愛しい存在。

それは、突然だった。


「鉄平!お客さん来てるわよ!」

「え……??」


練習中、俺にお客さんが来た。
誰だろう?と思いながらも、リコに聞こうとして振り替えると。

色素の薄い茶髪を揺らしながら、リコの後ろに隠れている可愛らしい少女を見えた。

顔を赤ませながらも、こっちを恐る恐る見る君を見たとき、俺は堪らなく嬉しくなったんだ。


* * * * * * * *

IHの試合前日。
明日は、花宮率いる霧崎第一との大切な……雪辱戦。
…て言っても、俺は怪我のこと花宮にどうしろって言うわけでも無いんだけど……

「うっしゃやるぞおおお!!」
「「「「「おお!!」」」」」

去年の俺のこともあるんだろうけど、なにより霧先第一に負けたことが悔しいんだろう。試合前の数日間は、特に懸命に練習していた。




そして、心のなかで思う。


――皆のことは、俺が守る。



それだけは、それだけは絶対に。
花宮は昔からあんなやつだ。去年だって、俺がやられていなかったら多分…日向もろとも、誠凜は皆負傷していただろう。

今年も、それだけは避けなければいけない。


俺はそう心のなかで誓いながら時は過ぎ…


ついに試合前日になったのだ。



* * * * * * * *

「ほらっ#名前#!はやく行きなさいよ!」
「っ///!!」

リコに押され、俺の前に出てくる彼女……#名前#は、俺の彼女だ。

「……///」

上目遣いで俺を見上げる#名前#。優しいブラウン色の瞳には、俺が写っている。

「……っ///」

目を合わせると、一度下を向き、手に持っていた物を差し出す。

「これ…弁当か…?」

コク、と頷く彼女。パチパチと目を瞬かせる。だって今日俺は…

「知ってたのか…?俺が今日、弁当忘れたって……」

コク、と再び頷く彼女。
確かに俺は今日、弁当を忘れた。何故なら今日は、育ての親である祖父の祖母が旅行にいく日だからだ。

朝は二人を送り届けたあと、体をならすためにランニングやら色々として…練習に来た。

「……ありがとう、#名前#。」

そう言えば、祖母が#名前#に話したと言うことを言っていた事を思い出し、自分のためにわざわざ弁当を作ってくれたのを思うと、思わず微笑みがこぼれる。

俺を見て、はにかみながら微笑みを返してくる心音。

「ほら#名前#!鉄平!こんなとこらでいちゃつかないでよー」
「っ/////」
「…ははっ、ごめんごめん。」
「#名前#、少しあっちで休んでて??身体に障ったらいけないし……」



……#名前#は、ある病を患っている。
…病と言うか、精神的なものだが……。


……#名前#は、"声"がだせない。
#名前#は歌が大好きで、上手くて。
ネットに歌を投稿しては、"歌姫"と呼ばれるほどよ奴だった。

―けど、三年前。
高校生から事務所に所属することにまでなった心音は、男子に好かれていた。
容姿も良く、器量も良い。それに、歌も上手い……
だが男子に好かれすぎたため、中学のクラスの女子に反感を買った。

それも、一人二人ではない。
ほぼ"全員"だった。

影でいじめられ、様々な苦痛を受けた結果――心音は、声が出なくなったんだ。

その時他校だった俺は、幼なじみである心音の事に気づけなかった。
中学に入ってからはめっきり会う機会も、話す機会もなかったからだ。

それを言い訳になんてしたくないが……それから俺たちは、高校になってから俺が告白し、泣きながら嬉しい、と声が出ない口で良い続けた。

――そんなこんなで、今に至るのだ。



「はーい!じゃあ休憩!」
「はぁ〜つかれたぁ〜!!んあ!篠崎じゃん!!どしたの??あ、もしかして〜」

休憩に入ったとたん、コガが心音に絡む。
心音は、問いにたいして、顔を真っ赤にさせている。

「#名前#!…おまたせ、弁当一緒に食べよう?」
「!…!」

コクリと頷き、微笑む彼女。








こんな些細なことにも、幸せを感じる俺は、

どうにかしているんだろうか。





俺は、何よりも一番に、

こいつを守りたいと願う。



そんな、大切な…愛しい存在。











オマケ

黒「キャプテン、彼女は誰なんですか?」
日「ありゃ木吉の彼女だよ。」
リ「ふふふ〜やっぱり心音は可愛いわ!!」
小「いーよね〜彼女ほしーい!!」
火「(木吉先輩にも…彼女なんていたのか…!!!!)」







はい。駄文でスミマセン。
声がでない主人公。水戸部さんの同じじゃないんですよ、一応。かぶっちゃやばいと思って、頑張りました(笑)

…最後に声出させてあげたかったなぁ…

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