甘い香りのする綺麗に掃除されたミツキの部屋。 まだ少し冷えたベッドに横になるミツキの隣で上体を起こしながら外を見るニカ。 木々の間から血を零したような真っ赤な月がこちらを見据えていた。 ミツキはこちらを見ないニカの袖を引いて訊ねた。 「ニカ、お布団かかってる?寒くない?」 「あ、あぁ。ミツキこそ・・、」 「私は平気よ、暖かい。」 隣に貴方が居るから。 一緒に眠るなんて、一度も許されなかった事だわ。 今・・とても幸せよ・・。 「なあ・・ミツ「今日はこうして眠りましょう?」 言葉を遮りニカの首に腕を回して抱き締める形になる。 「いいでしょう・・?」 何も、言わないで。 もう離れたく無いの。 ただこうして居られれば良いのよ・・温もりを感じたいの・・。 お願い、ニカ。 私を受け入れて・・。 ギュッと閉じた私の瞼。 ニカはそれをそっとなぞる。 「・・わかった・・・・。」 「!、本当に!?」 やったあ、と言って強く抱き締めた。 華奢な身体から微かに伝わる温もりが私を安心させてくれる。 閉ざされた扉を開いたみたいで、私は嬉しかった。 ---------- 聞こえて来る呻き声に感じない温もり。 「!、ニカ・・っ」 勢い良く身体を起こす。 最初に目に飛び込んで来たのはベッドの隅で身体を丸めるニカの姿だった。 額には汗が滲んでいて、まるで覚めない悪夢でも見ているかのようで。 「起きて!起きてニカ!」 どうしちゃったの・・!? どうしちゃったのよう・・っ 涙を堪えてニカの身体を揺する。 「い、や・・よ・・っ・・!」 こんなニカ見たことが無い・・どうしたら良いの・・! コムイさんの所? それか医務室? でも、そうしたらヒトに頼る事になる・・ニカを引き渡す事になってしまうのよ・・! そんなの・・、 でも、でも・・! 刹那、涙が溢れるのと同時にニカの目が大きく開かれた。 「ニカ・・っ」 でも、安心して抱き締めようとした腕は簡単に払われてしまう。 バシッ! 「・・ニカ・・・・・・?」 「触る・・なっ違、う!まだ、まだ何も起こって・・無、いんだ・・!」 シャツと一緒に胸を掴んで小刻みに震えるニカ。 私はただ払われた手をもう片方の手で握って、驚愕のあまりただニカを見据えるだけ。 『触るな』 その言葉が響く。 ど、うして・・? 貴方は、私を、拒絶する、の? どうしちゃったのよ・・・・ 「ニカ、ニカ・・っ」 お願い、目を覚まして・・! ---------- ニカが帰って来ない。 いつもならこの時間にはとっくに部屋に帰って来ているはずなのだが、まだあの女の所にでも居るのだろうか?つーかベッドに入ってからどんだけの時間が経ってんだ、眠れやしねぇ! 「チ・・ッ」 らしく無ぇ・・よな。 何時もニカが眠るベッドの隅にチラリと視線を移す。 まるで主の帰りを待っているかのようにそこで眠るセツ。 人の気も知らねぇでスヤスヤ寝やがって・・ったく、コイツらには振り回されっぱなしだ、調子が狂うな。 ゴロ、と寝返りを打ち、天井を眺める。 『ニカの事が好きなん?』 煩ぇ。 厄介な女だが、惚れちまったんだ。 馬鹿野郎。 「!、キャンキャン!!」 その時、突然セツが目を覚ました。 かと思えば吠えながらベッドの上に立ち上がり俺の服に噛みつく。 「どうした?」 俺はセツに引かれてベッドから下ろされた。 ×
|