも少女も、もちろんサモエド仮面も爆発に巻き込まれます。

「!?」
「なんなのよ!」
「ひでぶ!」

画面が煙幕でくもります。真っ白です。


やがて徐々に煙幕が晴れ、サモエド仮面のアップが映し出されました。
言ってませんでしたけど、ここ屋上です。コンクリートの床がそこらでくぼみを作っていました。いやはや迷惑ですね。

「む……」

サモエド仮面が頭をふります。細かい石がパラパラ落ちました。
石が落ちる先に彼の手があって、それがなにかやわらかいものを揉みます。ふにっ、という効果音が鳴りました。

「む? なんだこのやわらかい感触は?」
「いったぁ……へ?」

それは学園ハンターRの胸でした。ふたりはしばらく見つめ合って固まります。
やがてRの顔がみるみる赤く染まって、かわいらしい悲鳴が上がりました。

「きゃああっ!」
「なに触ってんの! よけろヘンタイ!」

ガンファイターキノが少女からサモエド仮面を引きはがしました。
そのまま勢いよくパンチ。

「ボクもうお嫁に行けない……!!」
「私ならいつでも大歓迎だぞ?」
「だまれこのロリコン!」

またパンチ。パンチってか鉄拳。裏拳。
ピョンとおきあがりこぼしのごとく戻ってきたサモエド仮面の鼻にクリティカルヒットでした。

「ごめんね。だいじょうぶ?」

キノが手を差し出します。
涙目の少女は身を守るように後ずさり、がばっと立ち上がりました。

「ううう……お、おぼえておけ!」

捨てゼリフです。

「うむ!」

サモエド仮面が鼻血を流しながら、力強くうなずきます。

「「アンタは覚えなくていい!!」」

女子二人の声がハモりました。


さて、謎の学園ハンターRも去り、キノは生徒をもとに戻します。
ほのぼのするシーンですが、やっぱり割愛します。今回のメインはそこではありませんからね。


その後、木乃の食堂シーンへ切り替わり、木乃は誰かと話しながらゴハンを食べます。
そう、クラスメイトの玲です。

「木乃ちゃん木乃ちゃん、黙ってるから次の衣装デザインさせて」
「あれは変身スーツだから変えられないのよ」
「なんだぁ…じゃあ見学は?」
「危ないからダメ」

玲はガンファイターキノを魔女っ娘だと思っているようです。
後ろ指を指されないどころか好意的で助かりますが、これはこれで面倒だだと思いながら木乃はラーメンをすすります。

「木乃ちゃんやさしいね! ねえ、これから一緒にお昼食べてもいい?」
「別にかまわないけど…」
「やったあ! あ、これ食べる? 自信作なの」

玲は喜んで、自分のお弁当のおかずを木乃へ提供します。
木乃はもちろんいただいて、こんなおいしいものが食べられるならいいかなとか思います。ええ、フラグですとも。


楽しそうな二人をバックにイントロが流れます。今日の放送はおしまいです。画面がどんどん引いていきます。
エンディングに行く直前、玲のスカートのポケットからエルメスではないストラップが覗きました。

みなさん、もうお分かりですね?




[list/text top]


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -