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戦利品≠ニして選ばれたのはチョッパーだった。チョッパーは泣いてぐするが、ゾロの言葉(男なら……! フンドシ締めて勝負を黙って見届けろ!)で涙と鼻水をぬぐってドカッと椅子に座った。その様子に周囲は盛り上がりをみせた。
第二回戦の「グロッキーリング」はゾロ・サンジVSグロッキーモンスターズ≠アとハンバーグ・ピクルス・ビッグパンの巨漢たちだ。
「でか――ッ!」その大きさに思わず声があがる。
「巨人の血が入ってるからね」
ゾロとサンジは頭にボールを付けるボールマンをどちらがやるかで争い(ナミの言葉でサンジに決定)、相手を貶しては喧嘩する。
「あの2人って仲悪かったり……」
「するわ」あっさりとナミが肯定する。
「そ、それって大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
ルフィはししし、と笑った。
ドジョーの血をひく魚巨人(ウォータン)≠フビックパン(ボールマンだ)のぬめる肌は予想外で、それがきっかけとなりゴールされかけるが、ゾロがピクルスを投げとばし、サンジが自分を捕えているハンバーグを蹴りとばし、うまい具合に投げられた2人の頭がぶつかる。しかし、その後敵はルール違反である筈の武器を持ち出し、審判はリングを見ず、気付かぬフリ。武器を使用され、ゾロとサンジはもう立てないのではないかという程のけがを負う。
「……っ、何だよコレ!」
見かねてとうとう乱入しようとしたツナの腕をルフィが掴んだ。
「見てろ」
「──っ、分かった……」
ルフィと真っ直ぐに視線が合い、少ししてツナが折れた。
「……おいコック、10秒手ェかせ」
「……妥当な時間だな」
そして2人が立ち上がる。その後、あからさまに凶器を持ち出してきたグロッキーモンスターズ≠セが、サンジの蹴りが炸裂し、ハンバーグが吹き飛んで凶器のうるさい音でそれに気付かなかったビックパンにぺったんこにされる。次にピクルスもゾロに吹き飛ばされ、凶器を持って回転したままビックパンに突っ込むが、サンジがビックパンの背中を蹴りあげたので、ビックパンは倒れない。そこへ突っ込むゾロ。それを阻むピクルスはサンジによって蹴りとばされ、審判ともども地に伏す。審判はレッドカードを出そうとするが、カードも笛もすでにナミがスっていてそのまま気絶。リングではゾロがサンジによって上へ飛び、ビックパンの口に手をかけ、その勢いでビックパンの頭をゴールに突っ込んだ。
「やったー! 勝ったぞ〜!!」
「やったぞー! うおー! こんちきしょー、うおー!!」
「良かったぁ……」
「がー!! がばあー!!」
ルフィとウソップは肩を組み、泣きながら叫ぶチョッパーはもはや何を言っているのか分からない。そして敵でさえ、2人を称えていた。
ナミが意識を取り戻した審判に笛を吹かせ、試合が終了した。
「デービーバックファイト二回戦!!無敵のチームグロッキーモンスターズをくだし! ゲームを制したのはな〜んと! 麦わらチ〜ム!! 大勝利〜〜っ!!!」
アナウンスと共に歓声が響いた。
勝利の証にルフィはチョッパーを取り戻そうと声をあげたが、それをナミが止めた。
「三回戦は一対一の決闘よね。出場選手はルフィとオヤビンだけ。じゃあ今オヤビンを取っちゃえば三回戦は不戦勝になって……もうこれ以上戦うこともなくチョッパーを取り戻せるんじゃない?」
「あ!」
「!!」
ツナは成程、という顔をする一方で司会のイトミミズをはじめ、フォクシー海賊団はショックを受ける。そしてフォクシーを筆頭にピーナッツ戦法だ、ピーナッツ、ピーナッツ、とナミを責める。
「何でピーナッツ!?」
「えーん、もーあいつらキライ」
ナミはしくしくとわざとらしくロビンに泣きつく。
「ルール上問題なくてもまた海賊の美学≠ノ反するみたいね」
「そりゃ反するだろ。お前が悪ィよ」
「おれはナミに賛成」
「何だ!! なんか腹たつな」
ピーナッツ! ピーナッツ! と鳴り止まないコール。
「うるさいってのよあんた達!! 調子乗ってんじゃないわよ」
「「「すいませんでした」」」
(ナミ怖ぇっ!!)
豹変したナミの一喝でぴたりとコールが止んだ。
「ねぇ航海士さん。あなたの提案、確かにここで決着をつけられるけど、同時にオヤビンが仲間になっちゃうわよ」
「え」
「あ、そっか」
「「「「あれはいらねえ」」」」
「!!?」
ゾロ・ウソップ・ルフィ・サンジに口をそろえていらないと言われ、再びずーんと落ち込むフォクシー。結局順当に、ルフィはチョッパーを取り返戻した。そしてフォクシーはポルチェ達の励ましでなんとか復活へとこぎつけた。
「おめェら……(そうだ…! おれの居場所は……ここに)」
「茶番はいいから次いけよ」
サンジの辛辣な言葉にフォクシーはショックで地面にめり込んだ。
「オヤビーン!!」
「埋まった――っ!?」突っ込みが炸裂する。
「ホイホイホイ、いいかお前ら……!! 三回戦のコンバット♂エに勝つことは不可能≠セと言っておく!! 最終戦で取られた船員(クルー)はもう取り返せねェ。誰が取られてもいいように……身支度を整えておけよ……」
「何をー!? おれがお前に敗けるかァ!!」
自信たっぷりに独特の笑い方をしながら言うフォクシーにルフィが怒る。
「………ケンカとゲームは………違うんだぜ」
そう言い残して去っていった。
超不自然にバトルのフィールドがセクシーフォクシー号に決定した。コンバットは戦闘だ。直径100mの円≠フ中全てが戦場で、円の中にある全ての物は利用可能。敵を円から出せば勝ちだ。ただし、空中・海中では出た事にならない。
選手のルフィは控え室へ向かい、セコンドとなったウソップもそれについていった。一方、フォクシー海賊団は客席を作ったり前座試合をしている。
ツナは麦わらの一味と共に席に着いた。そして始まるコンバット。アナウンスにあわせて登場したグローブをつけたフォクシー。そしてアフロでグローブをつけたルフィ。
「誰だよ」
「おおー! ルフィカッコイイ〜!」
「何でアフロ――!?」
「……ウソップがセコンドについたのが間違いだろ」
「…………!!(キラキラ)」
「やるなァ! ブラザー魂(ソウル)が燃えたぎってる」
「どんなノリだよ! 訳わかんねーよ!」
「まじめにやってほしいわ」
「ウフフ。素敵じゃない」
順にゾロ・チョッパー・サンジ・ツナ・ナミ・ロビンだ。ツナはもう馴染んでいるらしい。
セコンドは邪魔だとあっさり退場させられ、勝負が始まった。
早速ノロノロビーム≠フ餌食になったルフィ。伸びた腕だけかけられたり、嘘をつかれたり。挨拶代わりのパンチが決まる。奥に消えたフォクシーを追い、やつ当たりで船首のキツネの耳を破壊してから奥へ。
「何が起こってるんだろう……」
時折爆音などは聞こえるが、様子は分らない。そして起こった大爆発。しかしマストの上に逃げていたルフィは無事。むしろフォクシーが吹き飛んでいた。
「わ―――っ!!」
しばらくして、ルフィが船の横から飛び出した。腕を伸ばして船に捕まって助かる。そしてフォクシーピンバッジの不気味な笑い声の誘いに乗り、船内へ。
やはり中の様子は分らない。
「……」
ハラハラしながら船を見つめるツナ。
「敗けやしねェよ……!」
「そうさルフィだもんな」
「ルフィで……!! アフロだからだ!!」
「ルフィだからで充分だろ。……あんなクソギツネ」
「何でアフロをパワーアップだと解釈してるの?」
「だけど強そうに見えたわ」
「そういう問題!? アフロ絶対関係ないよ!」
「いつもより大分時間くってるな」
「ゴム人間だからな」
「ゴム人間で……アフロだからな」
「だからそれ関係ないよ!!」
ツナのツッコミは敵味方問わない。
「!」
ドカァ……ン!!
甲板で動きがあった。影が2つ。そして、立っていたのはフォクシーだった。
「な、なんで!?」
「うわー!!」
「ルフィ〜〜!!」
「ばかな……」
「どうしてただのパンチでコゲるのよ! 何したの!?」
ルフィはまっ黒コゲだった。
「! 見て」
しかし、立ち上がるルフィ。フォクシーはノロノロビームソード≠ナルフィの手足の動きを奪い、攻撃する。それでもルフィは立ち上がる。殴られてもまた、立ち上がるのだ。その姿に敵は驚愕を隠せない。
「……おれの仲間は……誰一人……!!」
「ルフィ……!」
ナミが小さく声を漏らす。
「死んでも やらん!!!」
「………!!」
敵船クルーもその気迫に言葉を発せない。
「ルフィ……」
「……ッ!!」
船長の名を呼ぶウソップ。ツナは拳を硬く握り、決して目を逸らさずにルフィを見ていた。
ワアアアァァ!!
「また立った麦わらァ〜〜!!」
仲間の為、倒されても倒されても立ち上がるルフィ。沸きあがる会場はルフィコール。だがフォクシーが怒鳴ると、やや間を空けてオヤビンコール。
ノロノロビームソード≠ナ動けないルフィに、フォクシーはノロくした砲弾にセットしたフォクシー飛行狐(ファイター)≠ノ乗る。そして砲弾の速さのパンチが顔面に決まり、砲弾もそれに続く。それでもルフィは立ち上がる。驚きに悲鳴を上げる敵船クルー達。そこからは2人の殴り合いだ。
「ノロノロビー……=v
「!!!」
ノロマ光子がフォクシーから放たれる。
「……」
「え?」
「……」
「何だ?」
「あれ?」
「動かない……!」
そして、ルフィが膝をついた。
「た! ……倒れたのは麦わら……! いや!! 違う! 動いたのが……麦わら!! これは一体どういう事だァ!!?」
カラァンとルフィの手から鏡の破片が落ちた。アフロにひっかかっていたのだ。
「ゴムゴムの=v
ハァ……と息を切らしながらぶんぶんと腕を回す。
「あぁ……」
「おおォ〜〜〜!!」
「あぁ……」
「連接鎚矛(フレイル)=I!」
ズドォンとルフィの攻撃がフォクシーの顔面に当たり、ルフィはスタスタと歩き出す。
徐々にフォクシーの顔が歪んでいく。
「……あと8秒」
「え?」
「あっ、そうか!」
「7……」
「なに?」
「………6……」
ゾロ、サンジ、ロビンとカウントダウンしていく。
「うははは! 5<H〜〜!!」
ウソップは敵船クルーも誘ってカウントダウンを続ける。
「「「4=I!」」」
「「「3=I!」」」
「「「2=I!」」」
「「「1=I!」」」
「「「0<I〜〜!!」」」
ドカァン!!
「ぶべェ!!!」
「うおおおおお〜っ!!!」
船首で拳を上げて叫ぶルフィ。
わあああああああ
「やった──っ!!」
「「「うわーっ!! オヤビ〜ン!!!」」」
吹き飛んだフォクシーの落下地点はフィールドの外。ルフィがゲームを制したのだ。
「──……まったく無茶しやがって、こいつぅ! こいつぅ!」
「つつきすぎだ!! 重症なんだぞ!! コンニャロ───ッ!!」
意識を失っているルフィの治療後、彼の大切な麦藁帽子を頭に乗せてドスドスとルフィの顔を泣きながらつつくウソップとそれを止めるチョッパーがいた。
「心配ばっかりかけて……! 何がアフロパワーよ」
「ナミさんアフロはスゴイんだって」
「いや、別にアフロはスゴくないから!」
「………あ! 気がついた」
「ん……」
「だ、大丈夫?」
「あ……あれ!? ゲーム! ゲームは!?」
がばっと起き上がってルフィはり辺りを見回す。
「……おれ勝ったと思ったのに夢か!?」
「大丈夫だ、勝ったよ」
「…………、よかった……」
ゾロが笑って言うと、ルフィは仰向けに倒れて笑って息をついた。
「……」
「うん」
「は」
「安心して観てたぞおれは」
「ウソつけ」
「考えたらこの船出て海賊やる理由はねェんだおれは」
「フフ……」
そこに現れたのはクルーの制止を無視してやってきたフォクシー。
「おい麦わらァ……!! てめェよくもおれの無敗伝説にドロをぬってくれたな」
「……」
ルフィは無言で、ゾロは刀に手をかけていて、ウソップも震えながら構えている。
「天晴れだ、ブラザー」
フォクシーが手を出し、ルフィも握手しようと手を伸ばす。
「オヤビン」
「オヤビン」
「「ぷ」」
ポルチェとハンバーグが笑う。
「でりゃ──っ!! くやしまぎれ一本背負い=I!」
ガン!
ルフィの腕が伸びてフォクシーが地面に頭をぶつけただけだった。
「!」
「オヤビーン」
「バカかお前は」
「自滅した──!」
あきれるゾロに叫ぶツナ。
そして最後の取引だ。船大工が不在の麦わらの一味にイトミミズが主な船大工を3人紹介する。
「海賊旗をくれ」
「「「何──っ!!?」」」
迷うことなくルフィは答えた。欲しいものをもらったら何のために決闘を受けたかわからなくなるからと言う。さらには、帆が無いと航海できないだろうからという理由で、かわりにルフィが新しいマークに描きかえることになった。
「これでよし!」
(((最悪だーっ!!)))
「絵下手っ!」
どこまでも歪で残念な狐の絵と「きつね」の文字。
「めちゃめちゃ感謝されてる」
「「「してねェよ!!」」」
「チャッピー待って、もう一回ギュッとさせて〜」
「うわああああ」
「勝者麦わらの一味=I! デービーバックファイトこれにて閉会〜〜!!」
そうして、フォクシー海賊団が出航する。
「はーよかった! やっとメリー号が開放された」
「……おい! 麦わらァ」
「ぷぷ」
「ん?」
「おーぼーえーてーろ〜っ!!」
「どこまで面白いんだあいつら」
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