02

「ったく、お前って奴は毎度毎度同じ事を飽きずによくやるよなァ!」
「え?だって断られて諦めきれるような相手じゃないですもん冨岡さんは」
「場をわきまえやがれェ!!他の柱も見てんだろうがァ!」
「宇髄様は元気があって良いとか若いって良いとか褒めてくださいますが」
「…お前は少し黙ってろォ…」

屋敷から出てしばらくすると不死川はようやく冴木の首元を離してくれた。だから師匠と弟子は並んで歩いているが不死川の怒りと冴木ののんびりさは相変わらず。日頃から冴木には何を言っても無駄だと言うか、聞き訳が悪いと言う訳ではないのだが不死川の言いたい事が伝わらない事が多いので結局は師匠が弟子に折れる形になってしまう。

「あーあ、実弥さんは良いなぁ。柱同士冨岡さんとお話する事も多いでしょう?羨ましい!」
「あいつと話す事なんて何もねぇよ…それにそう言うならお前もさっさと柱になりやがれ、そうすりゃ俺も清々するわ」
「またまたぁ!私が居なくなったら実弥さん寂しくて泣いちゃいません?」
「馬鹿が!!」
「いてっ」

不死川がバシンと冴木の頭をはたくがそれ程強い力ではないので冴木もあははと笑って頭を擦っている。師匠と弟子ではあるが不死川と冴木の関係はまるで親友同士のように仲が良い。不死川もはじめこそ「なんて惚けた態度を取る女なんだ」といつも冴木に苛立っていたがそのうちいちいち冴木の態度に腹を立てても無駄だと言う事を理解し実弥さんと呼ばれる事もすんなりと受け入れられるようになった。

「冴木の嫌な所はその態度でそこそこの実力が有るって事だなァ…」
「え?それって褒めてるんですか?」

それにそんな態度の冴木を認めるのは悔しいが、冴木の鬼殺隊としての実力はしっかりとある。鳥の呼吸を使い戦う冴木は柱候補とも言われているしその態度からか後輩達からの信頼も厚い。

「ねぇ実弥さん、私がもし冨岡さんと結婚したら祝言にはちゃんと出てくださいよ」
「なにが祝言だ、相手にもされてないくせによォ」
「今はね!そのうち想いが通じるかもしれないでしょう!」
「ったく、何でよりによって冨岡なんだァ?あいつのどこが良いんだか…」
「えー!たくさんありますよ!冨岡さんはかっこいいし素敵だし…あと凄く優しい」
「優しい?ああも素っ気無く返事をするのにか?」
「はい!だって私の戯言に無視をせずちゃんと断ると返事をしてくれるんですよ!酷い人なら無視するでしょう?だけど冨岡さんはいつだってちゃんと返事をしてくれるんです。だから冨岡さんは優しいんですよ」
「…我が継子ながら、お前の思考は良く分からねぇなァ…」

何をきっかけに冴木が冨岡に想いを寄せるようになったか知らないが不死川からしたら冴木のような性格の女が冨岡のような男を好きになる事自体不思議でならない。だが冴木はもう随分と冨岡に夢中なようでまだまだ諦めるような様子も無くてそんな継子を見て不死川は微笑ましいと言うより変な奴だと思うばかりで、でもやはり嫌いにはなれないと思いお喋りを続ける冴木と並び自分の屋敷へと帰るのだった。

prev next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -