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「赤堂中学出身結城将司。可能性を狭めたくないので全てのポジションを希望します!」

新入生が入学し、ここ野球部にも新入部員が入ってきた。今年はわりと有名どころが集まり、結城先輩の弟さんも入部した。さすがと言うべきか、新入生ながら貫禄を感じてしまう。

「監督の片岡だ!」

そして最後に、監督から。

「高校野球の練習に慣れることはもちろん大事だが君達には是非先輩達の練習での態度や姿勢を見ておいてもらいたい」

甲子園で体験したこと、学んだこと。
これからの自分達に必要なこと。

「それら全てが彼らから滲み出ているはずだ。 まずは目で見て肌で感じてくれ。我々が求める野球を。」

監督がいなくならなくて本当に良かったと思う。こんな言葉を投げかけられて、燃えない人はいないだろう。

2.3年生59名に新入生35名を加え総勢94名。
二季連続での甲子園出場を目指し、新生 青道高校野球部 ここに始動すー。

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『栄純さっきなんで御幸のこと怒ってたの?』
「あの人一年が自己紹介してるときにすげー笑ってたんですよ!」
『…』

最初に比べてとても頼りになるキャプテンになってきたと思っていたのに、ブレないなあ…。

『御幸』
「んー?」
『さっきなんで笑ってたの?栄純めっちゃ怒ってたよ』
「はっはっは。いやー今年も退屈しなくて済みそうで」
『…どういう意味』

話を聞くと、同じ部屋になった奥村くんという子が入寮の日に御幸を睨んできたのだという。その理由は分からないけど、それを楽しそうにしている御幸も御幸でよく分からない。

『…あんまり余計なことしないでよ』
「俺そんなことするように見える?」
『見えるから言ってる』
「はは…あ、そうだ。ご褒美」

その単語に、ぴくりと反応したのはわたしだ。センバツのとき、巨摩大戦で本郷くんから打てたらご褒美、なんてことを確かに話したからだ。

『ジュースは一本までです』
「安いなー」

そう言っている間に御幸の手はわたしの方へ伸び、サラリと髪の毛に指を通す。

「髪、伸びたな」
『あんまりショート似合わないから』
「うん、長い方がかわいい」

こういうことを恥ずかしげもなく言ってしまうのがこの男の怖いところだ。本音かどうか分かったもんじゃない。
でも、きっとこれは本音だ。いつも余裕のある御幸の表情と、少し違うから。それがおかしくて、思わずわたしも背伸びをして御幸の頭をがしがしと撫でた。

「っわ、なんだよ」
『やられっぱなしは性に合わないからさ』
「なまえちゃんそんな人だっけ…」

自分のよりも少し硬い髪。
御幸は案外優しい。その証拠にわたしが撫でやすいように頭を下げてくれている。

『弟みたい』
「弟いたっけ?」
『いないけど、いたらこんな感じかなって』

「…弟より俺はこっちがいいかな」

そのあとすぐに腰を抱かれてぐいっと引き寄せられて、あっという間に御幸の腕の中に収まっていた。

『!ここみんな通る!』
「いいんだって見せつけとけば」
『バカ!』
「って!」

「なまえちゃーん」
『…』
「…ごめんって」
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