ふたりぼっちのワンダーランド | ナノ

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次の日の朝、早速出発しようとすると、お城の兵士だという人がやって来た。

そして、ユーシャさんが連行された。

どうやらユーシャさんは指名手配犯だったらしい。
それも、魔王に協力しているという罪状で。

ユーシャさんと一緒にいた私達も、ユーシャさんと一緒に投獄された。
全員一緒の牢屋で大丈夫なのかな。あんまり本気じゃないのかもしれない。

「ロス、ロス。私、牢屋って初めて来たんだ。なんかドキドキするね」
「何その友達の部屋に遊びに来たみたいな感想!?」
「そうだな、ドキドキするな。勇者さんのこれからの行く末が」
「主に恐怖と絶望でな!!」

ユーシャさんは元気だなあ。
レイシーはユーシャさんのこういうところに引かれて元気になったんだろうなあ。

のほほんと過ごしていると、ルキちゃんがこれからの目的を話してくれた。
弱いモンスターは一定以上のダメージを与えると勝手に魔界に帰ってくれるので、普通に旅をしながら倒していけば良いらしい。
なのでこれからの大きな課題は、強い魔力を持った魔族、総勢12人。

強い魔族は、仮に悪意が無くとも存在するだけで世界に影響を及ぼすのだとか。
それを防ぐ為にも急いで彼等を探し出して、ルキちゃんのゲートで強制的に魔界に送り返さなければならない。

「お前は此処に居ても世界に影響は無いのか?」
「大丈夫、私弱いから!」
「これからに期待だね〜」
「いや、そんな事より、今問題なのはこの状況だと思うんだけど」

ユーシャさんが静かにツッコんだ声は、そこそこ広い牢屋によく響いた。
この広さなら何かスポーツでも出来そうだ。鬼ごっこするには少し狭そうだけど。

「そうだよねー、看守さんが来るまで暇だし。何して遊ぶー?」
「遊ぶ気満々!?大人しくしてないと怒られるぞ!!」
「でも誰も居ないんだもん。せめて携帯あったら第二回写真大会出来たのにな」
「あー。あったなそんなの。じゃあ勇者さんの弱みを狙って激写決めますか!!」
「なんでボクの弱み握ろうとしてんの!?」
「その写真を使ってスクープを書いたら勇者さんの悪行に泊が付きますからね」
「付けなくて良いから!!そもそもボク悪行なんてしてないし!!」
「人の家の箪笥を勝手に漁ったり幼女の服を剥ぎとったりしたのにですか?」
「そっそれはああああ」
「えっ、ユーシャさんそんな事してたの」
「アルバさん、私と初めて会った時に私の服を剥いだんだよ」
「ええー…」
「ごっ、誤解だあああ!!」
「今更言い逃れ出来ませんよ勇者さん…」

レイシーの憐れむ視線を受けて、勇者さんは項垂れていた。
一応世間的には魔王に加担してるって事で思いっきり悪行してるみたいだけどね。だから指名手配なんてされて、投獄されてる訳だし。
国王様にはルキちゃんの事や諸々の事情はまだ伝わってないのかな、と思ったら、ルドルフさんという人がその事を伝えにお城に向かったところだったらしい。

「ルドルフ…あ、私その人知ってる。おじいさんの兵士さんだよね」
「あ、知ってるの?」
「うん、図書館に行こうと思って迷子になってたらお世話になったんだ」
「何か変な事されなかったか?」
「大丈夫だよ。凄く優しい人だったもん、信頼出来るよ」
「お前が其処まで言う奴なのか…」
「初めて会った時女の子を助けてたんだ。女の子の笑顔が生き甲斐なんだって」
「ちょっと待ってそれ危ないやつゥ!!!!」
「え?」

ユーシャさん曰く、ルドルフさんはロリコンらしい。
あー、成程。うん。誘拐とかしてないなら大丈夫じゃないかな。誰かの笑顔の為に頑張ってる事に変わりは無いんだし、普通にしてたら普通に良い人だよ。

エノは心が広いなあ。
ユーシャさんがそう言うので、そうかなと首を傾げると、苦笑いして頷いた。
レイシーやルキちゃんも、穏やかな眼差しを送ってくる。
そっか、そう見えるのか。だったら良かったな。

「というかエノ、どうせ暇なんだから、今の内に寝ておいたらどうだ?」
「エノさん最初本当酷い顔だったもんね」
「だよなあ…ボクももうちょっと休んでても良いんじゃないかって思う…」
「そっか。結構寝たと思ったけど、皆が言うならそうしよっかな」

牢屋の隅に畳まれた簡易的な布団を隅っこに敷いた。
千年経ってるからか、この国の牢屋が親切設計なのか、寝心地は良さそうだ。

「私、子守唄知ってるよ!歌ってあげるね!」
「魔界にも子守唄ってあるんだなー」
「有名なのが一個だけあるんだよ」
「へえ、聴いてみたいな」

ちょっとわくわくしながら耳を傾けた。

「ゆーりかごーのーうーたをー、かーなりやーがーうたうよー」

一気に目が覚めた。

「っえ、」
「え、どうしたのエノさん」
「…あ、ううん。何でもないよ」

レイシーも吃驚したようで、目を見張ってルキちゃんを見ている。
ルディも最後にはあの歌を覚えていたし、うっかり広まっちゃったのかな。
ああ、吃驚した。懐かしいけど、何だかちょっと恥ずかしい気もする。

後でこっそり、ルキちゃんには教えてあげよう。
それは、私の故郷の歌なんだよ、と。


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