▼ ▲ ▼

そして息つく間もなく春大が始まり、三回戦の永源戦では降谷くんを温存しながらのコールド勝ちを収め投手王国青道と言わしめた。試合後のベンチ裏で御幸が栄純にぐちぐち言っていたけど、最後の三者連続三振は正直鳥肌が立ってしまった。
降谷くんだけでなく、栄純も確実に成長している。

他の強豪と呼ばれる学校も順調に勝ち上がり、注目のカードである稲実対薬師は稲実に軍配が上がった。

チームの練習は三年生を中心に熱を帯び、それは春大のベンチ枠20人のところ、18人に絞って登録されていることが一つの理由。監督はおそらくそこに一年生を入れようとしているんだろうけど、そこに待ったをかけようとしているのだ。

「浅田ー!メシ終わったらキャッチボールしよーぜ!午後練のアップも兼ねてよ!」

昼休憩のとき、食堂から相変わらず元気な栄純の声が聞こえたのでそちらを見ると、御幸と倉持もそこで栄純の声を聞いていた。

「何してんだあれ。1年が沢村に絡まれてんじゃん」
「ウチの部屋の1年が元気なくてよ。あいつなりに励ましてやりてーんだと」
『励ます…?』

5号室で何があったのかを倉持は簡単に教えてくれた。たしかに慣れない生活をしている上に倉持と栄純と同じ部屋はきついかもしれない…。

「まぁでもあの1年と長くいるのは沢村だし、俺が出ていってもな」
『…まぁ』
「ウチの部屋の1年も生意気な奴でよ。なぜかいつも睨まれてんの」
「ヒャハハハ!後輩に甘ぇからナメられるんだよ!」

御幸は奥村くんに何をしたのか…。本人は楽しそうにしてるからなあ。そのまま倉持と別れて御幸とプレハブでスコアチェックをしていたら、先ほど話題になっていた栄純が怒りながら入ってきた。

話を聞くとさっきの食堂で奥村くんと一悶着あったらしい。

「はっはっはっは、あいつそんなこと言ったの?俺も現場で見たかったな」
「笑い事じゃないでしょーがキャップ!聞けばあんたと同じ部屋の一年!しかもキャッチャーなんですよね!」
「お前も東先輩に暴言吐いてたじゃねーか。因果応報、歴史は繰り返すってやつだな」
『そういえばそんなことあったねぇ』
「あの時とは全然違うでしょーが!なまえ先輩も思い出さないでくださいよ!」

東先輩と栄純のやりとりももう2年近く前になる。懐かしいなと思いつつも、今は大会中。事を大きくして試合に支障だけは出したくない。

「奥村の件は俺が預かる。大会中なんだしこれ以上騒ぎにはするなよ」

御幸の言葉に頷いて栄純たちはプレハブを後にした。センバツ以降ますますキャプテンらしくなった御幸の言葉には説得力があった。

『…御幸も先輩らしくなったねぇ』
「なんだよそれ」
『貫禄が出てきたってことだよ』
「そーかな」
『それより奥村くんもなかなか難しい人っぽいね。あとで絡んでみようかな』
「やめとけやめとけ。睨まれて終わりだぞ」
『わたし御幸と違って何もしてないから多分大丈夫』
「…俺も何もしてねぇんだけどな」
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -