黒子のバスケ | ナノ

Yoshitaka.m

毎年、この時期に俺を悩ませることがある。
それはバレンタイン。
主に女子が稀に男子が想い人にチョコレートをプレゼントする2月14日の日のことだ。

俺にはタカこと森山由孝という大の女の子好きな友人がいる。彼とは中学生の頃から親しくしているのだが、この日になると必ずといっていいほど彼が泣きついてくる。

それが悩みの種だった。

高校生になっても彼は相変わらずで、去年一昨年と部活が始まる前の調理室に飛び込んできては、また一つも貰ってないだとか、ユキがどれだけ貰っていただとかバスケ部が始まるまで、うだうだとしていた。

今年もくるんだろうか。バレンタインは明日に迫っている。

来るならチョコの一つでも作った方がいいのだろうけど。

作るのは問題ない。
というか男子唯一のお菓子研究部部員、俺としては、作りたい気持ちが大きいのだが、タカは女の子から貰いたいのだ。

何より同姓からなんて複雑だろう。

ならどうしようか。
と考えていたら、いい案がパッと閃いた。
よし!それでいこう!

俺は早速帰り支度を整え、スーパーへと向かった。



タカがどれだけ女の子が好きなのか。
それについてちょっとだけ話すと、中学生のころはまずクラスから厳選をはじめ、同級生に広がり、フラれたら、上級生、下級生と俺が知ってるだけでも、五人以上の女の子に憧れを抱き、告白していた。付き合ったひともいたけれど、三ヶ月くらいしかもたなかったと記憶している。

今はどうなのか。
タカの女好きは、部活内でも健在しているらしいことは、タカと同じ部活のクラスメート、コージーからよく聞いていた。それによればアイツは試合前でも会場の女の子の話をしているらしい。

キンキョー感の少しでも感じてれば、そんな発言が飛び出すはずはないんだけど。

でも彼は根っからの女の子好きだから、もしかしたら試合よりも、大事なのかもしれない。

しれないというのには理由があって、彼は普段から言っていることが本音なのか、嘘なのかわからないポーカーフェイスを張り付けている。だから友だち歴6年目に突入した俺でも未だによくわからないときがあるのだ。つまり何考えているか全く分かんない。訂正。一つだけははっきりしているのだが。


そんなわけで今日はバレンタインデー当日。四限目が終わり一息ついていると、コージーが弁当箱を手に近づいてきた。

「七海、今日も食堂で食べるよな?」

『行ってもいいのか?』

「断る理由がないよ」

『じゃあお言葉に甘えさせていただきます!』

コージーは温厚で優しくて、いつも昼食の際にこうやって誘いに来てくれる。バスケ部に入部していない俺が行っていいのかとか、毎回ぐるぐる悩むけど、食堂ではいつも隣に座ってくれるし、ミツヒロ君やシンヤ君も先輩と呼んで親しげに話しかけてくれるし、何よりキャプテンのユキがいいと許可してくれたからお言葉に甘えさせてもらっている。

『タカ、おはよ。…なんか機嫌良さそうだね?』

食堂には既にタカが来ていた。珍しく俺でもわかるくらい上機嫌な表情に、もしやと思って話しかける。

「あ、ナナ。わかるか?さすがナナだ。顔に出してるつもりはなかったんだけど」

『ッ じゃあ…貰えたの?』

タカがフッと意味ありげな口元に笑みを浮かべた。

「ぁあ!義理だけどなッ」

ポケットから出したのは赤いリボンのラッピングが施された可愛らしい箱だった。

なんだ、心配して損した
貰えたんなら良かった

ほっとして『良かったね』と声をかけようと口を開きかけた時、ずきりと胸が痛んだ。

なんだろう、今の。

反射的に胸元に手を当てた。でも特に異常は感じられなくて首をひねる。

心拍数はちょっとだけ早いけど、怪我とかではないみたい。

じゃあさっきのは一体。


「ナナ?」


不思議に思って悶々と考えにふけっていると、視線も自ずと下がった。俯きかけていると、頭上から心配そうな声がして、ゆるゆる目線をあげた。

「どうかした?」

そこには眉尻の下がったタカの表情があった。今までも何度か見てきた、でも初めてみるタカの表情は、見ているだけで苦しくなって、ますます訳がわからなくなった。

なんで、痛くなったの?
なんで、苦しくなるの?

終いには頬を温かいものが伝って流れ、慌て始める友人たちを見ていたら、何となく気がついてしまった。

俺は、女の子好きの彼が好きなんだって。


いつから unrequited love?

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