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「なまえ!なまえ!!ちょっと聞こえてるのなまえ!」

『も〜うっさい!聞こえてるわ!!』
「だったら一回で反応してよね!」
『成宮が反応する前に言うからでしょ!』
「ハァ!?俺のせいにすんの!?」

「…オイ成宮、みょうじいい加減にしろ」

今日も今日とて成宮に突っかかられて原田先輩に怒られるところから部活は始まった。

稲実硬式野球部にマネージャーとして入部して早2年目。仕事だって覚えたしなんなら結構テキパキ動けるしスコアだって綺麗に書けるように練習している。
他の部員から特に文句は言われないくらいには成長してるはずなのに、成宮だけはわたしが何かと気に入らないみたいだ。すごく、すごーく細かいところに突っかかってくる。

『…もう成宮ほんとうるさい』
「今日も相変わらずだね〜」

マネージャー仲間ももう慣れてしまって、特に何も言わなくなってしまった。最初はちゃんと言い返してくれてたのに。

『何がそんなに気にくわないんだ…』
「なまえって頭悪くないのにバカだよね」
『は?どういうこと』
「そういうとこ」

よくわかんないしムカつくし。もう成宮なんか打たれてしまえ!
あ、でもそうなったら甲子園行けないし三年生が引退しちゃうからダメか…。

その日の練習は、成宮がいない二軍についたからとても、それはもうとても平和だった。
この感じで帰れば気分良く寝られそうだ。 そう思いながら一人帰路につこうとしたわたしに、悪魔が待っていた。

「あっれ〜なまえじゃん」
『げ、成宮…』
「先に他のマネ帰ってたよ?何置いてかれたの?プププ」

…んんん。すごくイラッとしたけどここは冷静に対応して適当に巻いてさっさと帰ろう。うん、それが一番早く帰れる。

『違うよ忘れ物したから取りに行っただけ』
「何忘れてんのバカなの〜?」
『ハイハイ馬鹿でいいから帰っていい?』
「むっ、何だよせっかくエース様が話しかけてるって言うのに!」
『それ自分で言っちゃダメだと思うよ』

そういえば、校門近くで成宮は一体何をしていたんだろう。ランニングはだいたいグラウンドでやってるし。買い出し?

『てか成宮はここで何してんの?』
「…え、っといや…」
『?何か買いに行くとこ?』
「そ、そう!そうだよ!」
『早く行けば?』
「お前に言われなくても行くよ!」
『ハイハイ…』

そう言って校門を出て行くのかと思いきや、くるっとわたしの方を振り返った。

「…ついでだから駅まで送る」
『…は?』
「いくよ!!」
『え、ええ?』
「うるさい早く来なよ!置いてくよ!」

珍しいこともあるもんだ。びっくりして反応が遅れてしまったけど、確かに暗い中一人で歩くのは心細いから、お言葉に甘えておこう。
成宮ってたまにこうやって優しいときがあるからよくわかんない。

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「あ、成宮いいところにいるじゃん」
「?なんだよ」
「なまえ忘れ物とりにいったの」
「…だから何?」
「私たち先に帰るから」
「……わかった」
「貸しだよ」
「うっせー」
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