黒子のバスケ | ナノ

key personはふたり

七海のクラスには太陽に負けず劣らず眩しいやつがいた。名前は黄瀬涼太。現役モデルで、髪色も綺麗な金色、背も高い。直接聞いてはいないけど174cmの七海や笠松より高いから、180cm以上は余裕である。そんな奴が、モテないわけがなく、休み時間の度に女子に囲まれている風景は見慣れたものだ。


「七海、黄瀬の奴どこにいったか知らないか?」

『あ、笠松さん。おはようございます!黄瀬はさっき女子に呼ばれて、行っちゃったんですよ』

いつも女子に呼び出されるタイミングを見計らったように現れる。それが黄瀬のセンパイでバスケ部キャプテンの笠松幸男。七海の憧れであり、尊敬している、黄瀬よりも輝いているその人だ。

いつもタイミングを逃して、黄瀬の席つまり、七海の前の席までやってくる。毎回思うことだけど、黄瀬はわざと逃げているんじゃないかとさえ思う。

返事を聞いた笠松が軽く舌打ちした。

「毎度申し訳ないんだけど、伝言頼んでいいか?」

そしていつものように眉を下げる。ここまでの一連の動きはもう何度となく見ているので、七海も快く承諾した。

『全然。気にしてないですよ、セーンパイ』

わざとらしく最後だけ強調していうと、笠松に頭をはたかれた。

「 お前にセンパイ呼ばわりのはなんか調子狂うんだよ、あとその敬語」

『まぁまぁ。ここでは後輩ですし、仕方ないじゃないですか。…それに俺、変に注目浴びたくないし』

「ここじゃなくても敬語使うじゃねーか」

七海がぼそっと呟くと、笠松もぶすっとした態度で反論してきた。

だってしょうがないじゃないか。
どうやったって、三年の年の差は埋まらない。
もう昔みたいに無知じゃない以上敬わないわけにはいかないのだ。
笠松さんだってわかっているだろうに。

笠松と七海は小学生よりも前から親しくしている幼馴染み。
だからこそ上下の差をつけたくない。
笠松の気持ちはそんなとこなんだろう。けど七海は納得していなかった。

『まぁ……、その話は今度しましょ。黄瀬に伝言なんですよね?森山さんも待ってますよ?』

教室の外には此方を伺うように笠松の同級生である森山が顔を覗かせていた。

「ッ!! 今日は練習前にミーティング入ったから、3年の教室に来いって伝えとけ!」

『分かりました! センパイも調理実習頑張って下さいね』

「お前、またッ!」

「置いてくぞー」

チッと舌打ちした笠松を、手を振りながら微笑んで見送っていると、反対側のドアから黄瀬が入ってきた。

「白崎っち、今笠松センパイ来てなかった?」

『きてた』

「そっスよね! で、なんて言ってたスか?」

黄瀬は自分の席つまり、七海の前に座るとくるっと身体の向きを椅子ごと変えた。

『ミーティングあるから、始まる前に3年の教室来いって 』

「珍しいっスね、急なミーティングなんてー」

そう呟いた黄瀬が「白崎っち、サンキュー」と、クラス中の女子を虜にするような綺麗な悩殺スマイルを浮かべた。

『笠松さんに頼まれただけだから』

笠松が来る前に読んでいた本に視線を戻すと、黄瀬は拗ねるように口を曲げた。

「白崎っちって笠松センパイの時だけ、態度変わりすぎじゃないスか」

『ん?』

「幼馴染みだって聞いたけど、それにしてはなんか……」

何を言い淀んでいるのかわからない。
七海は本から顔をあげ、首を傾げた。

『ずっと一緒だから、トクベツなんだ』

「特別、スか」

『他に言い様ない。でも黄瀬君もトクベツだよ?』

突然のトクベツ発言に、黄瀬の身体がぴくんと反応した。

「えっ……そ、それどーいう意味スか!!」

実を言うと七海は人が苦手だった。
笠松の前では普通に話せる。けれど、家族以外の人の前では、身体そのものが硬直し、辛うじて最低限の会話は出来るものの弾むような会話はできない。
目付きがきつくなり、人相が悪くなる。評判があまりよくないのもこれが原因だ。なのに黄瀬は普通に接触してくる。七海も不思議と黄瀬だけは大丈夫で。

だから黄瀬はトクベツだ

だけど

『教えてやんない』

黄瀬は確かにトクベツ。
だけど尊敬してる笠松さんの方がトクベツだし。何より黙っておく方が面白そうだ。

トクベツなユウジン
トクベツなセンパイ


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