01
本日、鬼殺隊第97代当主産屋敷耀哉の屋敷で定期的に行われる柱合会議が行われていた。話も終わり各々が座敷から庭へと出てくる中一人の女がある柱にササッと近づきこう言った。
「冨岡さん、結婚してください」
「断る」
女からの求婚に顔色一つ変えずそして間髪居れずにサックリと即答するのは鬼殺隊水柱の冨岡義勇。それは鬼殺隊の人間にとってよく見慣れた日常的風景…。
『四月馬鹿』
突然の求婚を目撃しどよめくその場…にはならなかった。何故なら先程も言った通りそれはよく見慣れた風景だったからだ。
「きゃあ!冴木ちゃんったら大胆ね!」
恋柱甘露寺蜜璃は両手を頬に当ててキュンと胸を高鳴らせるが他の柱達は「またか」とも言える表情。微笑ましく思っている者も居れば、やれやれと呆れるように思っている者もいる。
「あら、また即答されちゃいましたね」
「いつも言っているはずだ。何度言われても万城との結婚は考えていないと」
「でも何度か言われるうちに気が変わるかもしれないでしょう?」
「…」
「だから私は会う度に冨岡さんに求婚するんですよ」
ニコリともせずに淡々とそう述べる冨岡であったが分かっているのか分かっていないのか、気にも留めぬ様子で女は呑気に笑った。
「何してんだァ!!!またくだらねぇ事言ってやがるなァァァ!!!」
そんな女に突然の怒号。
「あ、実弥さん!」
「手を振るんじゃねェ!!」
風柱である不死川実弥が顔色を変えて女の元にやって来る。彼女の名前は万城冴木。こう見えて冴木は不死川の継子なのだ。
「何しに来やがった!」
「何って迎えに来たんですよ〜さぁ一緒に帰りましょう!」
「誰が繋ぐか!」
「わ、これじゃ犬みたいじゃないですか」
怒る師匠を余所に冴木は呑気に手を差し出して、子供ではあるまいし手を繋いで帰る訳がないので不死川がそれをバチンと叩く。そして冴木の隊服の首元を掴むとさっさと帰るぞと言って引きずり出した。
「いててて…もう少しお話したかったのに。あ、冨岡さん!次に会った時こそ良いお返事くださいね〜!」
「断る」
「あはは!一日に二度も断られちゃった!」
「お前は少し黙ってろォ!!」
そうして最後までやかましいまま、冴木はズルズルと引きずられるように不死川と去っていったのだった。
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