家の中でできる遊び


(軽度の花粉症状をからかう表現があります)


よく晴れた春の日。
キノはあるマンションの一室にいた。

窓の外では、時おり風が緑を穏やかに揺らす。
室内にも、暖かい日差しが柔らかく降り注いでいた。絶好の外出日和だ。

「レイ」

キノが声をかける。
すると、

「うー」

こもったような声が返ってきた。クッションを抱きつつ、キノをちらりと見る少女。
この部屋の主、レイだった。

「レイ、いつまでそうしているつもりだい?
ボクは別にかまわないけれど、こんないい天気の日に家に閉じこもっているのはどうかと思うよ」

キノが諭すように言う。

「わかってるくせに……」
「でも、遊びたいんだろ?」
「……キノはなんともないからそう言えるんだよ」

レイが落胆した声を返した。

「もうね、ほんとにひどいんだから!」

言い捨てられた言葉には少し怒りが込められていて、相手を責めているようにも聞こえた。
キノはそれを受けて、眉をハの字にする。

「それって、やつあたりかい?」
「……そう、かも」
「…………」

キノが溜息をつくと、レイはばつが悪そうに視線を逸らした。
その鼻は赤く、目元は涙で潤んでいる。

この季節の風物詩――花粉症だ。

「スギなんて全滅しちゃえばいいのに……」
「それを植えたのは人間だよ」
「キノの正論も今は嫌味に聞こえる」

レイは、うらめしい〜、と呟きながら鼻をすすった。
ぐすっ、という音が聞こえる。瞳がまばたきを繰り返す。

「…キノ、にやにやしてる」
「え。……そうかな」

涙目で睨まれて、キノは頬に手をあてた。
花粉になんの脅威も感じない人間からすれば、レイの様子は微笑ましい以外の何でもない。
ようするに、花粉が舞う外に出たくなくて、こんなわがままを言っているのだ。

「マスクをしたら?」

キノが提案すると、レイは「えー」と口を歪めた。

「だって……かわいくない」
「ボクにとっては、鼻が真っ赤でもマスクをしていても、レイはレイだけど」

キノが言う。

「どちらにしても、魅力的だよ」

そして、にっこりと優しく微笑んだ。

「……キノ、言ってて恥ずかしくない?」
「どうしてだい?」
「私は恥ずかしい」
「照れるレイも可愛いと思うよ」
「ううう……」
「うなるレイも可愛い」
「……もう黙ってくれぇ!」

真っ赤になって、クッションを投げつけるレイ。
キノはそれを軽々と受け止めて笑った。

「レイで遊ぶのは楽しい」
「キノは意地がわるい」

レイが鼻と顔を朱色に染めたまま言う。

責めているようにも聞こえる台詞。
しかし、さきほどとは違い、怒りは全く見受けられなかった。

「ごめんごめん」
「誠意が感じられない!」
「そうかな?」
「そうだよ!」



fin
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このあとキノは持参した甜茶(※花粉に良いらしいというお茶)を淹れました。
なにげにデザートとしてのプリンも買ってきてくれてるよ!という設定(収集つかないのでカット)



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