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組み合わせが決まり、初戦の相手は米門西高校だそう。丹波さんの怪我は骨折には至らずとも、ヒビが入った状態で、 本戦には間に合わないかもしれない。けど、丹波さん復活までなんとしてもつなげようという意識が働き、選手たちは今まで以上に練習に励んでいる。

本戦は7月から。ということは、期末テストもある。授業をまじめに受け、課題だってちゃんとこなしているわたしは、まあそんなに危機を感じていない。

「たのむよなまえ!ノート貸してくれ!つかワークも見して!!」

と頼み込んでくるのはもちろん倉持。そんなに頭が悪いわけではないけど、苦手科目に関しては1年の頃からテスト前になるとわたし頼りだ。

『はい。赤点だけはとらないでよー』
「大丈夫だろ。いままでとったことねぇし?」
『あっそ。あとでジュースおごってね』
「へいへい」

「なまえ〜、わりぃ古典のノート貸してくんね?」
『…御幸まで?』
「古典のときだいたいスコア見てたからさー、全然ノートとってなかったわ」
「『いつもじゃん』」

思わず倉持とかぶってしまった。そのくらいには御幸はいつもスコアブックを眺めているような気がする。

『いいけど御幸もなんかおごってね』
「は?有料なわけ?」
『あたりまえじゃん。倉持はジュースくれるって』
「じゃあ俺もそれ」
『ジュース2本あっても飲めない』
「じゃあ明日な。今日は倉持におごってもらうってことで」
『あーね、じゃあそうするから倉持今日よろしく!』
「へーい」

そしてなんとか期末テストを乗り越えた。宣言通り2日連続でジュースも買ってもらったし満足!御幸倉持も赤点ないって言ってたし!

さて、今日は背番号を配る日だ。だいたいポジションは決まっているものの、やっぱり背番号というものは何か特別なものがある。

「今から背番号を渡す。呼ばれた者から順に取りにこい」
「まずは背番号1 丹波光一郎」

丹波さんの顔が、驚きで溢れている。背番号1を受け取った丹波さんを、みんな笑顔で迎え入れる。

「つーかテメェなんで頭剃りあげてんだよ」
「いや…最後まで投げられなかったからな…」
「まじめか!!」
「ヒャハハ!似合ってますよ丹波さん」
「マユゲは剃らないの?」

…若干1名おかしなことというか怖いことをいった気もしなくもないが、みんな丹波さんが背番号1を背負うことに、異論はないようだ。

その後も順番に背番号を手渡され、記録員にはクリス先輩が選ばれた。

「それからマネージャー。お前たちも本当によく手伝ってくれた。お前たちもチームの一員として、スタンドから選手と一緒に応援してくれるな」

まさか。監督から試合用のユニフォームを、マネージャーのわたしたちに手渡してくれるなんて。隣の貴子さんを見ると、涙目になっていた。

『あ〜〜貴子さん泣いてる』
「泣いてない!」
『わかりますよ、わたし!』
「うるさい!!」

一蹴されてしまったけれど、選手たちと同じものを身につけていいなんて、これほど嬉しいことはない。

「みんなも分かっていると思うが高校野球に次はない…日々の努力も、流してきた汗も涙も、すべてはこの夏のために」

「よし!いつものやついけ!!」
「「「はい!!!!」

ベンチ入りメンバー20人が円になる。みんなが手に胸をあてる。キャプテンが、口をひらく。

「俺達は誰だー…」
「「「王者青道!!」

「誰よりも汗を流したのは」
「「青道!!」

「誰よりも涙を流したのは」
「「青道!!」」

「誰よりも野球を愛しているのは」
「「青道!!」」

「戦う準備はできているか!?」
「「おおお!!!」」

「我が校の誇りを胸に狙うは全国制覇のみ!!!」
「いくぞぉ!!!」

「「「「おおおおおおおおおおお!!!!!」」

(わたしたちの夏が、はじまる)
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