小説 | ナノ
Un rival dans l'amour
面接が終わり、早速仕事の説明をしてもらうべく調理場へ向かい、キッチンを担当をしているペンギンという人に食材やメニューについて教えてもらうことに。
「これで一応全メニューだ。新しくメニューを増やしたいときは好きに材料を使ってくれても構わない」
「う、うッス」
説明はめちゃくちゃ分かりやすかった…分かりやすかったが、なんでこんなにこの人は俺を睨んでくるんだ!?
俺の聴く体制が悪かったか?ちゃんとメモは取ってるし、返事もしたし…何か俺は恨まれることしたか?
うんうんと、無い頭で一生懸命考えていると向こうから「おい」と声をかけられた。
恐る恐る視線を向けるが、ヤバい。なんかもう視線で人が殺せるぐらいな眼力で睨んできてる。
あ!もしかして俺の目つきが悪かったとか!?生まれつきだからしょうがねぇじゃねーか!
「新人、お前ローのことどう思ってる?」
「え、店長?」
相手の口から出たのは予想外の人物の名前が。
自分の容姿のことを言われるかと思ったが、どうやら俺の勘違いだったらしい。
店長、店長についてねぇ…模範的な答えだったら、優しくて落ち着いてる人とか、第一印象を言うべきだよな。
正直なこと言ったら引かれるかもしれねぇし…一目惚れとか…。
「落ち着いていて、優しい人だと思いますが」
頭に浮かんだあの笑顔を頭から追い出し、とりあえず模範的な返答をした。
すると相手はジッとこちらを窺ってきた。な、何か変なこと言ったか?
あまりの気迫に流石の俺もビクビクする。
「お前、ローに惚れてるだろう?」
「は、はあああああああい!!??」
今何て!?なんて言ったこの人!?俺一言も言ってないよな!!??
もしやこいつ人の心が読めるのか…?ついにはそんな思考に至るほど困惑する。
しかしそんな俺のことなんぞお構いなしに話を続ける。
「昨日、お前がローにバイトの話を持ちかけてきた時から怪しいと思っていたが、やはりな…」
「だ、だったらなんだっていうんですか?」
もうこうなったら自棄だ、自棄!
「お前にローはやらん」
「なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないんスか」
「ローは俺の大事な友人だ。年下の青臭い坊主にそう簡単にはやらん」
「…ほぉ〜」
なんだこの舅は。
とりつく島もないというのを体現したような態度しやがって…!
見かけどおり俺はそこまで気は長いほうじゃねぇ。もう今にもこめかみの血管がプッチンいきそうだ。
もうこんなやつに敬語なんて使ってられるか!つか店長にすら使ってないけどな!
「そこまで言うのなら、ちゃんと守れよ」
「お前に何かできると思うのか?」
「あんたこそ、俺が何もできないと思ってんのか?」
まさに一触即発。
多分こいつと俺の間には火花が散っているだろう。イメージ的に。
このスカした面を絶対ぇ崩してやる…!
そう念を込めながら睨んでいると、目の前の奴は俺から視線を外し、扉のほうを向いた。
どうしたのか気になり俺も扉のほうに意識を向けた。
すると、勢い良く扉が開いた。
「ペンさーん!しんじーん!!説明終わった〜?」
「なんだ、シャチか」
「なんだとは何よ、ペンさん」
「ローかと思っただろ」
「ローさんは今買い出しに行ってますー!あ、新人!今度は掃除の場所とかもろもろの説明すっから!」
「あ、うッス」
店員のこのテンションの温度差に呆気にとられていると、シャチという人が今度は掃除の説明をしてくれるらしい。
大人しく俺はその人の後について行き、ホールなどの説明を受けることに。
「…ま、こんなもんかな〜?あ、他に何か質問ある?」
「えと、じゃあ一つ良いッスか?」
「いいよー!敬語も無しで全然いいよー!」
「あ、ああ…あのさ、あんたらの関係性って何なんだ?」
「ん?俺たちー?そうだねぇローさんとペンさんは俺とバンの先輩かな?」
「バンって…?」
「あー、そういやバンは昨日と今日は休みでいないんだっけ。俺の同級生!明日になったら会えるよ〜!じゃあそろそろ開店時間だから持ち場についてー」
「あ、はい…」
そういって、シャチはとっとと戻っていった。
一番聞きたいことを聞き逃した…!!
あのペンギンと店長は付き合ってんの?とか!
店長って好きな人いんの?とか!とか!!!
まあ、機会はいつでもあるし、今は仕事をまじめにやろう。
俺はのそのそと持ち場に戻った。
Un rival dans l'amour
(戻ったか、じゃあこの野菜全部切れ)
((そういえばこいつと一緒だった…!))
+++END+++
どうも、今回はペンギンさん・シャチさんとの絡みでしたー!
このお話のペンギンさんは「うちの娘はやらん!」のお舅さん。
シャチさんは「え、あっそうなの〜?」のほほんドリームメーカー。
そしてバンダナさん、あだ名”バンさん”は後々出てくると思います!
ペンギンさんとローさんの関係が気になるオトメンキッドくん、自分的にはたまりませんね!
あーしかしまた今回もカクテルが出てこなかった…じ、次回出します!
ではここまでお付き合いくださりありがとうございます!
タイトルはフランス語で”恋のライバル”らしいですよー。(ボソッ)
霧咲
(2011.12.17)
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