ドオオンっと大きな音が響けば、鳥たちが一斉に飛び出す。

「みんな、生きてるか!」
「なんと…か―――っっ!!」

浜辺に打ち上げられた船はグラーっと揺れ、ドオ、オンっと音を立てながら着岸した。
「と…ともかく陸地について良かった!」っと革が安堵し、あたしたちは船から降り生い茂る林の中を歩いていた。

「でも、ここどこなんでしょ?」
「コトハにも、分からない場所かぁ」

コトハとあたしの会話に、革が「まだ、何も見えてないから分からないだろ?」っと口にすれば「あ!!」と集落らしき村を発見する。
お腹が空いていたカナテに、続くように村の人からご飯をあやかれば「ここはどこなんですか?」っと革が質問をした。

「どこって…ここは“ナルタキ”だよ」
「“ナルタキ”!?」

村の人の言葉に、カナテが驚くので「カナテ、知ってるの?」っと聞けば、懐から古びた地図を広げて説明をし始める。その地図は、この国の世界地図のようなもので「今、俺らはここにいるんだ!」っとカナテが指差した。
広大な陸に挟まれた左下の端にナルタキがあって、入り組んだ島と島と海に囲まれた中心にあるのが首都(ミヤコ)だと言う。


「「遠っ!!」」


あたしと革が同じことを口にすれば、秘女王の告げた言葉を思い出していた。革の持つ、劍神を秘女王の命が尽きる前に届けることを。
「うーん」っと悩むカナテに「どうしたの?」っと、あたしが声を掛ければ「首都に向かうにはカンナギ様の領地に入るしかねェぞ」っと口にする。

「え!?カンナギの!!」
「領地!?」

「この天和国(アマワクニ)は、首都以外は、12の領地に分かれてるのさ!それぞれを十ニ神鞘(シンショウ)が治めてるのは常識さ!」


首都に向かう話が聞こえた村の人たちが、やめたほうが良いと声を掛けてくる。「秘女王が倒れたせいで、革命だかで国中がひっくり返るってウワサだぞ」っと。
想像が出来ないことに「革命!?」っと、革が声にすれば「鞘同士で戦乱になるかもしれねえって。ここにいるみんなは、先に逃げてきたんだ」と説明する。


“必ずや戦乱になる”それは、秘女王が告げた言葉。

「革?」
「アラタ様…」

「…いや、進む!」


ミチヒノタマをギュッと握った革に、あたしも「うん!」っと頷けばニッと笑う。
革が「よし、行くか」っと告げようとすれば、村人たちの「鞘といやぁ…あの流刑地が正常に戻ったらしいな!」っと、喋る声が耳に入った。

「なんでも新しい鞘が現れて、鞘“ツツガ”を降したらしいが」
「まだ若くて15、6の…」

その村人たちの会話に「それだったら、この…」っとカナテが交ざろうとすれば、ぱんっと革が叩き「さあ出発だ!!巳束、コトハ」っと大きな声で告げた。
集落から離れた場所に出れば「ウワサって広まるの早いですねー」っと、コトハが言えば「っスね!」とギンチが口にする。


「なんで“俺だ”って自慢しねーのさー」

「革は、恥ずかしがりやなんだよね!」

「そうだよ、恥ずかしいの!!」


山間部の谷底の近くまで来れば「てか、ここから別行動な!」っと革が、カナテとギンチに告げる。当然っとカナテが言えば、ギンチが「神意使ってたとこ、スゴかったスよ!」っと言った。

「すごかったのはお前らだよ」
「そうだよ、お互いの為に起こした行動。すごかったよ」

「アラタ、巳束…」っとカナテが呟けば、革が「もう会うこともないけどさ。お前らは、ずっとそのままでいてくれよな」っと口にした。ギンチはその言葉に「もちろんス!!」と頷き、カナテの手を握っていた。



「おーい、やっと道が開く時間だぞ!」

滝の目の前にいた人が口にすれば、何人もの人たちが滝口と滝つぼの中間位置にある石橋に集まり始めていた。「道が開く?」っと革が呟けば、ドドドドっと流れていた滝が止まる。サアっと水が引いたのだ。
その場所には、洞窟ともいえる入口があって「開いた―――!!」っと、何人もが喜び「すぐ閉じてしまうから急げ!次、開くのがひと月先だ」っと言っている。

「あ!!母ちゃん!?」

洞窟に入っていく人たちを見ていたギンチが、その中に自分の母親がいるっと声をあげる。母親もそれに気付き「ギンチ!?」っと言って抱きしめた。


「お前、よく無事で!!」
「母ちゃんも!!俺ずっと持ってた、母ちゃんの指輪!!きっと会えますようにって!!」

後ろで見ていたカナテに気付き「あ…この子は?」っと聞けば「カナテの兄ィだよ!えーと…さらわれた俺を助けてくれたんだ!」っと説明する。その言葉にカナテは、ドキっと揺れた。

「それは世話になって…本当にありがとう!!」

「あ、いや…」

ギンチの母親はこの道にある、奥の辺境へ行くとこだったと告げる。「親戚もいるし、みんなで一緒に暮らせるよ!」っと、ギンチに道が閉じる前に行こうと言った。
「兄ィも一緒だよ!」っとギンチはカナテの手を取り、その道を歩き出した。あたしたちは近くで見守っていたが「行こ、巳束、コトハ」っと革に言われ、歩み始めた。


「でも良かった…!盗賊団に父ちゃん殺されたとき、もう母ちゃん、あんたもだめかと…」


カナテは、その言葉にパッと手を離せば、身を引いた。「えっ?兄ィ…?」という声に革とあたしが振り向けば、ギンチの真上には流れ落ちる水が迫っていて「危ないギンチ!!」っと母親が洞窟の方へ抱き寄せた。
ドドドっと水の勢いが増していく。
「なにしてんだ兄ィ!!こっち!!早く!!完全に閉じちまう!!」っとギンチは叫ぶが、カナテは動こうとしない。ギンチに、手を振り上げ笑うように告げる。


「母ちゃんと元気でな。ギンチ」

“指輪…大事にしとけ”
“母ちゃんと、きっといつか合わせてやる。それまで俺が兄キになってやるさ!”
“それまでは――――――”

「あ…兄ィィ―――――――――ッッ!!」


ギンチの叫ぶ声と流れる滝の音が響いていた。だが、それも聞こえなくなってしまい、ドドドっと流れ落ちる音しか聞こえない。
カナテは手をギュッと握りしめ「行けるワケねェさ。お前の親父殺して…お前と母ちゃん引き離したの、俺の盗賊団(カゾク)さ…」っと滝の目の前で呟いていた。


「え?アラタ様、巳束さん」


ザッと歩く音が耳に入れば、それは横を向かなくても分かる。あたしと革は、同時に同じ方向に足を進めれば目を擦るカナテの側に近付いていた。
革はカナテの後ろの首元をガッと掴めば「いいか、俺の言うこと聞けよ!でなきゃ、すぐ置いてくからなっ!!」っと声を上げる。そしてあたしは「そうそう!」っとその横を掴んで告げれば、カナテは「えっえっ!?」っと口にした。


「全員、首都に着くまで健康第一!!暴力反対!!絶対安全!」


「革、あと平穏無事も!」
「…巳束、四字熟語を述べたわけじゃないから」
「そうなの?…じゃあ、右に同じく!」






君の想い受け止めて

<<  >>
目次HOME


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -