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長いようで短かったGWはあっという間に終わり、久しぶりに教室に入ると先日の白龍戦の話題が出ていた。

センバツベスト4の強豪を破ったということでネットニュースでは大々的に取り上げられ、野球部以外でも話題になっているようだ。

「すごいよねこれ!沢村って2年生の子だよね?」
『そうだよ〜すごいでしょ』
「クラスにいるとよく分かんないけどあの2人もすごいんでしょ?」

友人の視線の先には御幸と倉持。2人で何やら楽しそうに話している。1年前も同じクラスだったけど、あんなに仲良く話す姿は最近になってからよく見るようになった。

『…そうだよ。あの2人は、本当にすごいよ』
「…なまえはどっちのが好みなの?」
『は?』
「全然タイプ違うじゃん御幸くんと倉持。どっちがなまえのタイプなのかなーって。ちなみにわたしは御幸くんかな。イケメンは正義だよね」

『…分からん…』
「直感でいいのに」

あの2人を近くで見てきたからこそ、良いところをたくさん知ってしまった。深い意味じゃない友人のこの問いにも、なんとなくで答えることはできなかった。…というより、答えが出なかった。

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「で…御幸。結局お前はどこに行きたいんや」
「ん?どこって」
「プロやプロ!」

夜食用のおにぎりを食堂で作っていると、夕飯を食べている選手たちの会話がよく聞こえてくる。今日の話題はみんな気になっているだろう御幸の進路の話のようだ。

「もしかしてメジャー志向か?」
「やめてくれよ」
「気になるがな!!」

みんな気にはなっているけどなかなか聞き辛い話題でもあるので避けてきたようだけど、さすがゾノ。それに対する御幸の答えは、以前の御幸からは想像もつかないものだった。

「今はお前らと甲子園行くことしか考えてねーよ。そんな先のことは全部終わってからでいいだろ」

「あかん…変なパス出してもうた」
「なんでうろたえてんだよ」
「こういうことが聞きたかったんとちゃんねん。こいつの株がまた上がってしまう」

御幸の答えにオロオロしていたゾノとは違って倉持やノリ、ナベちゃんがツッコミを入れていく。

「いつからそんな優等生キャラになったんだよ」
「なんかウソっぽい」
「キャプテンとしての発言だよね。本音は?」

御幸と同じで、甲子園に行くことしかわたしも考えていなかったことにこの時ようやく気付いた。スカウトの人たちが練習を見に来ているのも何度か見かけた。だけどそれは現実味がなくて。

そっか、御幸はプロに行くんだ。

3年生になってからわたしも当然のように進路について考え、大学進学を目指すことにした。それは周りのほとんどの友達もそうで。

だけど御幸は違う。

違う道を進むということに、ただ漠然と、寂しいと思った。
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