▼こんな再会ですが

全治3週間、頬はかすり傷、腕は数針縫った。
怪我の後走り回ったりしたことで、出血が多く気を失ったようだ。 まぁ回し蹴りまでしちゃったしな。


あれから入間さんと、助けた妹ちゃん(仮)によって召喚された、同じ色合いのヤのつく自由業の人に助けられた様で。 警察マッポとヤクザに助けられるってすごくない? どんな引き率。 レアはガチャだけにして。
まぁ俺達を追いかけ回していたチンピラも、1人残らずしょっぴかれた様なので今回は良しとしよう。 ちなみに捕まえたのはヤクザさんの方らしい。 ありがとうございます。 但しチンピラ共の罪状は増やす。 絶対にだ。
そんな心持ちでスマホの録音記録を差し出したのだが、聴いた入間さんがとてもイイ笑顔だったので確実に増やすことに成功しただろう。

そりゃあね? 捕まえ次第俺達をヤク漬けにするかだとか、運び屋にするかだとか? ねぐらにしている場所っぽい所まで話しちゃってるから? 増えるしかないよね、罪状。 勝利Aくらいにはなったか。



こうペラペラ心の中では喋っているが、意識が戻ったのは数十分。 絶賛警察病院のベッドだ。
頬にくすぐったいような感覚がして目が覚めた。 ベッドに腰掛け、俺の頬を撫でる入間さんは、青の制服から黒を基調とした細身のスーツ。 美人度が割り増しでまた気絶するかと思った。 年単位で会わなかったイケメンってずるい。


俺が目を覚ましたのに気付いた入間さんが、ナースコールを押した。
担当の先生が来て、冒頭の説明。 それから入間さんとその部下の人によって事情聴取。 目を覚ましたばかりなので、今日は軽く。 後日調書のためにしっかりと行うらしい。 ちゃんと話せるようにある程度まとめておこう。 お説教もその時だと宣告されたので心の準備も。


説明が終わり、安静にしているように、お大事にと声をかけ先生も部下の人も部屋から出る。 入間さんも俺の頭をひと撫でし、後に続いていこうとした。 それをとどめるように、怪我のしてない方の手で、手を掴む。 ただ距離が少しあったせいで、掴むというより入間さんの人差し指に、俺の指先が引っ掛かったくらい。 なんたる無様な。


「どうしました?」
「あっ、えっと…」


それでも止まってくれた入間さんに感謝だ。 だけど1つ問いたいのは、なんで引っ掛かってただけの手を絡めとるように握ったのかな? 止まってくれたなら外してよかったんだけど? 握られてる指先があついし、そっちに意識がいってしまう。


「名字くん?」
「あー…その…」


その事に気付いているんだか、気付いていないんだか。 いや、この入間さんの表情からして前者だろ。 にやにや隠せてない。 くそ…これだからこの人は…。 指先だけじゃなくて顔もあつくなってきた。 エッまって、マジで待って。 手の甲を撫でるな。 他の指まで絡めとらないで。 いつの間にか恋人繋ぎが完成してるだと…。 アーッ困ります!いや、マジで。


「っああ、もう!俺は!真面目に話が!」
「ふ、ふふ…すみませッ、…つい、名字くんの反応が可愛くて」
「かわいくないんで…」


事情聴取よりもぐったりした。 大人ってこわい。
繋いだ手は、すこし、名残惜しかったが外してもらい、居住まいを正す。 それに倣うように、入間さんも俺をからかう顔を消した。


「今回、迷惑かけてすみません。それと、…ありがとうございました」


傷にさわらない限り深く、頭を下げた。
本来110番通報するところを、無意識とはいえ直通の電話にかけた。 その事で、それまでやっていた仕事をズラしてしまったのだ。 それに、違法薬物は、確かに組織犯罪対策部の仕事ではある。 だが入間さんの居る部署かはわからない。
俺の保護も、こうした聴取も、ただただ入間さんの仕事を増やしてしまっただけだ。
もっとこうしていたら、ああしていたらと、IFが浮かび、悔しさに掌に爪が刺さるほど、ぎゅっと手を握りしめる。


力んで白くなった手に、俺のものよりも少し大きい手が重なる。 その手は先程俺をからかっていた時のような悪戯さはなく、赤の革手袋も外されている。 解すように触れられ、先程と同じように、指が絡まる。 じんわりと、入間さんの熱がうつる。
頭を下げた視界に入るその手とは逆の手が、旋毛辺りを撫でるように触れ、傷に触れないようにそっと、頬をなぞる。
その指先には然程さほど力は込められていないのに、自然と下げた頭を上げさせた。


「君から連絡をもらった時、心臓が止まるかと思いましたよ」
「すみません…」
「本当に。やっと連絡してきたかと思えば…あんなのはもう御免です」
「うぅ…申し訳ないです…」


上がり気味の眉が下がる。 なんとなく、入間さんと目を合わせられずに俯いていく。 しかし、完全に視線が手元を捉える前に、カシャンと頬骨の辺りに無機質な物が当たる。 何がと確認するよりも先に、近すぎてぼやけるほど、視界が入間さんでいっぱいになった。


「いるま、さん、?」
「無事で、よかった…」


こつり、額が合わさる。 囁くように小さくこぼれた呟きが、吐息と共に俺の唇にかかる。
頬に当たったのは入間さんの眼鏡で、額同士が触れるほぼゼロ距離。 不用意に動けば、唇もくっついてしまいそうで、まるで祈るように閉じられた瞳をレンズ越しに見つめるしか出来ない。


「あんまり心配ばっかかけさせるんじゃねえ。…ほんと、世話の焼ける奴だよ、お前は」
「〜っ」


閉ざされていた瞼から、新緑色が覗いたと思えば、柔らかく細められる。 フッと笑うように吐き出された言葉は崩され、今までの甘やかしとは、言葉に乗る色が違うように錯覚する。
顔に集まる熱に口を開くが、音になることはなく、唇に掠める感覚を感じて慌てて口を閉ざす。


顔を離した入間さんは、俺の赤くなったであろう顔を見てまたひとつ笑い、にやりとからかうように表情を変え、小首を傾げた。


「キスでも、されると思いましたか?」
「〜っ、あー、もう!だから!入間さん!!」

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