秘密基地でのクリスマス |
秘密基地でのクリスマス 「じんたん、じんたん。明日はメリークリスマスだよぉ!!」 「だなっ!!みんなで集まってパーティーしねーか?おれ、母ちゃんに蒸しパン作ってもーらう!!」 「じゃあわたしは、クラッカーと部屋のかざりの準備!!」 「うっひょ〜!!じゃあおれ、シャンパーン!!子ども用のもってくる!!」 「ミニクリスマスツリーはおれが持ってくるよ」 「私はツリーの飾り用意するわ」 『じゃあ僕はおかあさんとケーキ作ってくるね』 「じゃあめんまはね、たくさんお菓子もってくる!!」 めんまのいないクリスマス 「…たん、……んたん、…じんたんってば起きろって!!」 「…ん、…ってぽっぽ?!!」 「はよっす、じーんたん」 何だか騒がしいと、薄目を開ければ、ベッドの縁からのぞき込むような、ぽっぽの顔と目があった。 体を起こして時計を見ればまだ朝の6時で、頭に手を当てため息をはきだした。 「…親父は?」 「下で飯作ってたぜ」 悪気なくニカッと笑ったぽっぽに何も言えず、俺はもう一度ため息をはいた。 めんまが成仏して、俺はそれから真面目に高校生をしていた。たまにあいつらとも連絡を取り合って、空いた時間を取り戻すかのごとく、頻繁に秘密基地への出入りを繰り返している。 そして今日は冬休み最初の日。ようやく勉強から解放された朝の6時に大声で起こされた俺の気持ちも考えて欲しい。 「…つか、こんな朝っぱらからどうしたんだよ。まさかただ朝飯を食いに来たわけじゃないよな」 「俺がそんな奴に見える〜?じんたんヒデェ〜!!あ、おじさんもう一杯ッ!!」 「…育ち盛り可愛い!!」 口に米粒をつけたまま、お椀におかわりを貰うぽっぽは、もう違和感がないくらい頻繁に俺の家に来ていた。ぽっぽ曰わく、「昔からよく来てたじんたん家が一番入りやすいんだよ」とのこと。 「つーわけで、腹ごしらえもしたし、じんたん行こうぜ?」 「…俺、何も説明されてねぇんだけど」 「あ、やべ。食うのに夢中で忘れてたわ」 「……」 「そんな呆れた目で見るなよ〜、じんたん!!悪かったって、な?だっていつ来てもじんたんちの飯うまいんだぜ?仕方ねぇだろ!」 「まぁ、別に今更だしな」 入り浸ってるのって。 「……で、何処に行くって?」 「そりゃあ決まってんじゃん、秘密基地に!!」 「…こんなさみぃのに?」 「冬なんだから寒くてなんぼだろ?」 「…まだ6時40分なのにか?」 「おう!!7時集合だからな。ほたるなんて俺が行ったときにはいたから、5時半くらいには来てたんじゃねーかな」 ぽっぽはめんま成仏以来、自宅に戻るようになった。やっぱりあそこは“みんな”の秘密基地だ、と。ってそんなことは今はどうでもいい。 「…集合時間ってなんだ。つか何も聞いてねぇんだけど」 「そーいやじんたんには連絡してなかったな」 「おい」 仲間外れか。 …まぁ確かに今の俺は昔みたくリーダーっぽくはねぇーけどさ!! 機嫌を悪くした俺に、ぽっぽが両手を宥めるように動かした。 「あ、や……ほたるが知らせんなって言うからさ」 「ほたるが?」 「なんか考えがあるみてー。けど、俺等にも知らされてねーんだよ」 だから直接がいいだろって思って、じんたんを呼びに来たんだ。そうぽっぽは言った。…だったら 「それ俺行かない方がいいんじゃねーかな」 「大丈夫だろ、じんたんにゾッコンだし?」 「誤解招くような言い方だな…」 でもまぁ確かにつるこを除いた他のメンバーの中だったら一番信頼されてる気はする…けどさ。 「…けどまじ問題ないと思うし、時間勿体ないから行こうぜ!じんたん」 「あ、おいぽっぽ!!」 渋っている俺の腕をひっぱって、ぽっぽが急に立ち上がり走り出した。おいおい、ぽっぽ…ほたるに怒られても知らねーぞ。今日は柊とベル模様の長袖アロハを着ているぽっぽの背中を見ながら、小さく嘆息した。 「おっまたせ〜!!」 『ぽっぽ珍しいね、キミが一番最後だなん………じ、じんたん?!!』 先に意気揚々と暖簾をくぐったぽっぽの後から顔を出せば、こちらを向いていた瑠衣と目があった。ほたるは余程驚いたのか、目を丸くして動きをとめている。 「は、じんたんだって?おいぽっぽ、まだ呼べなんて指示してなかっただろ」 「え、そんな話だったか?」 「聞いてなかったんだぁー。これだからぽっぽはー!」 「まぁまぁ、来ちゃったんだから仕方ないわ。瑠衣、困惑気味な隊長さんに状況説明」 『うん、そうだね』 つるこに苦笑いを返したほたるが再び、俺の方をみた。眉を軽く寄せたその表情は怒っているというよりはいたずらがバレた子どものような表情をしていた。 『じんたんごめんね』 謝られる意味が分からない。 呼ばれてもないのに勝手に来たのは俺の方だ。なのになんで… 「何でほたるが謝るんだよ」 『じんたんに隠し事してたから。あのね本当は準備終わったら呼ぼうと思ってたの』 「準備…?」 首を傾げてから、辺りを見回す。 なるほど…今日はクリスマスか。 地図の上には「クリスマスさわいじゃお!!」と如何にもぽっぽが書きそうな垂れ幕があって、その周りを白い花でユキアツが飾っている最中だった。 壁のあちこちには星やら雪の結晶のシール。それを貼っていたのはあなるで、つるこはコーヒーメーカーをいじっている。 『前にさ、クリスマスパーティーしたときはじんたんがいろいろ指揮ってくれたでしょ?だから今日は僕があの時と同じ飾り付けにしたいなってみんなに頼んだんだ。…じんたんコレ覚えてる?』 ほたるが差し出してきた写真。 それはあのクリスマスパーティーのときに撮った集合写真だった。 サンタの帽子を被っためんまとじんたんを中心に、トナカイのツノと真っ赤な鼻をくっつけたぽっぽ、あなるは真っ白いボンボンがついた真っ赤なワンピースで、ほたるとつるこはハンドベルを両手に持ち、ユキアツはシャンパングラスを片手に持っている。 「…懐かしいな」 『ねっ。だからこれっぽくしたかったんだけど…あなるは真っ赤なワンピは嫌だーっていうし、ぽっぽのが身体おっきくなったからサンタさんのが似合うーとかいろいろ変わっちゃったんだ…』 と頬をかいたほたるがもう一度俺をみた。 『ホントは午後からの予定だったけど、…クリスマスパーティー始めちゃおうか?』 その問いかけにユキアツ、あなるがいち早く答える。 「すげー寒いけど、平気だろ」 「ここでならいつまででもいれそうだしね!」 「きっとめんまも楽しんでくれるよなっ!!」 と、続いたのはぽっぽで 「それじゃあ隊長さん、かけ声お願いね?」 と、つるこがゆげがのぼるカップを渡してきた。みんなにカップが渡ったのを確認したほたるがまた俺をみて、それを合図に「メリークリスマス!!」と叫ぶ。 『「「「「かんぱーい!!」」」」』 パンパンパンパンッ カップの当たる音に混じって、クラッカーがなる。いつの間にかケーキも登場して、『じんたん、入刀して!入刀!』と、やたらテンション高く催促してきた。 めんま、俺等はこのとおり仲良くやってる。たまには今日みたいに省かれるときあるけどさ、それはほんとたまに、ほたるのサプライズ企画のときくらいだから、心配すんなよ? メリークリスマス、めんま ×
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