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※2年冬合宿
「うお」
『…御幸?』
合宿中、飲み物を買って部屋に戻ろうとしていたら御幸とぶつかった。それだけなら特に気にする必要はないんだけど、御幸の顔にいつもあるものがなかった。
『眼鏡は?』
「…部屋に忘れたんだよ」
『見える?』
「あんまり」
眼鏡をかけていない、スポサンもしていない裸眼の御幸はなかなか珍しい。というより、見たことがなかったかもしれない。まさかこんなところで見れる事になるとは。
「?なんだよ」
『…いや』
イケメンキャッチャーなんて呼ばれていたり、たまに告白されていたり、なんとなく顔は整っていることは認識していたつもりだったけど、改めて見ると本当に整っている。
「見惚れてる?」
『…見惚れてない!』
「はっはっは」
「なあ」
『何…って近くない?』
「この辺まで来ないと見えないからな」
『見なくていいよ…』
そう言っている間にもどんどん御幸の顔が近づいてきて、それに耐えられなくなったわたしはぎゅっと目を閉じた。
「…その反応はダメだよ」
『な、』
なにが、そう言おうとしたのに、それは声にならなかった。
ちゅ、と右頬に柔らかいものが押し当てられたから。
思わず目を開けたらそこには眼鏡をしていない御幸の顔。まだまだ近いその距離に、心臓がフル稼働している。
「あーやっぱ眼鏡ねぇとダメだわ」