私、如月琴子は同じクラスの高尾君にどうやら興味があるようです。
高尾君とは、頭が良くて、運動神経抜群で、人懐こいムードメーカーな凄くハイスペック男の子のこと。なんか、もう、少女漫画の王子系に居そうな感じ。うん、間違いない。
で、そんな高尾君が何故気になるのかと言うと…
「今日もだー」
彼の頭の上。
一昨日は確かパッチンピン、昨日はカチューシャ……今日は髪ゴム。
髪の毛邪魔なのかなとか何で可愛いやつばっかなんだろうとか気になることは沢山。
取り敢えず髪留めをしてきた日は、1日1回は絶対緑間君に自慢している。ほら、今も…
「真ちゃん!ほらこれ!最近毎日つけてくれんの!いいっしょー?」
「…良かったな」
嬉しそうに笑いながら話す高尾君は凄く幸せですって感じ。
緑間君が呆れるくらい仲良しな関係…学校に来る前に毎朝会ってる…彼女さんかな?
……あれ、私気になる人にいきなり玉砕?当たる前に砕けちゃった?高尾君人気だもんね、そういう人が居ない方が可笑しいか。というか私は高尾君が好きなの?
そこまで考えて、やめた。
あつい。
ぱたぱたと手で何故か急激に熱くなった顔を冷ます。
ちらりとまた高尾君の方を見ればまだ髪留め自慢をしている高尾君。本当に彼女さんのこと好きなんだなあ。
あ、でも私は、今日の髪ゴムも可愛いけど昨日のカチューシャは凄く好きだったな。
「ん?俺に何か用事?」
「ぴっ、あ、え?いや、何も?」
頬杖をつきながらぼーっとそんな事を考えていたら緑間君と話してた高尾君が急にくるりと此方を向いたもんだから思わず肩を跳ねさせた。
…なんでわかったんだろ
そう、髪留めも気になるけど、高尾君は凄くよく気がつく。
今だって死角なのにいきなりこっち向くし、この間は人が多い昼休みの教室で回収したノートぶちまけちゃったのを拾うの手伝ってくれたし…
そうそう、高尾君は照れ隠しの時に前髪をちょいちょいって触るのが癖みたいで、その時お礼言ったらその仕草してたのはほっこりしたなあ。
いつも気が利いて余裕のある高尾君でも照れたりするんだって思った。
ん?あれ、よく考えてたら私凄く高尾のこと見てる?
「如月さん、なーにしてんの」
「いひゃああああ、あ?高尾君?」
手を顎に当てて考えていたらぽんっと肩に軽い衝撃。
びっくりして思わず叫ぶ、けど、かけられた声を冷静に思い返してバッと後ろを向けば少しびっくりした顔の高尾君。
あ、高尾君の驚く顔新鮮……いやじゃなくて、私がびっくりなんだけど!
「ごめんびっくりさせちゃった?肩すっげぇビクッてなってた」
「ああ、うん、大丈夫。いつものことだから、高尾君は?何か用事?」
さっきと逆だって少し笑いながら首を傾げれば、うーんと少し考える仕草をする高尾君。何か用があったわけじゃないのかな?
「や、如月さんが百面相してたから、つい?あと、もう皆帰っちゃったのに帰らないのかなーって」
「え、百面相?してた?って、あ、ほんとだ、誰も居ない…!」
高尾君に言われて色々初めて気が付いた。うわ、結構人が残ってたはずなのに…私どんだけ高尾君のこと考えてたの。
そう思ったらまた顔に熱が集まって誤魔化すように顔にかかる髪を耳にかけてぱたぱたと手で扇ぐ。あついねー、なんて。今が初夏で良かった。
「あ、えーと、高尾君は?帰らないの?」
自分より高い位置にある見上げ、そう言えば皆帰ったのに何で高尾君は居るんだろうかと思った。
いつも一緒に居る緑間君とかももう居ない。
「あー…や、如月さんが気になって」
「え、高尾君て面倒見いいんだねぇ」
「は?」
「え?」
だって一人で居る私を気にかけてくれたんでしょう?
目を丸くする高尾君にそう言えばそっちでとったかぁと脱力した声を出しながらずるずると座り込む高尾君。
え、え、なに、違うの。
「…如月さんがそんなに百面相して何を考えてるのか気になったの」
「うん…好奇心が旺盛なんだね?」
「ぶっ、いや、違くって」
何が。私だって高尾君の頭の上にちょこんと乗るころころした丸い玉2つの髪ゴムが似合いすぎて気になりますよ。高尾君が動くたび縛られた髪の毛がぴょこぴょこ跳ねるのがこれまた可愛い。
「俺、如月さんのこと気になってるんだけど」
「私も高尾君のことは気になってますけど」
「え、」
「よく気がついて助けてくれるの何でだろうとか、可愛い髪留めとか、すごく気になる」
「…じゃ、歩きながら教えるから帰ろーぜ」
気になるあの子の髪留め事情
(髪留めは大切な人から?)
(え?うん、可愛い可愛い妹ちゃんから)
(へぇー、…え?妹?)
(おー、似合う?)
(すごく。色々よく気がつくのは?)
(あー、俺視野広いんだよね。だからじゃね?)
(なるほど…羨ましいなー)
((いつも見てるから、なんてまだ言えねえわ…))
((彼女じゃなかったんだ))
…………………………
高尾君?しりませんねそんなハイスペック彼氏