胡蝶の夢


昨日、夢を見たの。

夢の中のわたしは、先が固い安全靴を履いていた。おばあちゃんちで見たような、しっかりとした紐のくつ。
服は黒かった。
シャツを着てベルトを締めて、腰には銃。モデルガンなんかじゃない本物だと、なぜかわかった。重みも艶もどこか違う。
いつものわたしなら、嬉々としてそこらを撃ちまくるんだろうけど。夢のなかのわたしは、ばかすか撃つようなかんじじゃなかった。

かといって、銃刀法違反の中で特別に許可をとって持っているからという使命感があるってことでもなく。あるから撃つなんて常識に縛られない俺カッコイイ!的非行感に走っているというわけでもなく。そこに吊っているということが普通だって感覚。


撃ちたくないというわけでもないみたいだった。
例えるなら、走りたくないけど遅刻しそうだから走るみたいな、起きたくないけど怒られるから起きるみたいな。そんな、やるときゃやる日常のひとつというかんじ。

今のわたしにとっては、すごくもったいないって思うんだけど。夢のわたしは違ってた。
弾を減らす方がもったいないって。弾なんて、使ってナンボでしょ? 射撃場には予備がちゃんとあるし。変よね。



そばにはバイクがあって、エルメスって呼んでた。あのストラップとおんなじ(毎朝でっかい声で起こしやがるから、夢にまで出てきたのね)。
で、バイクのエルメスにはトランクが積んであった。
あと、キャンプで使うような寝袋。それから茶色いコート。
そのコートを見たとき、一瞬なんともいえない気分になってなにかを思い出したんだけどさ。起きたら忘れてた。夢のなかの出来事だから、まあ仕方ない。
夢ってそんなもんよね。



わたしたちは世界中を旅してるとかで、そこではたき火をしてた。
火が弾けてぱちぱち鳴って、夢のなかのわたしはお茶を飲んだの。りんごのにおいがしたから、たぶんアップルティー。缶の中に入ってるっぽかった。

「ボクが旅をしてる理由?」

夢のなかのわたしが言った。
夢のなかのわたしは、自分のこと『ボク』って呼んでるのね。あと言葉づかいも、なんか男の子みたいにしゃべってた。そうなのかいとか、違うだろとか。わたしだって女の子らしくないって言われるけど、そういうんじゃなくて。あえてその口調ってかんじ?

「食べた後にしよう。森はすぐ暗くなる」

また夢のなかのわたしが言った。それからなんか包みを取り出して、それを口に入れた。
これがちょうまずいの。味がなくて、とにかくもさもさで、パッサパサ。あんなの食べるなんて信じらんない。そこいらのコンビニで買った駄菓子の方が、数百倍もおいしいのにって思った。




場面は変わって、わたしたちは宇宙にいた。
息ができるのかとかなんで浮いてんのとか、いろいろ変なとこはあったけど、そこはやっぱり夢の中。疑問なんてこれっぽっちも持ってなくて、わたしたちは平然としてた。
その時の記憶の中では、わたしたちに特別な力がかかっててそうなってるって知ってたの。これも、起きてからツッコんだわよ。どこのヒーロー冒険モノの主人公かって。
B級映画にもほどがあるわ。

わたしの隣には静先輩がいた。
夢にまで出すなんて、わたしってば恋するオトメ!? なんてドキドキしちゃったけど、夢のなかのわたしはヘーキのヘーザだった。とりあえず今のことを片付けてから考えようってかんじで、恋とか愛とか青春とか、感情は全部後回しってかんじ。

わたしたちは肉とか魚の話をしてたんだけど、それで、敵っぽい女の人が言うわけ。
あれ? 敵だったっけ? なんか、自称女神だったような。まあどっちでもいいか。夢のなかのわたしもそんなかんじで後ろを向いてさ。
で、怒鳴り声。

「女神なめんな!」

ぴかーって画面が光って、そこで目が覚めたの。わたしベットから落ちてた。痛かったあー。
……なに笑ってんのよ。
聞いてるの? 犬山!




130131



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