翌日。
普段どおりに起床して、駅へと向かう。彼らと再会を果たしたからと言って、特に何の変化もなかった。

ただ集まっただけ。

なんだか寂しい気もするが、今の僕も含めた彼らとの関係は“仲間”ではなく、知り合いよくて友人なのだ。それもあの時ほど強い友情があるわけでもない。

瑠衣がとやかく言えることではないが、それでもやっぱり、彼らにはずっと親しい仲のままでいて欲しかったと思う。

…めんまちゃんも、そう望んでいたんじゃないかな。

視線を上げれば、雲一つない真っ青な空が広がっていた。鮮やかに晴れ渡っている空に、瑠衣は何だかやるせない気持ちになって、はぁと小さく息をはいた。
最寄り駅まで行く途中、信号待ちをしていると、駅とは反対方向へ行く制服の女子高生に目がとまった。
この近くには緑ヶ丘高校しかないけど、明らかにそこの制服ではない。赤ネクタイに、紺色のベストとスカート、あれは飯能駅が最寄りの王大付属高校のものだ。
肩にかかる髪まで目がいってようやく幼なじみであることに気づく。

こないだはすぐに気づけたのに…
一体どうしたんだ、僕。
ほんやりしすぎだろ
つるちゃんもわからないなんて。

そんな瑠衣には気づかずに知利子は道を曲がっていく。背筋を伸ばしているのが、後ろからでもわかる。そしてついに見えなくなってしまった。
ようやく信号が変わって、知利子を追うように後をつける。まだ少しなら大丈夫。彼女が曲がっていった道を見れば、少し先に彼女の姿があった。
駅と彼女とを見比べて、手元の腕時計へと視線を落とす。

『(つるちゃん、そろそろ駅行かないと学校遅刻だよ)』

そんな心の声が知利子に届くはずがもちろんない。もう一度、知利子を見た瑠衣は、

『(僕は遅刻できないから、またねつるちゃん)』

と仕方なしに駅へと向かって歩き出した。転校早々に欠席なんてできるはずない。ホントは気がかりで気がかりで仕方なかったけど、ついていく訳には行かない。
ポンと跳ね上がった好奇心を無理やりに押し込んで、瑠衣は渋々と駅へ向かった。


×