- ナノ -




第5章-2


どこまでも真っ青な空と広がって生い茂る原生林。
時折、鳥か獣か飛び立つような声と葉を揺らす音が木霊しているみたいだ。
左を見ても、右を見ても、行きつくのは森の壁…私たちがいるのは乾いた風が吹いている開けた荒野。

「何じゃこりゃァァァーッッ!?」

両手で頭を抱えて晴れている空へと大声で絶叫した新八くんに、深々と頷いてしまった。
本当に、何でこんな事になったんだろうかって…。
まだズキズキとしている頭の上には少し膨らんだタンコブが一つあって、それは怒っているム○ク状態の新八くんも、不機嫌絶頂な銀さんも神楽ちゃんも一緒だ。

「あんのクソジジィッ!何が『命張る覚悟はあるか?』だのマジ面しやがってッ、最終的には一寸法師じゃねェェか!使い回しじゃねェェか!!」
「でも、今回持たされたのは爪楊枝じゃなくて縫い針アル」
「やったァ〜、って喜ぶかァ!!何の進歩だ何の!!コレで何をしろってんだ!?靴でも縫えってか!?童話かッ!!」

腰から抜いた縫い針をキラン!と空に格好良く反射させたかと思ったら、地面に叩きつけてツッコミ一つ。
「上等だ!てめーの胃の中引き裂いて石詰めてコレで縫って江戸湾に沈めてやらァア!」とまで荒んでしまっているけど無理は無い。
カラクリ…サブローというらしいけれど…が私たちを叩いた大槌は、『打出の大槌Z504型・改』という源外さんの発明の一つらしくて。
叩いた対象を超凄い電磁波で超凄い力を加えて、何やかんやで超小さくできるのだそうだ…。
見事にミニ化してしまった私たちは源外さんへ抗議をするまでも無く、マッスィーンの中にポーン!と放り込まれたのだったのが数分前。目を覚ませばココどこ…な状態になっているという訳だ。どう見ても外にいる感覚と江戸では考えられない原生林…タイムスリップをしたような心地だった。

『そこはマッスィーンの中枢部分だ』
「!?、この声、源外さん!?どこにいるんですか!?」
「オイ、ジジイ!一体全体どうなってんだ!!」

何がどうなっているのか理解が追い付いていない私たちへ、響くように向けられた声は源外さんのもの。
周りを見渡してみたけれど姿は見えないから、本当に外から語りかけてくれているんだろう。
新八くんと銀さんも上へ叫んだけれど、返ってくると思った答えは無い。
代わりに不思議に思っている私の足元から声がした。

「言葉の通り、ココは記憶復旧マッスィーンの内部です」
「わ!?ビッ、ビックリし……!?…たまさん?」
「いいえ、今は別モードとなっているので正確には微妙に異なりますが」
「べ。別モードというか…その…猫耳と尻尾が…」
「たまさァァん!?何なんですか、その姿ァァ!」
「おお、猫たまアル」

「えぇえええ!?」と、心の叫びが一つになった気はするんだけれども。
とにかく、私の広げた掌の上に乗って来て答えるたまさんは、私たちより更に小さくなっている上に何故か猫耳と尻尾装備…!とっても可愛くて似合うのは良いんだけど、今の状況に更に混乱が加わって、何から口にして良いか分からない。一方のたまさんは、自分の変わり様は問題では無いようで、私の肩へと移ってから冷静に訂正をした。

「正確には、たまニャンですニャン」
「オイ、その手首のウォッチ見せびらかすみたいなキメ止めろ、プチッといかすぞオイ。つーか、ニャンってニャンだッニャンて!!」
「銀ちゃん、ニャンうつってるアル。それも全部、妖怪のせいになるネ!?げらげら〜っぽ〜?」
「誰も体操なんてしねェェよ!ちょっとォォ!たまさんまで悪ふざけですか!?」
「違いますよ、コレは妖怪時計の猫ではありません。この姿は列記としたオプション機能です。これ以上、外部から内部へ直接干渉はできません。ですから、本体としてご一緒できずとも皆様をサポートできるように源外様が施してくれたのです」
「という事は、たまさんは意識だけをココへ飛ばしている状態なんですか?」
「はい。私の本体は源外様と共に外で皆様を見守っています」

小さくなった私たちはマッスィーンの中にいるけれど、たまさんたちは一緒に行けないから代わりの姿で助けてくれるのだと。それは心強いと笑ったら、後ろから続けて新たな声がある。

「どうせ難しいシステムやらプログラミング構築やらを説明した所で、お前らのオツムじゃ意味ねェだろう。だから、マッシーンの内部も故障の原因も、分かりやすいよう具現化してやったんだよ」
「金さんまで!?って事は、この原生林や青空は…!外じゃなくてマッスィーンの!?」
「さっきから、そう言ってんだろう。全部てめーらの脳みそに合わせて、イメージ調整して反映した結果だ」

振り返った先にいる金さんは、たまさんとは違って私たちと背格好は変わらない。
その上で、何故カラクリの中にいるはずの私たちが外にいると思えるのかという疑問も解決してくれた。機械に疎い者でも順応しやすいイメージにしている、言わば仮想世界のような空間になっているらしい。
確かに分かりやすいけれども、と思いつつ、金さんを見たままツッコミあぐねている事を代わりに新八くんが指摘してくれた。

「なるほど…確かに僕らにとっては、その方が有難いですけど…ですけども、その恰好は何なんですか」
「グラサンつけて格好つけアルか」
「原生林でバカンス気取りか?」

ココへ現れた金さんの格好が、銀さんに似た対照的な色合いの着物ではなくなっていて。
簡単に言うと、スーツなのだ…サラリーマンが着るダークスーツ。
着こなしているのは流石だと思うけれど、額部分には同じ黒のサングラスを掛けている。
白けたような口調で文句を言う銀さんと神楽ちゃんに対して、金さんは怒る訳でも無く、逆に何を言っているんだという真面目さで返してきた。

「俺ァてめーらと違ってノープランな単純馬鹿じゃねェんだ、きっちり装備してくるに決まってんだろ。言ってるだろ、故障の原因を直すって」
「いや、直すのは分かりますよ…貴方とたまさ…たまニャンさんがサポートに来てくれているくらい。でも、だから何でスーツなんですか」
「縫い針だけは俺らと同じ?現実っていうモンスターとでも戦う戦士のつもりですかァ〜」
「正解です、銀時様」
「は?」

新八くんと違って、二人はそのままゲラゲラと笑い声を上げて金さんを馬鹿にしていたんだけれども。たまニャンさんが私の肩の上から答えたのに、動きを止めて呆けてしまう。銀さんと神楽ちゃんの視線が集中していて、金さんが自身の額に掛けているサングラスに触れた。

「源外様が分かりやすいように仮想プログラミングして下さったココで、貴方たちにやって頂くクエストです」
「そう言えば、最初にそんな事言っ…待て、クエスト?クエストってアレか?」
「はい、アレです。マッスィーンを故障に至らしめている原因を特定し、既に対象を具現化まで済んでいます。後はソレを狩るだけ」
「……」
「狩る、ですか?」
「はい。具現化したモンスターをハントするのが、ハンターである貴方たちの受けたクエストです」
「つまり、モンスターハン、」
「あああーーッッハイハイ!!ハンターな!ハンター!なるほどぉっ分かりやっすーい…ってなるかボケェェエ!!ドラ○エごっこの次はモン○ンごっこしろってか!?どこまでゲーム脳だよ!つーか、コレ俺たちに合わせてんじゃないよねッ!?完全にお前らの趣味だよねッ!?」
「私は、たまニャンでは無く、たまルーの方が良いと提案したのですが、大人の事情でソレは止めた方がと助言を受けまして」
「猫耳尻尾そのためだけェェ!?」
「?、分かりやすいと思うんだけど、何か駄目なのかな?そのモンスターハン、」
「ストォーープ!!ストップです!その先は駄目ェェー!」

よく分からないけれど、銀さんと新八くんの必死さから触れちゃいけない事らしい。
一気に叫んで息を荒げている二人を、金さんが鼻で笑ってからサングラスを掛けた。

「ようやく理解したか。俺たちがハンターなんだって事をよ」
「いやッ!アンタのソレ違うハンターァァ!そんな馬鹿を見る目向けてきてる癖に、アンタも思いっきり馬鹿してるよ!」
「オイオイ、俺を誰だと思ってる?狙った獲物は逃がさねェ百発百中のハンターだぜ。どんな逃走もお手の物だ」
「そっちの逃走じゃねェェっつってんでんしょォォ!モンスター相手に闘争すんだよッ闘争!!」

新八くんが金さんの何に対して怒っているのかは分からないんだけど、金さんへのツッコミが止まらないのは分かった…。
スーツの格好でモンスターに挑むのは、確かに良い装備とは言えないしなぁと考えながら同意してしまう。
そしたら服を引っ張られている感覚があって、振り向いたら、神楽ちゃんが私を見ている。

「どうしたの?神楽ちゃん」
「アレ、何アルか?」
「アレ…?……え、えぇっ!?」

上を指差して聞いて来る神楽ちゃんの顔は、純粋な子供にも見える。
でも、今はその可愛さに綻んでいる場合じゃないのだと…私も言われた先を見上げて顔を引きつらせてしまった。そう言えば…さっきから晴れていたはずの空が、急に陰ったように感じてはいたんだけど…!
それが、まさか…っ!って身体が細かく震えながら、唖然と見上げているしかできない。
私たちの様子の変化に、言い合いをしていた銀さんたちも「?、!?」と、蒼白になったのが分かる。誰だって固まるしかないと思う…だって、私たちを見下ろしてヨダレを垂らしている巨大な…巨大な…!

「ドラゴンンンーーッッ!?」
「めちゃくちゃ鋭い牙生えてんだけどォォ!?まさか、アレがそのモンスターとか言わねェよな、」
「あのドラゴンです。ちなみに、火も吐きます」
「ギャアアアア!!マジで火炎放射ァアア!」

大絶叫に向かってくるのは、本当に吐き出された業火の息吹!
これでもか!と思うくらい反転して猛ダッシュで横へ何とか回避したんだけども…!
こちらを完全に敵と認識したドラゴンの咆哮が、空間を地震のように揺らせて耳が痛くてビリビリする!私だけでなく皆が両耳を押さえて動けない中、また影が上を覆った時には、既に鋭利な牙が並ぶ大きな口が間近に迫っていた。
避けきれない。
脳がドラゴンと自分の距離を、そのスピードを把握して瞬間的に判断を下して手が伸びる。
捕食される恐怖よりも、地を踏む足は逃げでなく踏ん張るように力強く踏み直して、腰を低くして携える縫い針に添える利き手。

「…!」

私を呼ぶ新八くんや神楽ちゃん、息を飲んだ金さんやたまさん…こちらへ駆けて来ようする銀さんすらスローモーションに感じる刹那で。
落した腰の態勢のまま、ドラゴンの大口と零距離になる直前に身を逸らして斜めに落ちる。
私を見失ったドラゴンの大口が閉じる時に服や腕スレスレを斬り裂かれたけれども、ドラゴンの顎横に沿いながら斜めに崩れる身のままに縫い針を引き抜いた。
見えないけれど見える一閃…刃の斬る道。
こちらへ向いた左の眼球が斜めが割れて、「ギャオオオ!」とドラゴンが叫びを上げて大暴れした。バランスを崩して倒れ落ちる形で地に伏せたから、身を振り乱して暴れるドラゴンの首がっ!
理解する前に身へ激しい激痛と共に視界が回転して、呼吸ができなくなるほどの咳き込んだ。
吹っ飛ばされたんだ…ッ、多分…ッ、転がり続ける中で、そう思った時に身が止まる。
吸い込み切れない呼吸のまま、開いた口が情けない音を立てたのに、身体が浮いた。

「ッ…さ…!」
「無茶しやがって、馬鹿が!そのままジッとしてろッ、しゃべんじゃねェ!」
(銀さ、ん…)

私を横抱きにして、暴れるドラゴンの鉤爪を避けてくれたのは銀さんだ。
しっかりと抱えて浮いた感覚が、地を蹴って回避したのだと頭が理解する。
あまりの痛みと霞んでいる視界で閉じてしまいたくなる瞳への衝動に、銀さんの着流しを掴む強さで自分に鞭を打った。駄目だッ、開け目!と。グッと喰いしばるように、私が瞳を開いた瞬間だった。
大暴れしていたドラゴンが更に高い悲鳴を上げて、身体から真っ赤な血飛沫を上げたのだ。
「!?」と、周りで応戦していたらしい金さんたちが驚いているから、彼らが与えたダメージじゃない…ッ。何が起こって…?、混乱して、また襲ってくる激しい痛みに細めた瞳が、辛うじてドラゴンの上から跳躍した影を映した。

「間一髪だったな」
「!!、お前は…!!」

ああ、駄目だ…瞳が重くて力が抜けていく…。
閉じて狭く暗くなっていく視界が、近づいて来る存在と声を辛うじて捉えられる。
白いマントをはためかせながら…白い衣服を纏っている…。
銀さんの肩上にいるらしいたまニャンさんが、私へ言葉を向けてくれた。

「大丈夫です、今は一度お休み下さい」

その声が優しかったから、最後の抵抗を止めて意識が途切れた。



白だ。どこまで広がって、何も無い果てない白。
いくら見渡しても歩き続けても何も無く、辿り着けないと自分でも分かっている。
何故だろう…と、思って首を傾げたつもりになって分かった。
あぁ、そうだ、分かる…だって、これは夢だからだもの、と。
白しか無いのは、私の記憶の中だからだろう。
ナナシとして生きている私じゃない…その前の、私が探しているものの中の。
掌を開いて視線を落としたつもりになったけれど、私が見ている視界には何も映らない。
ジジッ!と、ノイズが走る感覚が身を揺らがせた気がした。

―…なって……ッ、

泣いている女の子がいる…泣き続けて止まらない女の子が。
その子に対して必死になって、何かを言ってくれている男の子がいる。
その男の子が女の子を抱き締めて言葉を紡いだ。

―こ……は俺が……と…で……やる!

誰だか分からないし、何と言っているのか、相変わらず酷いノイズで聞き取れない。
けれど、それが男の子で、泣いている女の子へ向けられている約束なんだと思った。

―…前を…たり…ざしねー…ッ、だか…くな!

(…くな…、泣……、泣くな…だ)

最後の言葉だけが何故か、自分の中で何かを探るように落ちて、沈んで音になった。
泣くなって、そう言ってくれたのだ、彼は。
彼?…誰なんだろう…とまで意識を落として、顔が歪んだ。
忘れちゃいけない約束を交わしたはずなのに。
ずっと彼と一緒にいると…彼が許しくれる限り、彼が望む限り、私がいられる限り、ずっと傍にいると…。
あぁ…と歪んだ顔を覆う手が無い事と、自分の中に湧いてくる感情が溢れて止まらなかった。
約束だ…忘れちゃいけない…私がどんなになっても決して忘れちゃいけない、破っちゃいけない約束。
絶対に思い出さなければいけないもの。
顔を上げたつもりになった時、また何かが変わるように白い世界を揺らしたノイズが増した。画像が切り換わるように…何も無いのに、確かに何かあるのだと分かっている自分がいる。
いや、何があろうと目を向け続けられる自分がいるつもりだった。
不安定で真っ白で、色を見つけられない、私の世界…でも、私が強く望めば探せる気がした。

―……様、……様
(たまさん?)

掠れた音から辛うじて拾える敬称と声色から、反射的に聞き返す。
この声は確かにたまさんだ、すると声が沈黙したかと思うと、静かに音を返してきた。
頷いているんだと分かった。

―…ようやく、見つけました。ようやく、貴女へ辿り着く事ができました
(?、どういう事ですか?これは私の夢とはいえ、私たちは、さっきまで一緒に記憶復旧マッスィーンのためにドラゴンの狩りをしていて…あ、眠っている私の意識にデータか何か送ってくれているんですか?)
―…!…、記憶…まさか…そのような事に
(?)

息を飲んで驚いたのだと伝わって不思議に思う…何かがおかしい、会話が噛み合っていないような感覚。たまさんであるはずなのに、私が先ほどまで一緒にいたたまさんではないような、そんな変な意識が湧いてくるのだ。どういう事なんだろう?と、自分でも沈黙してしまっている間に、見えないたまさんの声が冷静に答えてくれた。

―では、今の貴女は記憶を失って、自分の事も、どうしてそうなってしまったのかも、今どういう状況に置かれているのかも、何もかも理解できないでいるという事で間違いありませんね
(…はい。あの、貴女はたまさんですよね。私の知っている…たまさん、ですよね?)

短い沈黙があった…短いけれども、長く感じられるくらいの意味がある沈黙。
止まらない違和感と不思議さが鮮明になるのに対して、強まるのは混乱ではなく覚悟だった。

(教えて下さい。貴女は誰で、私は誰なのか。何があってこうなってしまったのか、今、何をすべきなのか)
―…とても信じられないような出来事ですが、私を信じて聞いてくれますか
(貴女は、たまさんなんですよね?)
―はい、たまであるのは違いありません。けれど…
(なら、十分ですよ。他にいりません。貴女がたまさんであるなら、信じられる)
―!!

どこへかは分からないけれど、強く微笑みを向けたつもりではっきりと答える。
これだけは迷い無いと伝えるために。
彼女がたまさんなら、銀さんと共にいた仲間であるなら…それで十分だ。
フッと笑った気配があって、返されたのは今までで一番優しい穏やかさがあった。
けれど。

―…貴女は、ど…状態で…、どこ…いら…しっても……様なの…すね
(!?)

ジジッ!と、また走ったノイズで世界が揺れる。
白い世界が終わる…そんな気が、この世界から抜け出して現実へ戻るリミットが迫っていると思わせた。多分、残された時間は少なくて、私は間も無く目が覚めるんだ。

(たまさん!)

途切れ途切れになった声の先へ精一杯叫ぶ。
時間が無い、その切迫は既に伝わっていたんだろう。
擦れてしまっているけど、先ほどよりは聞こえやすい声が早口で私に答えを教えてくれた。

―私は今の貴女が知っている、貴女と存在している『たま』ではありません。貴女のいる場所とは別の軸に存在している、もう一人の『たま』です…!
(!?、それは…ッ)
―貴女は、その世界にいてはいけない存在。本来、そこにいるはずが無い存在。つまり―――

紡がれ続ける真実を、ただしっかりと耳に入れて意識に刻むしかできない。
理解するには、あまりに荒唐無稽で…それでも、どこか納得がいく事ばかりで、全ての謎が繋がるもの。
「そうだったんだ…」と最後の台詞を聞いて呟けたのは、苦い笑いだった。

―その歪みの影響で、今の貴女は記憶を失っている状態なのでしょう。それも心配ありません、こちらでようやく貴女の存在する軸の周波数を特定する事ができました。そちらの軸とこちらの軸に生じた歪みは徐々に修復に向かっており、源外様が特定した周波数から貴女の存在を再び安定させる作業を進めています。こちらの作業が進んで行けば、歪みの修復と共に貴女の記憶も自然に戻っていくでしょう
(分かった…その予定が――なんですね)
―はい。ですが、一つだけ…コレだけは絶対にしてはいけない事がありますので注意して下さい

絶対に破ってはいけない禁忌だから、と紡いだ声が最後の言葉になる。

(!)

と、教えられた警告を理解した時、目を見開いた世界が変わった。

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