▼notパラレル yesトリップ

この世界に来てしばらく経った。 来た時期が時期だったので、進級もしました。 高校2年生、ぴちぴちの16歳です。
ぴちぴちが古いとか、2年なのに16歳とか突っ込むなよ? 歳に関してはまだ誕生日迎えてないだけだし。


あの後結局分からないことはどうにもならなかった。 ただ俺の知っている世界じゃなく、似て異なる、いわばパラレルワールドなんだろうなって割りきった。
夢みたいな話だけど、そうじゃないと説明できないことが多すぎる。 だから俺の心の安寧の為にもそう思うことにしたのだ。



「ありがとうございましたー!」


今日も今日とてバイトに励む。 学生のうちは時間がある。 けどお金がないことが大半だ。 社会人を少しでも経験したことがある俺からすれば、通帳の数字が0に近いのは心許ない。 親に頼るのも、極力は避けたい。 生活費はどうしようもないけど。



──────


「お先失礼しまーす!」


先輩から口々に返ってくる「お疲れー」という声を背に、バイト先の居酒屋から出る。
高校生の難儀なところは22時以降は働けないことか。 深夜手当てつかないし。


でも今日みたいな日は助かる。 人が足りなくて他店舗にヘルプだったのだ。
家から少し遠い分、早く帰れるのはやっぱり嬉しい。 明日も学校だからな。

そうそう、学校といえば。
親にも驚かれ、学校では視線が刺さった理由だが、なんでもこの世界の俺は不良と分類される人間だったらしい。
ふらっと行っては、ふらっと帰る。 家から出ない日もあれば、帰ってこない日もある。 そりゃ朝から行って、真面目に授業受ければ驚かれるのも無理はない。
中身が代わった以上、そんな生活早々出来ない。 チキンだし、根は真面目じゃん? 知らない?アッソウ。



駅までの道。 バイト先が居酒屋なもんで、どうしても繁華街を抜けなければならない。 成人済みならともかく、今の俺は学生だ。 しかもここは、慣れ親しんだ池袋じゃない。


新宿


そう、眠らない街の新宿である。 学生は肩身が狭いし、早く駅に着きたい。



「そこの君、少しいいかな?」


足早に進もうとした俺の肩を、誰かが叩く。 この感じ、ヤバイぞ。
ギギギッと油のきれたロボットみたいな動きで、叩かれた方に顔を向ける。
肩にあるのは白い手袋をした手。 カッターシャツの色は鮮やかな水色。 つまり。


「君、学生ですよね? こんな時間にこんな場所で、何をしているんですか?」


街の平和を守るお巡りさんでした。 つらい。

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