小説 | ナノ




彼と男の一週間(1)




桜が舞い落ちる四月の始め。
もう始業式、入学式も終わり、学園内の生徒たちは落ち着いた様子で授業を受けている。
そんな中、一人の男子生徒が中庭の桜の根元に寝転がっていた。
彼は頭につけているヘアバンドを自分の目を隠すようにずらして、桜の根に頭を置いていた。春の暖かい風が桜の花びらとともに吹き、彼の赤い印象的な髪を揺らす。


「あー…かったりぃ」


ボソッと独り言をつぶやき、そのまま彼は眠りに就いた。彼の寝息と風の音、そして風で揺れる桜の木の音だけが鳴っている。静かな時が流れる。
一陣の強い風が吹く、その風で桜の花びらが一気に舞い上がる。
そしてその花びらが落ちると、一人の青い髪をした男が現れる。


「…」


男は何を考えているのか読み取れない表情をし、ただジッと彼を見つめる。そして一歩一歩、ゆっくりとした足取りで彼に近づく。彼は男の存在に気付かず、未だ眠りのなか。男は彼のすぐ横まで来ると、しゃがみ込んで彼の顔をまじまじと見つめる。男は彼の顔に手を伸ばし…鼻を摘まんだ。
彼はヘアバンドで目が隠されていても分かるほど眉をしかめ、男はそれにクスリと笑った。


「…〜っ!!」
「口で息しろよ。バーカ」


男がそういうと彼は口を大きく開き空気を思い切り吸い、何回か深呼吸をした後勢い良く身体を起こし、ヘアバンドを額へずりあげる。


「テメェ!何しやがんだ!!」


彼はとこの胸倉を掴んでそう怒鳴る。その様子に彼はふいっと顔をそらし無表情を浮かべる。


「鼻を摘まんだ」
「そういうことを聞いてんじゃねぇ!死ぬかと思っただろーが!?」
「死ぬわけないだろ。口塞いでなかったんだから」
「んだと!?テメェ何年だ!」
「あーやだやだこれだから不良は」
「テメェ…おちょくってんのか?」


彼が凄んでも男は未だに無表情。だが、今の彼の問いに男は初めて笑った。その笑顔は子どもがいたずらを成功させたときの無邪気なのと、どこか色気がある笑顔だった。
その笑顔に彼の胸がトクンと静かに跳ねる。


「うん、おちょくってる」
「〜〜っ!…ハァ、何なんだよテメェ」


彼は男の返事に怒る気も失せたのか、掴んでいた襟を放し頭をガシガシと掻く。彼の様子に男はキョトンとした顔をする。


「あれ?怒んないの?」
「怒りを通り越して、呆れた」
「フフッ!そっか…。ねぇ、」
「んぁ?」


彼はズボンのポケットから煙草を出し、一緒にとりだしたライターで火をつけていた。それを男が取り上げる。


「あ!何しやがる!?」
「ここは学校、お前未成年、俺煙草臭いの嫌い」
「…最後のが本音だろ?」
「当たり」
「ハァ…で、なんだよ?今何か聞こうとしたろ?」
「あぁ…お前、名前は?」
「人からものを聞くときは自分からだろ?」
「俺はいーの!で、名前は?」


これ以上何を言っても男には効かないと悟ったのか、彼は三度目のため息を吐き、答える。


「ユースタス・キッドだ」
「ユースタス屋…か」


男は彼の名前を満足そうな顔で復唱する。


「なんだよその呼び方」
「癖なんだよ」
「ふーん…で、」
「ん?」
「次、お前の番」
「あぁ、俺な」


男と彼の目が合う。男の青い瞳に吸い寄せられそうになる彼。
男はスッと立ち上がり、彼に背を向け顔だけ振り返りニヤリと笑う。


「トラファルガー・ローだ」


そしてまた強い風が吹き、花びらが舞い上がる。
彼は強い風に目をつむり、風がやんだ後目を開けると男はいなくなっていた。
どこからか声が聞こえた。


《またな、ユースタス屋》


彼は茫然としたままその声を聞き、噛みしめるように言う。


「またな…か」


これが彼と男のファーストコンタクトだった。






彼と男の初めまして。
(面白くなりそうじゃねぇか)
(なぁ、トラファルガー…?)





+++END+++




ハイ!長編始動しました!
まだ大体の内容と設定しか考えてなく、これから先をどうしようか悩んでます←

初めてのキドロ長編で至らないところが多々あると思いますが、どうか見守ってやってください!

ここまで読んで下さり、誠に有難うございました!



霧咲
(2011.1.1)

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