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彼と男の一週間(2)



彼と男の出会いの次の日。彼は午前の授業をさぼり、昨日の中庭へと向かった。
昨日と同じく桜は咲いていて、花びらがひらひらと舞い落ちていた。
彼は桜の根元の近くまで寄り、辺りを見回す。


「…いねぇのか」
「いるよ」


彼が肩を落とし、その場から立ち去ろうとすると、後ろから昨日の男が現れた。
男は昨日と同じく悪戯が成功した子どものような笑顔を向ける。彼はその様子に呆れた表情を浮かべた。


「いるんなら最初っから姿を見せろよ」
「そんなことしたら悪戯にならないだろ?」
「すんなよ!」
「ハハッ!アンタ悪戯しがいあんだもん」


男は今まで見せたどの笑顔とも違う、純粋に笑っているくしゃっとした笑顔を浮かべた。
その笑顔に彼の心臓は昨日よりも大きな音を鳴らした。彼はふいと男から顔を反らし、頭を掻く。


「お前ってさ、」
「違う」
「あ?」
「お前じゃない、トラファルガー」


名前じゃなくお前と呼ばれて気に障ったのか、男は頬を膨らして彼の顔にズイッと近付く。


「あ、あぁ」
「分かればよし!なんならローでもいいぞ!」


近付いた顔にドキドキと心臓を鳴らし顔を真っ赤に染める彼に、そんな彼に気付かずにっこり笑う男。


「で、何言おうとしたの?」
「いや、トラファルガーって何年生かと思ってよ」
「ユースタス屋は?」
「俺は二年だ」
「ふーん…俺、何年だと思う?」
「んー……俺と同じ二年か?」
「まぁ、そういうとこかな…」


男は笑う。
その微笑は、今までのどの笑顔よりも寂しそうだった。


「なぁ…」
「なんだ?」


彼は男のほうをまっすぐ向き、男と目を合わせる。
男の瞳に、彼の赤が映る。


「なんでそんな風に笑うんだ?」
「…なんでだろうな」


彼の問いに、男はまた笑う。
男のその表情に彼は眉をしかめる。
そして、彼は男の両肩を掴み桜の木に押しつけた。


「笑いたくなかったら笑うんじゃねーよ!」


彼の言葉に男はピクリと反応し、俯く。


「…アンタに何が分かる」
「分かんねーよ。昨日会ったばっかでお前のことなんざ何も知らねー」
「…っ!じゃあ、」
「だけどなぁ!これだけはわかんだよ!」


そういって彼は男よりも少し高い背を屈んで、男と目線の高さを合わせて苦笑した。


「泣きたいときは、泣けよ。な?」
「〜〜〜っ!」


彼の言葉に男は涙腺の糸が切れたかのように目からボロボロと大粒の涙をこぼす。


「うっ…グズッ、うぇっ、」
「よしよし」


男は彼にしがみつき、そんな男を彼はそっと抱きしめ頭を優しく撫でた。



彼と男の接近。
(うぇ〜〜〜ん)
(泣いて泣いて、スッキリしろ)





+++END+++




キドロ長編二話目です!
いや〜やはり想像してた通り難産になりました…^^;
ですが、遅かれ早かれこの連載はしてるでしょうね。
このネタはサイト開設前から妄想してたネタなので…。

しかし、最初と最後のネタしか妄想してなかったので、中間のネタが…!
この次どうなるんだろう…?
7話でやりあげるつもりなんだけど…終わるかな?←

では今回もここまで読んでいただき誠に有難うございます!
また次回!



霧咲
(2011.1.1)

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