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世界設定 幻術形態

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歴史
種族・組織

幻術形態

 大昔に大まかな形を描いた幻術。戦う術となってからその呼称は、やがてそこから派生した形態の総称となった。そうして生まれた各幻術形態(分野)をこれより紹介していく。


――線:直接的派生(派生元がベース)
……線:間接的派生(因子を受け継ぐ)

肉体系

身体強化

 肉体を用いる呪術形態の中でもオーソドックスな幻術。自らの肉体を強化して、肉体の強度や速さを一時的に高める。ビルドアップ。
 敵対する幻生生物を相手に、生身で攻撃を受けて生き残れる事はまず少ないため、ほぼ全ての術者がこれの初期段階を最低限習得しなければならない。

武具

 武器を用いて戦う際に用いる幻術で、武器なら刃の切れ味を保たせたり、強度を上げたりする。防具であれば同じく強度を高める他、軽量化させて動きを軽くするなど。武器や鎧を中心に使って戦う幻術使いは、ほとんどがこれの使い手である。

・精製

 武器を作り出す幻術。武具から派生した幻術形態で、常に武器や防具を形態する際に生じるデメリットを軽減するために考案された。オリジナルの武具から伝説上の武具まで、自身の望む形に作り出す事ができる。が、神の武具などを想像できるだけの想像力を持ち合わせている幻術使いが少ない事、またより強力な武具を精製するにはかなりのエネルギーを必要とするため、本人の幻術を操る許容量によっては諸刃の剣となってしまうケースが多い。

連身

 連身は二人で協力する際に用いられる幻術形態で、身体強化の応用版である。後述する操作型と憑依型で多少効果やメリット、デメリットが異なるが、術者がパートナーの肉体を強化するという点には代わりない。パートナーの負担を軽減したり、術者が肉弾戦を苦手としている場合に多く使われる。

・操作型

 連身を行う際、パートナーの必要に応じて離れた場所から、パートナーの身体強化を補助するタイプの、遠隔操作型の連身。威力はもう一つの憑依型に劣るが、術者自身が危険に晒されてもすぐに対応できたり、危険が迫った際パートナーに知らせるなど、外部からの攻撃に対して対抗処置を取りやすい。心の声だけで会話する事も可能だが、パートナーもしくは術者に伝えたいという意思を持った内容しか伝えられない。術者とパートナーが阿吽の呼吸で戦えるようになっていなければ難しい、信頼関係を最も大切にする型である。

・憑依型

 連身を行う際、術者の精神が自らの肉体から離れ、パートナーの体に直接精神を宿して戦うタイプの連身。幻術使い達の間では『乗っ取り型』や『覗き見型』とも呼ばれる。その名を間違いと呼べないほど、憑依中の術者とパートナーは心の声だけで会話できる代わり、考えている事が互いに筒抜けである。リフレインした過去から本人のトラウマまで、さらに無意識に意識してしまう(いわゆる深層心理などの)心情も見えてしまう。これは術者・パートナーどちらも同じで、これが『覗き見型』と呼ばれる原因。
 操作型よりもパートナーの状況や考えに応じてすぐに身体強化を施せる代わり、術者の肉体は気絶したまま無防備となってしまうため、パートナーも術者も気が抜けない。デメリットが多い分、術者はパートナーの視界を直接見ることになるため、咄嗟の対応をする事が容易になるなど、メリットも多い。後は……互いに隠し事ができなくなる分、操作型でも阿吽の呼吸を取りやすくなるパートナーも、なきにしもあらず。かも。


呪術系

原形幻術

 幻術の本来の姿、「ただの幻」を作り出すだけの幻術。本当に幻なので子供だまし程度だが、使い方によっては相手に視覚だけで騙す℃魔ェできたり、声(幻聴)を加えて騙す≠ネど、やり方次第では本当に侮れない基礎中の基礎。身体強化同様全ての幻術使いが最初に学ぶ。

呪術

 幻術の基礎を学んだ後にステップアップする中で、一番派生と学ぶ者が多いのがこの呪術。形態それぞれ特色があるが、どれも言えるのは、精神的なエネルギーから超常的現象を生み出す幻術であるという事。幻術のエネルギーで、術者の声を聞いた者をその言葉に縛り付けたり、火を創り上げて攻撃させたり、幻生生物を呼び出して拘束したり、結界を張って身を守るなど。
 呪術を学ぶ者は、後述する小分野を一通り、基礎や知識を教えられ、後に自分が得意としたい呪術を学ぶ。小分野それぞれにもさらに派生などがあるが、ここでは簡単に紹介したい。

・呪言(呪歌)

 術者が発した言葉や歌に幻術のエネルギー・呪力を込めて、相手にその言葉で制限をかけたり、操ったりする方法。中世で、「魔法使いの言葉に耳を貸してはいけない」という話が多く出回ったように、耳を貸したら最後、条件に当てはまった者は、術者の呪言に抵抗できるだけの素質と精神力がない限り、相手の思う壺に嵌まってしまう。
 ただし、空を飛んでいない者に「地面に落ちろ」と言っても効果がないように、言葉を操る際には慎重に。術を受ける者の意思に大きく反した行動をさせる際にもエネルギーがとても必要になるため、単純に見えて意外と制約が多い。呪詛(じゅそ)とも呼ばれる。

・攻撃呪術

 呪術の中でも、精霊術と呼ばれるような、自然界のエネルギー(火、風、地、水など)を操って攻撃するなど、直接肉体にダメージを及ぼすような呪術の事。破壊エネルギーを作り出すため、一番手っ取り早く戦闘を終わらせられる上、最近のファンタジーゲームなどでバリエーションが増えた術が多いおかげでイメージに困らない分野。
 またこの呪術は破壊的な幻術という側面だけでなく、暗闇で光を灯したり、その反対を行ったり、はたまた人探しのための術があったり、人避けの効果がある術も存在したりと、術者やその周りの行動に関してやや補佐的な要素も持ち合わせている。

・結界

 防御の側面で一番有名な幻術。領域を指定し、特定の外敵を寄せ付けない術を展開して身を守る呪術。これに特化した家系は重宝されると同時、幻生生物が一般人を襲いやすい神社・仏閣や、繁華街などに特定の結界を設ける役目を請け負う事になる。
 常に幻生生物達と戦う幻術使いの家系はとても狙われやすく、家に必ずと言っていいほど結界を設ける。そのため必然的に結界の幻術の需要が増しているのだ。
 大規模だったり、強力な結界を張る際には、柱人(はしらびと)と呼ばれる幻術使いが、一人から多い時は数百人規模で、数時間、ないし数日間飲まず食わずで結界を維持する。柱人を交代する際は結界が多少緩んでしまうが、これが最大強度を誇る、人間側の盾となっている。

・契約

 幻生生物を使役するために用いる契約。これ専用の呪術が、この分野となる。契約と一口に言っても、妖精と取り交わす契約の仕方がアンデッドに通用するわけでもないため、様々な幻生生物と交わす契約をそれぞれ学び、自分のものとするのがこの呪術である。
 術者の住む家や、所属する組織によって相手にする幻生生物が違うため、後述する召喚・操霊を行う際には、呼び出す幻生生物に相当する契約を事前に済ませておく必要がある。
 これのメリットは、まずいって自分が出す幻生生物に決定的な謀反を行わせない事。じゃれる程度の攻撃はあっても、決して術者を殺したり、幻術使いに歯向かう行動をさせないようにするのが契約の役割なのだ。


止術

 幻生生物と戦う最中、幻術使いはどうしても傷を負ってしまう。日常生活に支障が出ないような軽い掠り傷や切り傷は、軽い手当てで十分補えるが、時として入院が必要なほど重症を負うケースも少なくない。
 理由を簡単に装えるような怪我はともかく、場合によってはその怪我そのものを一般人に悟られてはいけないものもある。そう言った場合、傷口を塞ぎ、元の体を補う幻術が必要になる。その幻術が止術だ。
 医療幻術とも呼ばれるが、ただ傷を塞ぎ、痛みを忘れさせるためだけの幻術。完全に治るわけではない上、かさぶた程度の役割しかないのだ。さらにこの止術は負傷者ではなく、他者が止術を施し、万が一負傷者の幻術エネルギーが尽きて傷口が開く事を防がなければならない。
 呪術の中でも最高峰に難しいと言われているだけでなく、人体の構造から、後述する記憶操作で、負傷者の体を再現するなど、呪術に関しての知識を総動員しなければならない極めて難しい分野である。

召喚・操霊

 幻生生物を作り出したり、呼び出したり、はたまた操るための幻術。呼び出した以上操れなければ話にならないため、結局この総称になっているが、元は個々に分野が分かれていた(どうせ全部一緒に習ったり同じ系統でやるなら纏めてしまおうと纏められたもの)。
 呼び出す幻生生物によってその方法はやや異なるが、根本的なメリット・デメリットは変わらない。制御方法を誤らなければ協力してくれる幻生生物と仲良くなるのがポイント。そして幻生生物に信頼を置かなければ操らせてももらえない(そもそも呼んでも出てきてくれない)。呼び出すものの詳細をきちんと覚えていなければ、呼び出す幻生の一部だけが呼び出されるなど悲惨な事も……。
 自分が作り出した幻生生物を呼び出せるようになった場合、必ず弱点を一つ以上つける決まりがある。というのも、エキドナと事を交えるようになった太古、人間側にいたはずの幻生生物の多くが謀反し、結果弱点のない幻生生物を倒す事がとても困難だった時期があったのだ。万が一を想定して、幻生生物達には弱点を付加し、管理するのも術者の勤めとなっている。
 レーデン家が得意とする幻術の一つ。

時歴(ときよみ)

 極夜章にて登場した、八占(やうら)家独自の幻術形態。方位磁石と時計、羅針盤、八芒星を組み合わせたような魔法具を使う。術の効果を引き出したい時刻を指定し、方位を重ねる事で結界の役割を与え、効力を発揮させる。相手の時間を止める止術と似た役割が主だが、中には禁術として封印された、対象の時間に干渉する¥pもあるとかないとか。


複合幻術

憑依

 召喚・操霊で呼び出した幻生生物に文字通り、術者が憑依する幻術。直接幻生生物の視野や能力を駆使できる上、術者が幻生生物を操っている間生身の体を狙われる心配が少ない。欠点は幻生生物が受けた傷やダメージが直接術者にも及んでしまう事。多少は幻生生物の肉体や精神で軽減されるが、痛い事に変わりはない。
 この三章冒頭、及び三話など、何度も千理が利用している幻術。

・憑依連身

 レーデン家が独自に編み出した幻術。連身と憑依、それぞれの要素を盛り込んだ幻術で、術者が呼び出した幻生生物にパートナーが憑依するもの。
 パートナーが幻生生物を呼び出せない場合や、術者の力量が高く、別に敵を相手したい場合などに有効。術者は召喚を維持すればいいだけで、パートナーは呼び出された幻生生物と呼吸を合わせて戦えるというハイブリッドな方法。しかも術者は召喚維持中、幻生生物を操る手間が省けるため、自身も武具を出すなどして戦える。
 弱点は術者が気絶したり、はたまた幻術のエネルギーが尽きてしまうと、途端に召喚された幻生生物が還ってしまい、パートナーは強制的に憑依を解かれ、どんな状況でも生身に戻ってしまう事。

記憶操作

 幻生生物との戦いを、今までの歴史の中で必ず一般人に見つからなかったというとそうではない。霊視能力者など、天性の才で幻生生物を目撃してしまう例も過去に遡るほど数多く存在した。また一般人もひょんな事で幻生生物を目撃してしまうケースもあったため、幻術使い達はその記憶を一般人から忘れさせる必要性が出たのだ。記憶操作は、術を施される者の過去を読み取り、改竄したり忘れさせるための術である。幻術使いが同じ人間に対して行う術は、良くも悪くも互いの一線をきちんと引くための処置であると同時、この術に長けた者は同じ幻術使いからもいい顔をされにくい。

召喚武具

 武具と精製から派生した幻術で、術者や、他の幻術使いが考案した武具を呼び出し従わせるための幻術。用途はこれに尽きるが、幻術のエネルギーが尽きた際に完全な無防備となってしまう。術者は必ず現実の武器を最低一つは持ち歩く必要があるのは、武具と大差がない。
 またこの幻術を扱える者は型破りな武器を考案する想像力も問われる。現実の武器と同じものばかりを作っていては、幻生生物相手に生き残るにしても分が悪い事が多いからだ。例えば火や熱を操る幻生生物を相手に、鉄塊の刀を振り回して熱い思いをするのはどちらか、明白だろう。
 そういった、武器では相性が悪い幻生生物≠ニも十分戦えるだけの想像力が勝敗の鍵を握る事が多いのも、この幻術の特徴である。ただし武具と言っても、呼び出したそれも当然幻生生物。人格が宿る事もあれば、持ち主の技量を認めてもらえず行方をくらまされでもしたら目も当てられなので、どんな武具でも弱点を必ずつける決まりがある。

変貌(獣人化)

 肉体の一部または全体的に、動物や幻獣の体に変えて戦う肉弾戦型の複合幻術。肉体の強度を増すだけでなく、亜人のような姿で戦う事から、獣人化の異名もついた。
 憑依とは違い、自分の肉体の一部を変化させて戦うため、元の体を忘れると一生獣人の姿のようになってしまう。屈強な体を手に入れられる分、人間のままの体は生身そのものな上、変貌によって変化した体には変貌で似せた動物や幻獣などの弱点がそのまま付加される。扱いが難しいだけでなく、常に術の集中に意識を保たせるなどの配慮も必要だが、強化された自身の肉体で戦える中で、恐らく最大級の強さを得られる意味では需要も高い。
 また呼び出している最中、幻生生物に裏切られる心配もないというのが、最大の利点かもしれない(そもそも幻生生物に裏切られるような術者には、最初から幻生生物が召喚に応えるとも思えないのだが)。



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