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巨摩大藤巻戦。初回に2点を失ったものの、その後は本郷くんに負けず劣らずの好投を降谷くんもみせ、結局2-0でわたしたちは敗れた。本郷くんからヒットを奪ったのは御幸のみ。
その後ベンチを後にしたみんなは、センバツベスト8に浮かれることなく次の方向を向いていた。
本番は、夏。またこの場所に戻ってくることができるように。
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センバツから帰ってきたわたしたちマネージャーは、食堂でセンバツの記事をまとめる作業をしていた。
「あれ?これって向こうの新聞?」
「はい!新幹線乗る前に全紙買ってきました!」
「抜かりない春乃!」
『新幹線乗り遅れなくてよかったね』
そして話題は降谷くんと本郷くん。幸子は本郷くんのピッチングに感銘を受けたようだ。
「春大のトーナメント表見た?」
「うんDブロックやばいね…」
『三回戦でいきなり薬師と稲実だもんね』
「観に行きたい!」
帰ってきてすぐ、まもなく行われる春大のトーナメント表が出ていた。それは、最後の夏の始まりを意味している。
「わたしたちも切り替えないとね…」
『…うん』
「最後の夏だし」
そう言って目を合わせたわたしたち三人。長いようで、とても短かった。もう最後の夏なんて。
「ちょっ…どうした春乃」
『ぷるぷるしてる!』
「泣いてるの?」
「だって…幸先輩が最後って言うから…」
春乃がそう言って泣いてしまい、少しだけうるっときてしまったけど、まだ4ヶ月ある。泣くのは、それからだ。
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その後すぐに新学期を迎え、わたしたちは三年生となった。始業式では野球部がセンバツの報告会で壇上にあがり、ベスト8の祝福を受けた。
そしてー。
「あ、なまえまた同じクラスだね」
『うん』
「御幸と倉持もじゃん」
『そう…なんだよ…』
新しいクラスである三年B組に入ると、先ほどの報告会で一躍脚光を浴びた二人がクラスメイトたちに囲まれていた。
さすがに違うクラスになると思っていたけど、なんの因果かまたこの二人と同じクラスになった。
「てか倉持女子に囲まれてるけどいいの?」
『知らない…』
この一年、去年とは違う意味で心労が増えそうだ。