side:menma

仁太が学校へいってしまうと、芽衣子はすごく暇になってしまった。

お昼寝も畳でゴロゴロしていてもつまらない。

自然にため息がでる。

ちらりと顔を上げれば目に入ったのは、じんたんのおばさんの遺影。

ふとよみがえってきたのは昨日のぽっぽの言葉だ。

「なぁ願い事あるんだよな?俺のことも頼っちゃってくるよー!お前のこと成仏させてやりてーんだ!!」


「じんたんのお母さんは成仏ってしてますか?」

ちーん。
お線香もあげずに鐘を鳴らし、手を合わせてふと思った。

「成仏ってどんなだろう」


そんなことを考えていたら、玄関でチャイムがなった。

じんたんはいない。
あなるの時は勝手にあけようとしたらじんたんに止められたけど、こういうときはどうしたらいいだろう。

もう一度チャイムがなって、たまらず玄関まで走った。

でも……どうしたらいいんだろ?

ガラスの向こうに人影が見える。

開けちゃいけない、よね。

迷っていると恐る恐るドアが開いた。

『開けっ放し…?』

不用心だなぁと苦笑いが聞こえた。
聞きなれた声に動きを止めて、玄関をみる。

「ほたる!」

入ってきたのは、制服姿のほたるだった。

『お、お邪魔しまーす。仁太君は…………いないのかな』

人気がないことを察したのか、ほたるは玄関に座って、鞄から封筒を取り出した。

『懐かしいなぁ、じんたんち。じんたんは学校?だとしたらめんまちゃんは…』

「へっ?」

独り言をぶつぶつと呟いたほたるの言葉に、自分の名前が出てきたことに驚いて、彼を見た。

『……いるわけないか。じんたんときっと一緒、だよね』

ここにいるよ、といっても瑠衣には届かない。
それが芽衣子には悲しくて辛かった。

学校に行くことが普通で、行かなきゃいけないといったのも自分だ。なのに今だけは仁太に帰って来て瑠衣に言葉を伝えて欲しいと、そう思ってしまう。

玄関の端に封筒をおいたほたるは、用はすんだとばかりに立ち上がった。

『おじゃましました』

「またね、ほたる」

手をふって見送ってみるけど、当然相手が気づくはずもなく、パタリとドアはしまった。

『……あとでじんたんにメールしとかなきゃ』

という呟きと共に、足音が遠ざかっていく。
瞳に涙の膜がはった。


ほたる、お手紙のためだけに来たんだよね?
ちらりと視線の端に映る水色に視線をうつすと、そこには自分の名前が書かれていた。

「本間芽衣子さま……? じんたん宛じゃないんだ…?」

拾い上げ裏を返せば、保谷瑠衣よりという名前に、リボンのシールで封がされていた。

「読んじゃっても大丈夫だよね」

封のシールを捲ると、綺麗におられた便箋が入れられていた。一ミリもずれていない折り目は、几帳面な彼の性格を表しているようで、自然と笑みが浮かぶ。

三つ折りの便箋を開くと、これまた綺麗な文字が綴られていた。



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