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「なまえ」
『真田くん』
「今帰り?」
『うん』
中学は学区が違ったから別だけど、小学校が同じ真田くんとは、高校で再会した。それも、同じ部活。
当時からわりと男子の中では話す方だったので、自然とまた話すようになり、帰る方向も一緒なのでこうしてたまに一緒に帰るようになった。
『轟親子はまだやってるの?』
「おー。マジですげえよあの人たち」
『そうだね。でもわたしからすると真田くんも十分すごいけど…』
「俺?」
この夏、薬師高校の名を轟かせたのは轟親子だけでなく、真田くんの活躍もあったから。三年生引退後はエースとして、チームを牽引する存在。
『小学校のときはあんなにかわいかったのに』
「そーだっけ?」
『身長そんなに大きい方じゃなかったじゃん』
今じゃ180超えの長身だけど、小学校の頃は女の子の方が先に成長期を迎えるからわたしより小さかったはずだ。
「思い出すなよ」
『いいじゃん思い出だよ」
「今はなまえの方が小さいけどな」
『…そりゃあそうだよ』
真田くんは歩いていた足を止めて、わたしの方を振り返る。
「ほら、手もこんなちっちゃい」
パッととられた右手が、真田くんの熱であったかくなっていく。それと同時に、頬にも熱が集まってくる。
『そりゃあ…』
「あれ、なまえ照れてる?」
『て、照れてない!』
「じゃあこのまま帰ろ」
『えっ』
そう言って手を握りしめたまま歩き始めた真田くん。マイペースすぎませんかね。
『だ、誰かに見られたら…!』
「もうこんな暗いんだから誰も見てないよ」
たしかにあたりは真っ暗で人通りも少ないけど。けど!学校でもかなりモテる真田くんと手を繋いでるなんて学校の人に見られたらたまったもんじゃない。
『勘違いされたらどうするの…!』
「ん?それはそれでいいじゃん」
よくない…そう言いかけた言葉は最後まで出てこなかったのは、真田くんがすごく嬉しそうな顔で笑ってるから。
「俺はなまえじゃないとこういうのしないし」
それは、どういう意味で解釈すればいいんだろう。恋愛?それとも部活仲間だから?
それを聞けないのは、まだこの関係を崩したくないから。
『…ん』
手を繋いだまま、二人で歩く。
ここからわたしの家までは15分くらいなのに、今日は30分もかかった。