黒子のバスケ | ナノ

Yukio.k


「笠松先輩!!コレ受け取って下さいッ。先輩のために作ったんです!!」

「これからもチームは違うけど、お互いバスケがんばろーね?笠松君」

「大好きなんです、センパイ!!私の気持ち受け取って下さいッ」

教室の後ろ扉前には、女の子の塊ができていた。その中心に今さっき昼食をとり終えた笠松の姿があるはすなのだが。

大丈夫かな…。

七海は自分の席から、不安そうにその集団を見つめていた。もう毎年の事なのはわかっている。だけど今年は卒業することとWCでの活躍の成果もあるせいで、朝来る途中にも他校生から貰ったのだと、げんなりしながら登校してきていたのに。

そもそもたまたま登校日が重なったのが悪かった。三年は授業自体はもうない。だから週に一度あるかないかくらいの登校日があったのだ。

それにしても遅い。
受け取って直ぐに出てくればいいのに。
ますます不安が増幅していって、いてもたってもいられなくなった七海は意を決して集団の中に飛び込んだ。

中に入っていくと、キャパシティオーバーで呆然と立ちすくみ、「あぁ」とか「そうか」などと困惑しながら女子と話している彼がいた。

やっぱりもっと早く助けに来ればよかった

後悔ばかりが募っていたけれど、ひとまず助けなきゃと気持ちが先行する。

『笠松、大丈夫?』

「あ、白崎」

背中をさすってやると、頭上から感謝の言葉が聞こえてきた。見上げればさっきよりも幾分か顔色が良くなった笠松が薄く笑っていて、つられて貰い笑いした。

けどそうしてずっと和んでいても、女の子に囲まれている現状は変わらない。

でも好意は無駄に出来ない。

そこで七海は出来る限り優しい声色で言った。

『彼に代わってお礼を云います。ありがとうございます。だけど彼にはシャイなところがあって、特に異性と話すのは苦手なんです。気持ちは十分に伝わっています。けれどこれ以上は迷惑なんです。だからこの袋に入れて教室に戻って頂けませんか?』

すると互いに顔を見合せあった彼女たちが「わかったわ」とでも言いたげなやわらかい表情を浮かべ、両手で広げた紙袋の中にパッケージを入れて教室を後にしはじめた。

笠松のファンはホントにいい子ばかりだな

時々「迷惑かけてごめんね」とか「陰から応援してるね」なんて暖かい言葉までかけてくれる子までいた。

塊だった彼女たちの最後の一人がいなくなったとき、紙袋は2つめまでもが溢れそうなほどだった。

「サンキューな、マジで助かった」

『ううん。ごめんね、早く助けなくて』

困ったように笑うと、「‥‥七海は悪くない」と抱き締めてきた。

『か、笠松ッ 学校では名字でって言った!!』

それに廊下でこんなことしてたら、誰かに見られてしまう。だんだん羞恥心やら誰かに見られた時の恐怖心で涙が溜まってきた。バレちゃうよと呟くと、その涙を指で拭った笠松が男らしい笑顔でいった。


「この際いっそバラすか?」


カッコいい笑顔でとんでもないことを言ってのけた笠松に、七海の顔が赤くなって、ますます涙目になったのは言うまでもない。


憧れ嫉妬してる

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