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side:anaru 学校に着いてすぐ、指導教員に呼び出しを受けた。 何でも昨日のことを保護者が見て、電話してきたのだそうだ。 …最悪だ。 これから校長室に行くという先生のあとについて、階段を下りて昇降口の前を通過しようした。随分と私の噂が広がっていたみたいで、ひそひそと囁き声が聞こえ、自分たちの下駄箱に視線を送ると、つい最近見た、けれどこの場所では随分と久しぶりな顔があった。 宿海だ。 あの日の約束を果たしに来てくれたんだろうか? ぼさっとした髪は相変わらずだが、私を見ながら間抜けた顔で、上履きを手にしている。 …こんなとこ見られたくなかったなぁ。 教員に促されて、仕方なく校長室に向かった。けれど、その足取りは何十キロかくらいの重りがついているくらいに重かった。 その重りを引きづりながら、教室の前まで来た。 「安城も席、お願いね」 先に入った担任がしきりを跨げない私に声をかけてくる。ざわざわする教室に入る一歩目はかなりの勇気を必要としていた。 左右から聞こえる耳障りな噂 私は援交なんて、そんなことしない。 そりゃまあ見た目は派手かもしれないけど、 そんなことする度胸は持ち合わせていない。 歯を食い縛りながら机の間を歩き、自席に向かう。 顔をあげると、前の席の宿海と目があった。 なんていうか 最悪なタイミングだよ。 いつも空席なそこに彼がいるのはちょっと不自然。 だけど、やっぱり嬉しい。 素直に表情に出して喜べないのは多分、宿海さえ不信そうに私を見ていたからだ。 宿海も信じるんだろうか。 私が援交したとかそういうの。 そういう人間に見られてるんだとしたら、ちょっと嫌だな。 「しくったね鳴子」と隣の席の春菜が話しかけてくる。その一言も耳障りで、いつもみたいな愛想笑いすらせず席に座った。 嫌な嫌なHRの時間が過ぎ授業が始まった。 それでもやはり噂についてのこそこそ話は続いている。少しましになったという程度だ。 つまらない日常に突然訪れたスクープ。 それを面白いと思わない人間はこのクラスにはいないのだ。 宿海にとってはよかったかもしれない、けど。 「やるなぁ、安城」」 「頼めばヤらしてくれるかも」 現国の先生の話を聞くひとなんていない。 だから余計会話が耳にはいってくる。 どこにも気持ちをぶつけられる場所がなくて、ノートに書きなぐった。 永遠に黙れ!! しね! 違うっての! 勝手なことぬかすなっ!! やるわけないじゃん! ヒソヒソ、コソコソ、ガヤガヤ 耳障りだ、ほんと耳障りっ。 頭の中でも言葉がリフレインする。 震えそうになる手を左手で押さえた。 それでもやってないことを噂されるのは悔しくて、ついに頬を涙が伝った。 ×
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