■ 拍手お礼 ミニ小説
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前回のお話はこちらです。 "
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log4"(続いております)
セシルがゴルベーザにスコールの状況を話し、アルティミシアの力を借りる事ができないかと話したところ、向こうは条件付きでならスコールを見てもいいとの返事がきた。
まず一つはゴルベーザとアルティミシア二人と対面するに際し、こちらの戦士も幼いスコールを除いた二人までとする事。
場所の指定は双方奇襲ができないよう今回中立の立場をとっているゴルベーザが指定する事。
最後にお互い二人の戦士以外に別の戦士がその場に存在している事が発覚した場合、協力は中止させてもらうとの事であった。
「向こうにしては随分条件が優しいな?」
「カオスの戦士は結束力がほぼ無いからね。兄さんもアルティミシアを探して話をつけるのに少し手間取ったくらいだから全員他の仲間がいる場所をきちんと把握していないのではないかな?多勢に無勢を避ける為だとは思うよ」
セシルの説明にバッツは顎をさすりながら感想を述べるとセシルは苦笑を返してくる。
確かに仲間達を集めての奇襲を仕掛けるのならこちらの方が分がありそうである。元からそんなつもりは一切無いが。
「けどよくアルティミシアに話をつける事ができたっスねー」
「それについては兄さんからジェクトの協力があったからつける事ができたって聞いたよ。たまたま話を盗み聞きしていたらしくってね。宿敵が非力な状態で勝っても嬉しく無いし、大人気ないだろうって。そんなことをする奴はプライドのないちっぽけな奴と自分で言っているようなものだって言ったらしいよ」
話の中に嫌っている父親の名前が出てきたことでティーダが複雑そうな表情で押し黙る。スコールのことで話が進んだのは嬉しいがそれに一役買ったのはジェクトである事が面白くないらしい。わかりやすい反応に何人かの仲間達がそれを見て苦笑した。
「ジェクトか……この状態のスコールに会ったから気にかけてくれたのかな?」
「ボールのおじちゃん?」
バッツのつぶやきにそばに居たスコールが反応し、見上げてくる。バッツはスコールに「そうだよ」と肯き、抱き上げる。予想ではあるが、スコールの状態を他のカオスのメンバーに黙っていてくれただけでなく、陣営内でも動いてくれていたのだと思うとありがたかった。
「というわけで数日後、スコールを連れて兄さんとアルティミシアのところへ向かうことになったわけだけど、こちらからメンバーを二人選ばないといけないことになったんだ」
話をしつつセシルはリーダー格である光の戦士へと視線を向ける。隊の長として意見を聞きたいようであることは明白であった。光の戦士は一つ瞬きをするとセシルとバッツへと軽く視線を投げて考えを述べた。
「この話を進めたセシルと普段からスコールと共にいることが多いバッツが適任であると私は思う」
光の戦士の発言に他の仲間達から反対意見が出ることはなかった。
「まぁ妥当だろ。ゴルベーザと縁が深いセシルとスコールが一番懐いてるバッツが適任だよな」
「うん。私も二人がいいと思う」
ジタンとティナが呟くと他の仲間達もそれぞれ肯いて同意の意を表した。
「三人で行かせるのは少し心配だけど、ゴルベーザなら卑怯なことはまずしないから大丈夫だよね?」
「だがそれでも心配であることは変わりはない。念のため連絡手段の確保と退路の確認くらいはしておけ」
オニオンナイトの心配を汲んだ上でクラウドはセシルに注意をする。それに対してセシルはあらかじめ隊との連絡手段にひそひ草の準備と使い方の説明を皆に行うこと、待ち合わせ場所はゴルベーザと共に選定することを告げた。
「一応こちらの拠点の場所が悟られづらい場所にする予定だし、兄さん達カオスのメンバーは僕達のように全員一箇所に固まっているわけではないからね。もし何かあったとしてもひそひ草で連絡を取って合流するまでの時間を稼ぐくらいはできるとは思うよ。当日の場所も兄さんがアルティミシアを連れてくる形を取るみたいだから彼女が事前に罠を仕掛けるのも難しい筈だよ」
セシルの話に仲間達はほっとしたのか空気を緩めた。一人話がわかっていないスコールはキョトンとした表情で仲間達を見回していた。それを察したティナがスコールに手を伸ばし、大丈夫だとばかりに手をつないだ。
「ではこの件は以上だな。何かあったらすぐ我々にも報告するようにしてくれ」
「わかった」
「おう」
光の戦士はセシルとバッツに告げると解散となった。仲間達がばらける中、バッツはセシルの方へと駆け寄る。
「セシルありがとうな」
「いや、僕はただ兄さんと話をしただけだし実際アルティミシアと約束を取り付けたのは兄さんとジェクトだからね。敵方ではあるけど感謝はその二人に」
「そんなことないぞ?確かにその二人にも感謝はしてるけどゴルベーザと話をしてくれたのはセシルだし、兄弟という縁を互いに大事にしていなければスムーズに話が進まなかったかもしれないしな」
「……ありがとう、バッツ」
兄との関係に触れられたことが嬉しいのか柔らかい笑みを浮かべて礼を受け取る。傍でそのやりとりを眺めていたフリオニールは瞳に優しげな光を宿していたが反対にティーダは複雑な表情であった。
「しっかし話が進んだのはいいけど親父がちょっと絡んでいるのは複雑ッス」
父親に対して胸にしこりがあり、若さ故に感情を上手くコントロールできない部分を持っているティーダらしい発言であった。良くも悪くも素直な態度をとる姿が父親にそっくりであることを三人は苦笑を浮かべながら思ったのであった。
***
数日後、バッツはセシルとスコールの三人でゴルベーザとアルティミシアとの約束の場所へと向かった。
ティナからはスコールが寒がらないように着せてあげてとモーグリのワッペンがついた柔らかい素材の上着を渡され、それに続いてフリオニールからは少しでもスコールの気持ちがほぐれるように道中食べてさせてやってくれと軽食と焼き菓子を渡された。
仲間達に見送られ、スコールはどこか不安そうに手を振っている。それを少しでも解消できるようにとバッツはスコールへと手を差し出した。
「今日は手を繋いで歩こうか?」
バッツの提案にスコールはすぐさま「うん」と勢いよく頷き返してきた。そっとスコールの手を取り、繋ぐと少し汗ばんでいるようで肌の柔らかさとともにしっとりとした感触が伝わってくる。幼子であるが故の体温の高さからくるものなのかそれとも緊張からなのかはわからない。
手を繋ぎながら待ち合わせ場所へと通じる断片を移動して行く。
「複数の断片を移動して疲れるかもしれないけど辛抱してくれ。これも拠点を悟られないようにする為なんだ」
セシルの詫びにバッツは少しでも空気が軽くなるようにと「大丈夫だ」と明るく胸を叩いた。
「おれはもちろん大丈夫だしスコールもしっかり歩いてるよ。もし疲れてもおれがおぶさるから」
バッツはそう言いながら手をつないでいるスコールへと視線を向けるとスコールはふるふると首を横に降った。
「だいじょうぶ。あるく」
「頼もしいな。けど無理は禁物だぞ?」
そう言いキュッと口を結ぶスコールにバッツは笑いながら頭をクシャクシャと撫でる。するとようやく表情がほんの少し崩れ、くすぐったそうな顔をしてきた。
先日の話の時と言い、今朝の出発の時と言い、スコールはどこか落ち着かない様子をしていたのは事情を理解できないながらも大人達の雰囲気からただ事ではないことを察していているのかもしれない。子供は大人に比べて身体能力が劣り、弱い存在である分大人以上に空気に敏感である時がある。特に人見知りのきらいがあるスコールはそのあたりが強いように思える。初めて会う上に見た目と雰囲気が大人でも緊張してしまうゴルベーザとアルティミシアを前にした時どのように思うか想像するとーーバッツは自身かセシルの後ろに隠れるスコールの姿を想像してしまう。
(間違いなく怯えるだろうなぁ。けど、そのためのおれたちだ)
安心感を与えるかのようにバッツはスコールの手を握っていた力をほんの少し強める。
手を強く握られたスコールがバッツを見上げ、小首を傾げたがすぐさま視線を前へと戻す。少し前を歩いているセシルが次の断片の前に立っているからだろう。興味の移り変わりの早さが子供らしい。
「この断片を入れて、二つの断片を移動したら目的の場所だよ。その前に少し休憩しようか?水分補給もしておこう」
対面の前に少しでも気分を持ち上げようと気をつかったのだろう。セシルは柔らかい表情で残りの道を伝え、休憩を提案する。休憩と聞きスコールはバッツを見上げてきた。フリオニールが持たせてくれた軽食や菓子類を楽しみにしていたのだろう。そんなところが子供らしい。
バッツが頷くとスコールはいそいそと背負っていたリュックを下ろして中を探ろうとしている。緊張が少しはほぐれたようであったようでよかった。
バッツはスコールのすぐそばに座り、自分の荷物から水筒を取り出すと口をつける。ただの水ではあるが渇きを感じ始めていた喉を潤し、体の中へと落ち込んでいく感覚にほっと息を吐いた。普段水を飲む時よりも強く感じるその感覚に自分もまたスコールと同様に緊張していたのだと苦笑する。
二の腕のあたりを触れてくる感触にバッツが目を向けると、スコールと目が合う。どうやら菓子のおすそ分けをしようと触れてきたらしく、小さな手でクッキーをバッツに差し出してきた。
「ん?くれるのか?」
コクリと頷くスコールにバッツは笑みと共に「ありがとうな」と礼を言う。それを見たスコールも笑顔を見せ、今度はセシルの方へと駆けて行った。手にはもう一枚クッキーが握られており、どうやらセシルにもお裾分けをするらしい。
「……気をつかわれちまったかな?」
甘いものが好きな子供は多い。おやつに出した菓子類は食べきる上に以前夜に出したホットミルクを飲まないのなら飲んでやろうと冗談で取ろうとしたら抵抗してきたくらいであったので例外ではないのは間違いない。
(おれ達を元気付けようとしてくれているのだろうな。スコールを不安にさせないとか思っておいて、心配させてるようじゃダメだろ)
バッツは手渡されたクッキーを口に放り込む。噛むとサクサクとした食感とともに優しい甘みが広がっていく。気持ちがほぐれるようにと渡されたそれは自分達にも必要なものだったのかもしれないとバッツは思いながら飲み込んだ。
***
続きます。中途半端な上に更新が遅くなってしまい申し訳ございません。
(このシリーズのバッツさんは幼子スコールのことになると余裕が少々落ちてしまうのは何故でしょう;;)
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