03

ある日厄介な事に。

「そっかー!善逸くんもかー!やっぱりそう思うよね!?」
「はい!いつ死ぬか分からないんで俺もさっさと結婚したいです!」

我妻善逸と万城冴木が、出会ってしまった。

「善逸!冴木さんも!ここは病室なんだからあんまり大きな声出しちゃ駄目だよ!」
「なんだよ炭治郎、他に誰も居ないんだから良いじゃないか」
「善逸くん!炭冶郎くんの言う通りだよ、もう少し小さな声で盛り上がろう」

任務中に怪我を負った善逸が炭治郎に付き添われ蝶屋敷にやって来た。そこで二人が出会ったのは先輩隊士の冴木だ。善逸も炭治郎も冴木とは初対面であったが年上で階級も上なのに冴木は気さくに話しかけてくれて、善逸と冴木が結婚したいと言う話題で意気投合してしまい安静にしなければならない治療の場が一気にガヤガヤと賑やかになってしまった。

「あらあら何事ですか?ここは治療を行う場…なのにそんなに大声を出して…」
「しのぶさんっ…!」
「聞いてしのぶさん!善逸くんもね、私と一緒で結婚願望があるの!」
「まぁそうなんですか?」

その声を聞きつけてニコニコとした笑顔でやって来たのは蟲柱の胡蝶しのぶ。穏やかに微笑んではいるが匂いでしのぶの本当の感情が分かる炭治郎はビクリと身構えた。それは音で分かる善逸も同じだった。だが冴木は気付いていないのかピリピリとしたしのぶにも臆する事なく騒がしく話しかける。

「それはそうと冴木さん、治療の続きをしましょう」
「えっ…いや、怪我したところはもう治って…」
「完治はまだです。さぁ冴木さん用に調合した塗り薬です、腕を出してください」
「しのぶさんの薬は凄く沁みるし凄く苦いから苦手なんだよなぁ」
「まぁそんな子供みたいな事言って。痕が残ったらどうするんです?冨岡さんに見られたくないんでしょう?」

冴木はまるで幼子のようにごねてしのぶはまるで姉のようになだめているが、しのぶが冨岡の名前を出した途端冴木の匂いがフワンと変わるのを炭治郎は感じた。

「…しのぶさん、お薬塗ってください」
「冴木さんは聞き分けの良い、良い子ですね」

冴木が自ら袖を捲くり腕を差し出したのを見てしのぶは満足そうにニッコリと笑った。そしてその優しい笑顔とは裏腹に効き目は良いが恐ろしく沁みる特性の薬を遠慮なく冴木の腕に塗りたくり冴木は叫びたくなるのを我慢するように顔が苦々しく歪んだ。

「ぐぅぅぅぅ〜…!し、沁みるぅ〜…!し、しのぶさん、これ勿論ちゃんと効くんだよね?」
「勿論です。傷跡一つ残りませんよ」
「そ、そうか。ならこれは冨岡さんのため…我慢…我慢」

先程までワイワイとはしゃいでいた冴木がこんなにも大人しくなって、その薬は一体どれほど沁みるのだろうと善逸はゾッとする。そして炭治郎は先程出た冨岡の名が気になって冴木に話しかける間を計っている。

「あの、冴木さん」
「ん〜?なあに炭治郎くん」
「冴木さんは冨岡さんと何かご関係があるのですか?!」

炭治郎はいつも真っ直ぐだ。善逸なら気になる事があれば、例えばそれが男女の事ならば少し遠まわしに聞いていただろう、だが炭治郎はあまりにも真っ直ぐで、善逸はギョッとし冴木もハッと顔を赤くさせた。

「何聞いてんだよ!無粋にも程があるだろッ!!!」
「えっ、だって冨岡さんって言ってたから…」
「やだ、炭治郎くん!そんなの急に聞かれたら照れるじゃない!」

一瞬静かになった病室が炭治郎の質問により再び騒がしくなってしのぶは笑顔のままハァとため息をついた。

「冴木さんはずっと冨岡さんにお熱なんですよね?」
「しのぶさん!そ、そんなはっきり言わないでよ!」
「えっ!じゃあ冴木さんは冨岡さんの事が好きなんですか!?」
「炭治郎くんもー!」

冨岡の話題で盛り上がる冴木を静かにさせるのは無理だ、としのぶは判断したのだろう。冨岡のどこが好きなのかと炭治郎に聞かれ冴木は冨岡への想いを熱く語っているからしのぶは次に持ってくる薬はもっともっと沁みて飲み薬も喋るのも億劫になるぐらい恐ろしく苦いものにしようと心に誓いソッと部屋を後にするのだった。

prev next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -